SITUASION×プロデューサー・ヨロコビが語る『PALE IN FIRE』の挑戦 “変わり者たち”に刺さる独自の武器
新体制始動から約7カ月、5人組アイドルグループ・SITUASIONが2ndアルバム『PALE IN FIRE』をリリースした。前作『"2"』からわずか数カ月というスピードで制作された本作は、インダストリアルな電子音楽やグランジロックを内包しつつ、彼女たちの新たなポップネスを提示する。今回、プロデューサーのヨロコビ氏を交え、メンバー個々の歌声の魅力や収録曲の深掘り、世界を見据える今後の野望を聞いた。(編集部)
新体制7カ月での進化、5人が語るアイドルの形
――新体制になって7カ月ほどになりますが、新メンバーのお二人は慣れてきましたか?
風間花音(以下、風間):加入当初は私も華琳ちゃんも追いつくのに必死で、まずは活動に慣れるところからのスタートでしたけど、最近は振りを覚えるスピードも速くなりました。今はメンバー5人で「こういう風に表現したい」という意思疎通ができるようになって、もう一段階ステップアップできたように感じています。
大月華琳(以下、大月):お披露目当初はお互い探り探りで、先輩メンバーの3人も私や花音ちゃんに対して「こうしたほうがいい」というアドバイスも言いづらい環境だったと思うんです。でも今はメンバーみんな仲良くなって、どうやったらステージがより良くなるか意見を出し合えるようになりました。入りたての頃よりも、今の方がきちんとステージに向き合えています。
――先輩メンバーの3人は、新体制以降の変化を感じることはありますか?
羽柴愛実(以下、羽柴):今まではメンバーそれぞれが考えたことをライブで表現する感じで、個々でぶつかり合っているような側面があったんですけど、今は5人でひとつのものを作ろうという方向に変わりました。前のやり方もそれはそれで良さがあったんですけどね。
蒼井輝菜(以下、蒼井):実際、前よりもメンバーと意思疎通や会話することが増えました。ステージの見せ方はもちろんですけど、相手のことをより深く知ることで「もっとこうしたほうがいい」という気持ちが出てきました。
杏優:改めてメンバーと向き合うことで、それぞれの良さや尊敬できる部分を見つけられたり、ダンスのクセを発見したり。いろんなことに新しく気付けるようになりました。
――ヨロコビさんは今の体制について、前と比べてどんな部分が変わったと思いますか?
ヨロコビ:楽曲やダンスの内容も前体制の頃から変わって、より複雑なものになっているので、自分ひとりで考えるのではなく、みんなで見せることを考えないといけない環境になってきたと思います。振り返ると、前の体制はそこまでアイドルっぽくなかった気がするんですよ。最初はアイドルしていたけど、最後の方はアイドルらしさとは別の何かになっていた。楽曲自体はむしろ今の方がキモいんですけど(笑)、この5人体制になって、より“アイドル”になったんじゃないかなと思います。
蒼井:自分たちとしてはずっとアイドルとして活動してきたので、今の話を聞いて「アイドルじゃなかったんだ」とは思いましたけど(笑)。でも言われてみたら確かに、前はアイドルらしさとは別の何かを突き詰めていた気がします。「己の中の化け物じみた何かを出す」みたいなイメージでやっていたので。
――前体制はパフォーマーの側面が強くなっていたのかもしれないですね。そんな変化の中、新体制で2作目のアルバム『PALE IN FIRE』が完成しました。前作のアルバム『"2"』と比較して、今作はどんな作品になったと感じていますか?
羽柴:前作が新生SITUASIONの自己紹介だとしたら、今回は「私たち、こんなこともできちゃいます!」という感じかも。普段はしない歌い方に挑戦していたり、ハモリも多いですし、振り付けが大変な曲も多くて。
蒼井:いつもなら普通にできる振り入れが全然できないんです。難しいのか何なのかわからないんですけど、頭に入ってこなくて、誰もできずに振り入れの初日が終わることばかりで。そんなこと今まではなかったんですけど……。
風間:スケジュールが詰め詰めなのもあるかも。今までよりも一段階上のことを短期間でやっているので。これまでのSITUASIONよりもレベルの高いことをやっているなとは思いますね。
――それは『"2"』の時よりも?
