a flood of circle 佐々木亮介が掲げるロックの美学 リハなし、演出なしで臨んだ異例の日本武道館公演の裏側
リアルサウンドが、音楽家・クリエイターをサポートする一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)とコラボレーションし、アーティストのインタビューをお届けする「Spot “Rights” powered by JASRAC」。今回は、a flood of circleの佐々木亮介(Vo/Gt)が登場。
2026年5月6日、結成20年目にして初の日本武道館公演を開催。8月にベストアルバム『革命未遂の蝶が見る夢』をリリースし、来年1月まで続く全国ツアーも決定するなど、精力的な活動を続けている。飾らない言葉と音楽で真正面からリスナーと向き合ってきた佐々木。「働きたくないからバンドやってます」と笑う彼に、日本武道館公演を振り返ってもらいながら、バンドの現状について聞いた。(森朋之)
シラけさせたかったーー日本武道館にも貫かれた佐々木亮介の生き方
ーー2026年5月6日、バンド結成20周年を記念した『a flood of circle 20周年記念公演 LIVE AT 日本武道館』が開催されました。武道館ライブが発表されたのは、昨年11月9日に新宿歌舞伎町で行われたフリーライブ。この半年間、佐々木さんにとってどんな時間でしたか?
佐々木亮介(以下、佐々木):最初はとにかく赤字が怖かったんですよ。武道館をやるのはいいけど、赤字になったらイヤだから、それをどうしようかとずっと考えてて。先輩の山中さわおさんや怒髪天の増子直純さんにも「武道館終わったら、ライブの動員減るから」って言われていたし、赤字を抱えた状態で、さらに動員減ったら最悪じゃないですか。きついなーって心配してたんですけど、今年の3月くらいに、どうやら黒字になりそうなことがわかって。その時点で武道館はOKだなと思ってました。
ーー1月から4月にかけて行われた対バンツアー「日本武道館への道」にはSPARTA LOCALS、9mm Parabellum Bullet、cinema staff、Nothing's Carved In Stone、バックドロップシンデレラ、GLIM SPANKY、ヒトリエ、BIGMAMA、ドレスコーズ、山中さわお&ELPIS、PK shampoo、w.o.d.、SIX LOUNGE、My Hair is Bad、[Alexandros]がゲストとして登場。佐々木さん、リハをやらず、開演ギリギリに会場に来てたそうですね。
佐々木:はい。前からそうしたかったんですよ。ライブが19時からだったら、19時に行きたい(笑)。そうしたら、その時間まで遊べるじゃないですか。そもそもリハをやる意味ってあんのかな? と思っていて。やってもやらなくても大して変わらないのに、なんでこんな無駄なことしなくちゃいけないのか……って、そのまま言うと嫌われそうだから、ちょっとずつやっていたんです。「今日、試しにリハ行くのやめてみようかな」みたいな感じからはじめたら、みんなもだんだん慣れてきて。最後は19時ギリギリに行っても何も言われなくなりました。もしかしたら嫌がられてるのかもしれないですけどね。一度ちょっと空気が悪いときがあって、「明日はリハ行こうか」って言ったら、「いや、来なくていい」って(笑)。メンバーにも諦められました。
ーーすごい。観てるほうはドキドキしますけど。
佐々木:そうそう。俺がドキドキしてるんだから、観てるほうもドキドキするだろっていう理屈ですね。
ーーギリギリの時間に来て、ギターにアンプを差して、いきなり歌い始めて。
佐々木:音響のスタッフの皆さんに迷惑をかける勇気はないので、ギターのサウンドチェックをやっていたんですよ。マイクチェックのつもりで弾き語りしていたら、メンバーもステージに上がってきて、そのまま1曲目が始まったり。前にロンドンに行ったときに、The Libertinesのライブを観たんですけど、明らかに酔っぱらってるメンバーが開演時間の20分後に来て、1曲目はサウンドチェックだったんです。そのとき「これでいいじゃん」と思ったんですよね。人の真似ですけど(笑)。
ーーでも、ツアーを通してa flood of circleのライブはどんどん良くなった印象があって。特にツアー最終日の[Alexandros]との対バンは素晴らしかったです。
