BE:FIRST、HANA、Rich Brian、KiiiKiii……アジア音楽の祭典『HEAD IN THE CLOUDS』Day1 徹底レポ
『HEAD IN THE CLOUDS』とは、“空想にふけっている”や“非現実的”という意味である。
3月28・29日、幕張メッセで日本初開催となった本フェス『HEAD IN THE CLOUDS Music & Arts Festival in TOKYO 2026』は、名前からして少し不思議な感じがある。青空に雲の絵柄が入ったポスターはポップで、アメリカンな雰囲気も感じさせる。
世界最大級のフェス『Coachella Valley Music and Arts Festival』のメインステージでショーケースを行った実績を持つ本フェスは、2025年のロサンゼルス公演にNumber_iが参加したことで日本でも注目を集めた。主催の88risingはニューヨークを拠点とする音楽レーベルで、代表のショーン・ミヤシロ氏は日系アメリカ人。アジアにルーツを持つアーティストを発掘し、グローバルヒットを連発させてきた。
筆者は以前中国に滞在していたことがあるが、中国で初めて国際的成功を収めたヒップホップクルー・Higher Brothersが88risingのプッシュでブレイクしたと知り驚いた。2017年の代表曲「Made in China」のMVでは、ローカルの人々にとっては、ありふれた茶屋での麻雀風景などが、グローバルな視点で上手く再構築されていた。
88risingのステージセットは、『SUPERSONIC 2020』にて実現予定だったがパンデミックの影響で中止に。今回の日本公演は、88risingにとって念願の再挑戦だ。BE:FIRST(Day1)、ちゃんみな(Day2)をヘッドライナーに据え、魅力的なラインナップで『HEAD IN THE CLOUDS』を創り上げた。そんなDay1の模様をライブレポートでお届けする。
『HEAD IN THE CLOUDS』Day1 全出演者レポート
ハイビスカスのようにはつらつと眩しい4人が、ステージ中央から伸びた花道の先端に腰掛けて美しいハーモニーを届ける。この日の一番手を務めたno naは、88rising所属のインドネシア出身4人組ガールズグループで、今回が日本初パフォーマンスとなった。
オープニングの激しいダンスナンバーから一転、ミドルバラードの「sad face :(」ではしっとりと聴かせていく。Estherが正座したまま滑らかなラップを披露する姿には思わず親近感を覚えた。
「一緒に歌を楽しんでね」とChristyが長い髪を指に巻きつけながらゆっくり歩み出すと、花道先端でブリッジから軽々と一回転。その柔軟性にどよめきが起こった。新曲の「work」はインドネシアのガムランリズムが特徴的で、祭囃子のように賑やかに会場を盛り上げた。
ファンファーレのようなイントロが華やかな楽曲「Tangerine」で登場したのは、今年からBMSG所属となったAyumu Imazu。キレのあるダンスは小気味よく、マイクスタンドを引きずるアクションまでが軽快でサマになっている。
「みんなで少しだけチルに行きましょう」とバイラルヒット曲「Obsessed」を披露すると、耳馴染みのあるイントロに大きな歓声が湧く。ダンサーチーム AI'M Creativeの6人と花道を歩きながら心地よいサウンドを丁寧に届けた。華やかな光線がステージに交差するなか、ダンスナンバー「HOWL」では、TikTokで話題の大股開きで歩くキャッチーな動きで、とことん観客の目を惹きつけていく。
ラストには新曲「Home」を初披露。ダンサーシップとミュージシャンシップを両立させた見事なステージングで観客を魅了した。
ステージチェンジの合間に現れたのはkiOra。ソニーミュージック新プロジェクトの4人組ガールズグループは、Japanese Heritage(日本遺産)という興味深いコンセプトで今年デビュー予定だ。洗練されたダンサブルなサウンドと個性が光る佇まいで、初ステージを楽しむ姿が印象的だった。