風間:ですね。でも私の解釈では、楽曲的には『"2"』よりもわかりやすくなったと思うんですよ。旧体制や『"2"』の曲を聴いた時は「これはどういう曲なんだろう?」と不思議な気持ちになることが多かったけど、今回のアルバム曲はデモを聴いた段階で「これはこういう曲なんだ」とか「この曲はこう見せたいのかな」というイメージがしやすかったんです。なので、SITUASIONをあまり知らない人が聴いても「かっこいい!」と思ってもらいやすい作品だと思います。
杏優:確かに花音ちゃんが言うように、歌詞はわかりにくくても音は馴染みやすくなった印象です。でも、相変わらず鋭くてSITUASIONらしい変な部分もありますけど(笑)。
大月:私もSITUASIONに加入する前は、普通のアイドルソングとは違う個性的な曲が多いなと思っていて、加入が決まって『"2"』の曲を聴いた時も「なんだこれは?」と衝撃を受けたんですけど、今回もちゃんとびっくりしました。ダンスだけでなく歌の難易度も上がっていて、レコーディングは苦戦しましたけど、メンバーの新しい一面や「こんな歌い方ができるんだ」という発見がある作品だと思います。
――今作『PALE IN FIRE』はヨロコビさんがほぼ全曲の作詞・作曲を手掛けていますが、全体の構想やコンセプトについてどのように考えて制作しましたか?
ヨロコビ:『"2"』の制作は半年ほどかけたのですが、今回は2、3カ月での制作だったので、ほとんどの曲を思いつきで作ったんです。その結果、逆にキャッチーになったのかなと思っていて。自分はキャッチーなものも意外と好きで、もともとサザンオールスターズが好きなので、もしかしたら自分の中のサザンが無意識に出たのかも。
――とはいえ、サウンド的にかなりエッジが効いているので、あまりサザンっぽさは感じないですけどね。
ヨロコビ:まあそうなんですけど(笑)、奥底にある何かが出ているのかなと。時間をかければいいわけでもない、というのは自分でも勉強になりました。もちろん適当に作ったわけではなく、振付師もメンバーも同じような瞬発力で作ったので、振り入れが大変というのもその影響だと思いますが、逆に勢いが伝わる作品になったのかなと。
――コンセプトをガチガチに固めるというより、前作からあまり間を空けることなく、このタイミングで新作を出すというスピード感を重視したわけですか?
ヨロコビ:そうですね。去年の9月に新体制をお披露目してしばらくしてから、ライブを観ているうちに「こういうのもできるんじゃない?」という発想が浮かんできたんです。なので今作は全曲メンバーに向けて書く、というのが一応のコンセプトとしてありました。
――今の5人だからこそ表現できるものを目指したと。メンバーの皆さんも前回の取材で本アルバムからの先行曲について、歌割りや歌詞などに「メンバーに寄り添ってくれている感じ」がするとお話ししていました。具体的にどの部分でそう感じましたか?
杏優:私は、ライブでファンの方にも好評な「SLIP」の〈TARI-LARI-LA〉という歌詞のところですね。自分の声質を活かしてもらえたなと感じました。実際はどうか知らないですけど(笑)。
ヨロコビ:まあメンバー本人に直接そういう話はしないからね(笑)。でも楽曲を作る時は、「ここはこの子に歌わせたい」って歌割りを想像しながら作っているので、その意味では寄り添っているはず。
風間:私は「DOOM AND BLOOM」のファルセットで高音を歌う長いソロパートをいただいて、そこは自分の得意な部分を活かせたと思いますし、逆に「EMBERRRRR」のDメロの〈Ah ボヤボヤしてたら気付かない〉の部分は、ただ綺麗に歌うとそれだけで終わってしまうので、自分の技術力や表現力が試されているなと感じました。
大月:私はもともと歌うことは好きだけど、自信があったわけではなくて。でも、今ライブでお披露目している「PARA STEP」と「GIRL WITH NOTHING,BUT EVERYTHING」は、これからグループにとって大事な曲になる予感があるなかで、その2曲の歌い出しを任せてもらえたのは嬉しかったです。
羽柴:私は「ここ」というのは特にないですね。
――では、SITUASIONの中で“自分らしさ”を発揮できていると思う部分は?
羽柴:それもないです。早くSITUASIONの一部になりたいと思いながら活動しているので。
ヨロコビ:確かに自分もまだ、羽柴愛実の良さを楽曲で出し切れていないと思っているんですよ。「こうやったら愛実がもっとかっこよくなる」という想像は頭の中でできているけど、それを実際に形にはできていなくて。彼女は持ち味的にすごく難しい領域なので、仮に“シンガーソングライター・羽柴愛実”が曲を書くとしたらどんな曲になるか、ということがわかればいけると思うんですけど……自分が羽柴愛実にならないといけないのかも。
一同:(笑)。
――輝菜さんはいかがですか?
蒼井:……。
ヨロコビ:いや、なんかあるでしょ(笑)。
蒼井:(笑)。最近「自分らしさって何だろう?」と悩んで迷走していた時期があって、ヨロコビに聞いたら「エモさだよ」と言われたんです。でも自分の中で「エモいって何だろう?」となってしまって……。
――では、今回のアルバムで「エモさ」を出せたポイントはありますか?
蒼井:自分で「エモさ」とか言うのは恥ずかしいですけど(笑)。でも、「LULLABY.mp3」の歌詞が「全部夢だった……」みたいな内容で。私もよく夢というかファンタジーやおとぎ話のような話をするので、そういう空気感を頑張って表現したいなと思って歌いました。