佐々木:ホントですか? だとしたらリハしなかったのが良かったのかも。確かに前よりもマシになってるというか、きちんとリハしてライブをやるって、ピアノの発表会と一緒だと思うんですよ。ピアノの発表会はそれでいいんだけど、自分たちのライブでそれをやるのはイヤで。それって結局、成長、成功、資本を勝ち取るっていう企業理念みたいなものじゃないですか。俺は働きたくないからバンドをやってるし、資本主義の奴隷だっていう自覚はありつつ、そこは抗いたくて。家賃を払うために生きてくの? って話で、面白く生きたほうがいいじゃないですか。あと[Alexandros]との対バンの日は武道館直前だったので、いい感じでメンバーが俺のことを諦めきった頃だったんですよ(笑)。それも含めて、発表会みたいなライブをやるよりはマシだったと思います。……俺、不良じゃなかったし、根がマジメなんですよ。常識人だからこそ、がんばって抵抗しているっていうのはあるんじゃないかな。
ーー武道館ライブもそういう意味では“いつも通りのa flood of circle”だったかも。開演10分前に客席から登場してステージに上がったのもそうだし、サウンドチェック中にメンバーが登場したのもそう。会場の客電をつけっぱなしだったのは、いつもと違ってましたけど。
佐々木:それもずっとやりたかったんですよね。ウチのスタッフはちゃんとしてるから「客電つけてると、お客さんがライブに集中できないよ」と言われたんですけど、駄々こねてたら「しょうがないか」と諦めてくれて。とにかく卒業式みたいな感じにしたくなかったんです。「ここまで来れたのはお客さんやスタッフのおかげです」みたいなのは絶対にイヤだったし、そのためにはどうしたらいいだろう? と考えて、「逆に本物の卒業式みたいにしたらいいんじゃないか」と思い付いて。武道館って、大学とかの卒業式をよくやってるじゃないですか。それを見ると客電はつけっぱなしだし、校歌とかを合唱するためのスクリーンがあって。「この感じでやりましょう」って動画の資料をスタッフのみなさんに送りました。何ていうか、シラけさせたかったんですよね。武道館だからって派手な照明とかレーザーとか炎とか、イヤじゃないですか。普通のツアーで客電つけっぱなしにしてもあんまり意味がなくて、武道館でやるから「ここでやるんだ?」ってビックリしてくれるかなと。演出しないという演出なんだけど、「みんなと同じようなことをやるのはもういいだろう」と強がりたかったんです。
ーー武道館の前に飾る看板もバンドのロゴだけというシンプルさでした。
佐々木:それも話し合いました。普通だったら「a flood of circle 20周年記念公演 LIVE AT 日本武道館」にするんだろうけど、武道館だっていうのは見ればわかるじゃないですか。日付を入れてもしょうがないし、バンドのロゴだけの看板って見たことないなと。思い付いたことは全部やりました(笑)。
ーーセットリストについては?
佐々木:当日のリハはやらないのは決めていたし、メンバーになるべく嫌われたくないので、2カ月前には決めてました。まず大体こんな感じというセトリを決めて、ツアーをやりながら何曲か入れ替えて。ツアー中はいきなり曲を変えることがあったんですけど、武道館はみんなの親も来てるし、そんなことしたらイヤかなと思って、全部セトリ通りにやりましたね。30曲以上やることなんて普段ないので、そこはいつもと違ってましたけど。
ーー特に「夜空に架かる虹」の〈5月6日 武道館 目を開けて夢を見ている〉というフレーズや、「ゴールド・ディガーズ」の〈武道館 取んだ3年後 赤でも恥でもやんぞ〉という歌詞を歌わずに両手を上げたときはさすがにグッときました。
佐々木:ちょっと恥ずかしいんですけどね。アイデアがないときに頼っちゃうヤツだし、才能のないやつがたどり着く先が伏線回収だと思っているので。あと「ありがとう」って言っちゃったんですよ、たぶん。チケットが売り切れていたら言わなかったんですけどね。1万枚が即完していたら、30分くらいやって唾を吐いて帰ろうと思ってたんだけど(笑)、結局ソールドアウトしなくて。ツアー中も「お願いします」ベースだったし、売れ切れもしなかったので、まだまだ「ありがとう」と言っとかないとなって。