BTS、Mr.Children、ずっと真夜中でいいのに。、King & Prince、羊文学、Tele……注目新譜6作をレビュー
New Releases In Focus
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はBTS「SWIM」、Mr.Children「キングスネークの憂鬱」、ずっと真夜中でいいのに。「ultra魂」、King & Prince「Waltz for Lily」、羊文学「Dogs」、Tele「ロープウェイ」の6作品をピックアップした。(編集部)
BTS「SWIM」
規格外のカムバックを果たしたBTS、5thアルバム『ARIRANG』からのタイトル曲。水に溶けていくような歌声で繰り返される〈Swim, swim〉のリフレインがなんとも印象的で、ポップスとしての心地よさ、オルタナティブと呼ぶべき実験性、ジャズやエレクトロニカを巻き込みながら進化するビートミュージックの現代性を見事に備えている。音像自体が恐ろしく格好いいのだが、混沌とする〈Bad world〉と向き合い、〈Name a place that I could breathe on this map, world〉(この地図のどこでなら息ができる?)と迷いを吐露する歌詞がなんともBTSらしい。世界中が待ち望んでいた復活劇を、「待たせたな、アゲていくぜ」みたいな態度から始めないのだ。航海をテーマにしたMVもハリウッド映画のごとし。(石井)
Mr.Children「キングスネークの憂鬱」
刺激的な打ち込みのビート、機械的な響きのコーラス、煌びやかな妖しさを感じさせるシンセが聴こえてきた瞬間、「ここから何かが始まる!」という期待感で包まれる。ニューアルバム『産声』の1曲目を飾る「キングスネークの憂鬱」は、大きなステージでのライブシーンを想起させるアッパーチューンだ。どこか内省的なイメージをまとっていた前作『miss you』以来、2年5カ月ぶりとなるニューアルバム『産声』は、一緒に歌えそうなコーラスパートがふんだんに取り入れられるなど、ライブの高揚感が想像できる楽曲が印象的。そのことを象徴しているのがこの「キングスネークの憂鬱」であり、〈一切の憂鬱を/その声に乗せて weh eh oh/吐き出せ〉というサビの解放感は聴く者すべての憂さや悩みを――たとえ一瞬であっても――吹き飛ばすパワーに満ちている。早くライブ会場で体感したい。この曲を聴けば、誰もがそう思うだろう。(森)
King & Prince「Waltz for Lily」
18作目のシングル表題曲「Waltz for Lily」は、永瀬廉、吉川愛のダブル主演映画『鬼の花嫁』の主題歌。永瀬、髙橋海人が〈もう泣かないで もう泣かないで...〉というフレーズをそっと語り掛けるように歌い、美しいストリングス、切ないギターの音色が聴く者を優しく包み込む。ドラマティックなメロディを軸にしたオーセンティックなラブソングなのだが(歌詞もめちゃくちゃロマンティック)、厚みのあるベースライン、しなやかなグルーヴを感じさせるビートによって、ダンスミュージックとしての機能を含ませているのがこの曲の個性。パフォーマンスでは二人の表情豊かな歌声とダンスをしっかりと堪能できるはずだ。曲名のモチーフはおそらくジャズの超名盤、ビル・エヴァンスの『Waltz for Debby』。興味ある方はこちらもぜひ。(森)
ずっと真夜中でいいのに。「ultra魂」
アルバム『形藻土』収録曲のひとつで、ACAねのX(旧Twitter)アカウントによれば「“ultra魂”は、なんとZUTOMAYO CARDの公式オープニングテーマに選ばれました.’ (自作自演)」(※1)という一曲。あえてラジカセで録音した1分20秒の小品で、作品のインタールード的な役割も果たしている。くぐもったカセットの音質は、平成レトロカルチャーを狙い撃ちにするずとまよにとって絶対にやりたかった夢のひとつかもしれず、曲の展開やアレンジの妙味というより、うっかりレトロと出会ってしまった時のテンション、みたいなものを詰め込むことに意味があるのだろう。タイトルはつい「ウルトラソウル」と読みたくなるが「ウルトラたましい」が正解。実はさりげない自己肯定ソングでもある。(石井)
羊文学「Dogs」
4月2日からNetflixで世界独占配信となるドラマ『九条の大罪』主題歌となる書き下ろし新曲。割れたフィードバックノイズに始まり、不協和音が、砂嵐のようなノイズが、狂ったミックスバランスで暴れ出す。J-ROCKと呼ばれるギターバンドの常識を完全に逸脱した、羊文学の中でもトップクラスに激しく暴力的な真性オルタナティブロックである。これを是としたレーベルもドラマサイドもすごいが、〈やんのか、逃げるか、自分で決めな〉〈うっせー〉などと筆を走らせた塩塚モエカ(Vo/Gt)の勢いもすごい。ただ、彼女の品格がそれでも落ちないのが一番驚異的。歌声とメロディだけは、うっとりするほど美しく透明だ。(石井)
Tele「ロープウェイ」
全国ツアー『Tele Tour 2025 – 2026「蟲」』でも披露され、新曲にもかかわらず各地で心地よい解放感とシンガロングを巻き起こした「ロープウェイ」。この楽曲には現在のTeleのモードと普遍的なポップセンスがしっかりと込められている。まず印象的なのは、しなやかな躍動感に溢れたボーカルライン。まるで目の前で生み出されたような新鮮さと自由さに貫かれていて、声に身を任せるだけで心と体がほどけていくのがわかる。歌詞で特に心に残ったのは〈この一本道をあなたと無駄にしたいだけ。〉という一節。人生に意味はない、ただ自分が信じたいことを信じて、とにかく生き延びよう。そんなメッセージに惹かれたとしたら、それはあなたの精神が瑞々しいからだろう。(森)
※1:https://x.com/zutomayo/status/2034959122077257729