ドリカム、西野カナ、優里、Soala……恋愛ソング、ヒット必至の法則とは? アンサー&アフターソングが生む“視点”の妙
同じ物語を別の角度から描いた歌や、後日譚を歌った楽曲は少なくない。こうしたアンサーソング/アフターソングは長年にわたって支持されてきた手法であり、ヒットソングを生み出してきたアプローチのひとつでもある。本稿では、日本の音楽シーンにおける恋愛をテーマにしたアンサーソング/アフターソングの歴史をたどり、その魅力を紐解いていきたい。
アンサーソングやアフターソングの歴史を語るうえで欠かせないのが、DREAMS COME TRUEの「未来予想図」、「未来予想図II」、「ア・イ・シ・テ・ルのサイン ~わたしたちの未来予想図~」だ。最初に発表されたのは1989年の「未来予想図II」だが、物語の時系列としては先述の通りとなる。「未来予想図」では相手との未来を思い描く等身大の恋心が描かれ、〈ヘルメット5回ぶつければそれは ア・イ・シ・テ・ル の言葉のかわり〉というフレーズが登場する。その数年後を舞台にした「未来予想図Ⅱ」では、〈ア・イ・シ・テ・ル のサイン〉は〈ブレーキランプ 5回点滅〉に変化。そして「ア・イ・シ・テ・ルのサイン ~わたしたちの未来予想図~」では、ふたりの回想を挟みつつ〈ねぇ あなたとだから ここまで来れたの〉と、ともに日々を歩んできた相手への感謝が歌われている。一組のカップルの人生を長いスパンで描いたこの三部作は、アフターソングの魅力を象徴する作品と言えるだろう。
アンサーソングの代表例として挙げられるのが、遠距離恋愛中のカップルの物語を描いたSoulJaの「ここにいるよ feat. 青山テルマ」と青山テルマの「そばにいるね feat. SoulJa」だ。2007年発表の「ここにいるよ」では、不器用でうまく愛情を伝えられない男性側の心情が綴られている。一方、翌年リリースの「そばにいるね」では、「ここにいるよ」で客演だった青山テルマがメインボーカルを担当。強がりながらも本当は会いたい気持ちを募らせている女性側の想いがメインで表現されている。同じメロディが両曲に登場するのも特徴で、男性側と女性側、それぞれが抱える寂しさや愛情が2曲を通して浮かび上がり、リスナーはひとつの恋愛物語を楽しむことができるのだ。今年2月には、YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で「そばにいるね」が披露されたことも話題に。リリースから20年近い時を経ても、離れた恋人への想いをリアルに綴った2曲は多くの人の心を動かし続けている。
2009年にリリースされた西野カナの「遠くても feat.WISE」とWISEの「会えなくても feat. 西野カナ」も、遠距離恋愛をテーマにした名曲。女性目線の「遠くても」では、〈いつからかメールペースダウン〉〈会いたいの私だけなの?〉という些細な不安や、〈たった3行ハートひとつでも 嬉しすぎて〉という小さな幸せなど、遠距離恋愛ならではのすれ違いと募る愛しさが描かれており、そういった“恋愛あるある”を詰め込んだ共感性の高い歌詞に西野のさすがの手腕が光っている。対する「会えなくても」は、男性からの視点をメインに描いた一曲。ふたりのボーカルが掛け合いを見せつつ、〈離れてる時間が 改めて君の事が/大切だと教えてくれた〉と、離れているからこそ深まる愛情が表現されている。同じ恋愛を双方の視点から描くことで、両者が同じ方を向いていたことが見えてくるのも、アンサーソングならではの面白さだろう。
2017年にリリースされたコレサワの「たばこ」は、恋人に去られた側の視点で描かれたバラードだ。別れてから初めて相手をきちんと理解してあげられていなかったことに気づく、主人公の後悔が滲んでいる。〈君〉が好きだったたばこの苦味と失恋の痛みを重ねながら、もう戻れない関係性への切なさを際立たせているのが印象的だ。そんな「たばこ」のアンサーソングが、2019年発表の「恋人失格」。部屋を去っていった恋人の視点で描かれた歌詞からは、〈だけどもう君のわがままを/笑顔で聞けそうになくてさ/恋人失格だって 僕は弱かったんだ〉と、その決断の裏にあった葛藤と深い愛情が垣間見える。相手を強く想っていたからこそ傷つき、自分の未熟さを悔いているのはどちらも同じ。その事実が2曲を通して明らかになることで、物語はさらに奥行きを増していく。
優里の「かくれんぼ」と「ドライフラワー」も、令和のJ-POPシーンを代表するアンサーソング/アフターソングのひとつである。「かくれんぼ」での〈散らかったこの狭い部屋〉、「ドライフラワー」での〈二人きりしかいない部屋〉と、一緒に過ごした部屋を起点に紡がれるストーリー。男性視点の「かくれんぼ」では、恋人がいなくなった現実を“かくれんぼ”になぞらえながら受け止めきれずにいる一方で、ブリッジでは〈ひとりにしないで〉という本音も滲んでいる。対する「ドライフラワー」は部屋を出ていった女性側の視点へと切り替わり、強がりながらも相手を忘れられない複雑な感情が、優里のエモーショナルなボーカルによって表現されている。このふたりの物語は、その後「おにごっこ」「恋人じゃなくなった日」と繋がっていった。複数の曲を通して物語を追う楽しさを、あらためて広く知らしめた作品群と言えるだろう。
直近でリリースされたアフターソングとして注目したいのが、Soalaの「ひとりごと」だ。同曲は5月27日にリリースされたEP『Aile』のリード曲。今年1月に公開された「声の軌跡」のMVのアフターストーリーとして制作された作品である。楽曲「声の軌跡」はMVの内容とリンクしつつ、〈君の声をあの日からずっと探してたんだよ〉〈もう一度聞かせて「愛してる」を〉と、失った相手への切実な想いが、美しいメロディとSoalaの感情豊かな歌声によって紡がれていた。
そして、「ひとりごと」で描かれているのはここから先の物語である。相手の声を求め続ける寂しさが歌われた「声の軌跡」に対し、「ひとりごと」では〈私の声ももう君に届かないから〉〈聞こえないはずの愛してる〉〈伝えたかった“ごめんね”と“ありがとう”〉と、あふれる想いを相手に伝えられないもどかしさが表現されている。届けたい相手はもう自分のそばにはいない。だから、発した言葉は会話にならず、“ひとりごと”として宙に漂うだけだ。それでも、ラストのサビで歌われる〈これで最後にするよ ありがとう〉からは、相手との思い出を胸に前へ進もうとする意志が感じられる。大切な人を失った悲しみだけで終わらず、その先の希望まで描いている点こそが、この楽曲の大きな魅力だろう。
DREAMS COME TRUEから西野カナ、コレサワ、優里、そしてSoala。時代を超えて受け継がれてきたアンサーソング/アフターソングという手法の魅力は、ひとつの物語をより深く理解させてくれることだ。リスナーは知っている物語を別の視点から、または続きに触れることで、新しい発見をすると同時に楽曲への没入感を高めていく。物語をより深く知りたいという欲求こそが、アンサーソング/アフターソングが多くの人に愛される理由なのかもしれない。これまでの楽曲がそうだったように、最新のアフターソングとしてSoala「ひとりごと」がどう愛されていくのか、楽しみだ。