爽やかなダンスミュージック「DANCING ALONE」にのせて登場したのは、今回KPOP界から唯一の参加となったガールズグループ KiiiKiii。曲中、5人で手を繋いで大ジャンプするなど初々しい可愛さで空気を和ませる。
ハンドジェスチャーを用いたキャッチーな振り付けでびゅんびゅんとハートを飛ばし、懸命に日本語MCに挑戦する姿がいじらしい。お好み焼きなど日本の食べ物について懸命に話す様子に、客席にも笑顔が広がった。
牧歌的でありながらハイセンスなデビュー曲「I DO ME」は、教室でおしゃべりしているような遊び心満載のパフォーマンス。彼女たちのピュアな魅力が会場に広がった。ラストは最新曲「404 (New Era)」を日本初披露。スタイリッシュなハウスサウンドで、キャッチーなサビではコール&レスポンスも起こり、盛り上がりを見せた。
「What up HEAD IN THE CLOUDSー! We are HANAーーー!!!」
度肝を抜くような大絶叫で幕を開けたHANAのステージ。全国25公演ツアーの真っ最中でチケットは入手困難という、いま日本で最もアツいガールズグループに、客席は期待に満ちた空気感が広がっていた。
イカついギターサウンドから始まる「ALL IN」では、〈全部bet全部全部bet〉と激しいダンスを繰り返し、オーディエンスの期待を真っ向から受け止める。
続く「NON STOP」では背景に富士山が映し出され、てっぺんを目指す〈bigger than Fuji〉のリピートで会場は一気にヒートアップ。MAHINAのエッジの効いたフロウは音源をさらに上回る進化を見せた。
KOHARUが「みなさんに踊っちゃってほしい」とチャーミングに誘うと、「My Body」で会場中が肩を揺らす。NAOKOの吐息交じりの優しい歌声が、みんなの“セルフラブ”精神を後押しした。
星空が映し出された「Blue Jeans」ではJISOOの潤いのある歌声がラブソングを彩り、背景はやがてピンクがかった青空に変わっていく。
「どんな姿でも咲いているあなたは美しい」とYURIが真摯に語ると、芸術的なバラのフォーメーションから「ROSE」がスタート。ピアノのイントロから次第に加速するラテンのビート、MOMOKAの低音ラップがトゲのように胸を刺し、地響きするバスドラムが鼓動のように高鳴ると、CHIKAのパワフルな歌声がすべての不安を一掃した。観客はただただその美しい光景にじっと見入っていた。
ラストの新曲「Bad Girl」では等身大の感情を爆発させ、アーティスティックかつライブ感にあふれたステージを締めくくった。
〈Wasabi〉を繰り返す日本人ならくすりと笑ってしまう不思議なサビの楽曲「WASABI」を、ファンキーなビートで披露したのは、唯一アジア圏以外からの参加となったニューヨーク出身のMAX。
BTSのSUGAやLE SSERAFIMのHUH YUNJINともコラボする彼は、アジアシーンとの交流に積極的だ。Ayumu Imazuの「Obsessed」を気に入り、自らDMを送ってフィーチャリングを実現させたという逸話も。この日はスペシャルゲストとしてAyumuを呼び寄せ、もうひとつのコラボ曲「LOVE INSANE」を披露。滅多に見られない貴重な共演で感動を誘った。
アメリカでトリプルプラチナ認定の大ヒット曲「Lights Down Low」では、観客のスマホのライトが揺れるなか、エモーショナルな歌声で会場を温かく包み込んだ。
真っ赤な夕陽がスクリーンに映し出されると、焦燥感あふれるラップ曲「Senja」を披露しながらRich Brianが登場した。
1人目のヘッドライナーである彼は、インドネシア出身のラッパーで、26歳ながら10年のキャリアを持つ88risingの看板アーティスト。ワールドツアーの合間を縫っての来日となった。火柱が舞い上がる迫力のステージでまずは「TOKYO DRIFT FREESTYLE」を披露。コロナ禍にTERIYAKI BOYZの同曲をビートジャックしたYouTube企画を発案し、国内外のラッパーを巻き込んで話題になった楽曲だ。7年ぶりの日本のステージで、彼がどうしても披露したかった一曲だろう。
ギターやキーボードを自在に演奏する多才さを見せたあと、自伝的楽曲「Timezones」では6分以上にわたる長尺ラップをひたすらスピットし客席を圧倒。ラストはbbno$とのメガヒット曲「edamame」でフロアを大きく揺らし、日本語で「ありがとう」と伝えると笑顔で手を振りステージを後にした。
〈Show’s just getting started, coming up〉
MANATOのアカペラが響き渡ると割れんばかりの大歓声が上がった。いよいよトリを務めるBE:FIRSTである。
「BF is…」でまずは彼らのスタンスを高らかに宣言する。
燃え盛る火柱が立ち上がるなか、「GRIT」ではシンプルながら抜け感のあるダンスを披露。客席も肩を揺らし始め、SOTAが足元のティンバーブーツに軽く触れると「イェーイ」という声が飛んだ。アウトロではSHUNTOとRYUHEIがフリースタイルダンスで盛り上げる。
息つく間もなく幻想的な「Secret Garden」から「Brave Generation」のロックなビートへ。SHUNTOが「今日もう終わっちゃうよー!」と挑戦的に煽り、LEOが客席を見渡しながらクラップを要求。RYUHEIのこぶしの効いたバースで勢いをつけ、観客のクラップはこれまでにないほど大きくなった。
「俺らのワンマンだともっと踊ってるけどー」と疲れを見せないSOTAのMCを挟み、代表曲「Boom Boom Back」へ。
スクリーンにはグラフィティアートが映し出され、ダンス、ラップとあらゆる要素からストリートを体現。生のバックバンドがいきいきとビートを刻み、グルーヴが共鳴し合う。
「Milli-Billi」のブリッジではストンプでクールにフロアを踏み鳴らし、「Mainstream」「Masterplan」では技巧的なアニメーションダンスで表現の幅広さを見せつけた。
「Don’t Wake Me Up」では、9曲目にしてようやくMANATOが挨拶。「今日トリを務めさせていただきます、BE:FIRSTです。こんなグローバルなアーティストが集う幕張で、俺らしか生み出せないパフォーマンスを感じられていますか!」と気合の入ったMCに客席から大きなレスポンスが返ってきた。
スクリーンが海の映像に変わるとJUNONから「Sailing」が始まり、『ONE PIECE』魚人島編(フジテレビ系)のエンディング主題歌らしい大航海ムードに。続く「Great Mistakes」ではタオルを振り回し、笑顔が溢れた。
「こっから体力見せつけてやるー」とRYUHEIが力強く叫ぶと「Blissful」へ。肩の力の抜けたパフォーマンスで、メンバー全員が子供のように全力で楽しむ姿が伝わってきた。
「Bye-Good-Bye」はTHE FIRST TAKEバージョン。生バンドサウンドにJUNONのハイトーンが際立ち、SOTAのラップパートではMANATOがフロアダンスで沸かせるなど底知れぬ体力に驚かされる。
ヒット曲「夢中」をエモーショナルに歌い上げ、「I Want You Back」ではラフに楽しむパフォーマンスが印象に残った。
これでラストかと思いきや暗転のあと、新曲の「BE:FIRST ALL DAY」をサプライズ披露。リズムを踏みしめながら後ろ向きで去っていく姿が小粋で、続きを強く期待させる最高の締め方だった。
ほぼMCなしの16曲連続パフォーマンスから感じられたのは、圧倒的な自信と余裕、そして何より楽しむ心。今日のステージが間違いなく最高のパフォーマンスであり、次はさらに更新していくのだろうと思わせる期待に満ちたトリであった。
世界第2位の音楽市場である日本で、ようやく『HEAD IN THE CLOUDS Music & Arts Festival in TOKYO 2026』が実現した。この日のフェスは日本のグローバルショーケースとして十分すぎる内容だった。これから88risingは、アジアのアーティストたちをどのように再構築していくのだろうか。
『HEAD IN THE CLOUDS』の更なるグローバル展開に期待しつつ、今後の日本勢アーティストの世界に向けた動きも楽しみにしていきたい。