上野皓平、新たなスタート地点で歌う“愛”のあり方 ソロ1st EP『Silver Lining』で描く渇望と光
The Songbardsを経て、ソロとして再び歩み始めた上野皓平が、1st EP『Silver Lining』をリリースした。逆境のなかから希望の光を見つけようと渇望し、音をかき鳴らす彼は今、何を思い、何を表現したいと考えているのか――。上野皓平と対峙し、彼の表現の根幹にあるもの、そしてEP『Silver Lining』の成り立ちについて、たっぷり話を聞かせてもらった。表現者として新たなフェーズに突入したことを予期させる彼の素顔に迫る。(笹谷淳介)
「とにかく突き詰めていきたかった」――ソロ・上野皓平の矜持
――The Songbardsのバンド活動を経て、ソロとして新たに歩みを進まれた今のお気持ちからお聞きしてもいいですか?
上野皓平(以下、上野):率直に言うとわくわくしているというのが本音ではありますけど、バンドのこともあり、気持ちのいいスタートではなかったと思います。とはいえ、バンド時代から変わらず応援してくださっている方や僕のソロ活動を応援してくださっている方もいらっしゃって。ゼロからではないですが、イチからの気持ちという意味で、わくわくしていますね。
――今作『Silver Lining』リリースまでの時間を振り返ると、上野さんにとってどんな時間だったのでしょう。
上野:あらためて、人との関係や大切にすべきことは何なのか、そういうことを振り返りつつ、今後自分がどう生きていきたいかを考えた時間であり、人と接するうえで何を自分は大切にしたいのかを考えていました。僕は音楽を通して何を表現し何を伝えたいか、じっくり考える時間になっていたと思います。聴いてくださる方がいないと僕はこの活動を続けていくことはできませんけど、それと同じくらい「自分がしたくて音楽をやっている」という気持ちが強くなりました。
――表現者として存在し続けたいという気持ちの強さ?
上野:そうだと思います。ソロ活動することになった背景にも、少なからず自分が表現したいものへの追求があったし、とにかく突き詰めていきたかったんです。
――そのうえで、上野皓平というシンガーソングライターが音楽を介して伝えたい、表現の根幹にあるものを言語化できますか。
上野:シンプルに答えると、“愛”ということになると思うんです。それを伝えるためには、世界観や表現方法、音楽ジャンルなど数多も方法はあると思うんですけど、手を替え、品を替え、愛の輪郭を表現しているのが自分の音楽というか。そうあってほしいなと思っています。
――さまざまな感情があるなかで、なぜ“愛”だったんでしょう。上野さんをそうさせる原体験があったんですか?
上野:原体験で言えば、大学時代自分の人生の方向性に行き詰まった時期があったんですよ。大学生って、自由な時間が増える時期でもあって、授業はあっても、それ以外はアルバイトをしてお金を稼いで、自分の好きなものを買って、好きなように過ごせる。ある種、物質主義的な期間だったような気がします。服やモノが好きだったので、給料日を楽しみに生きていて、給料をもらったら服屋に行っていろいろ買って、そういう時間を過ごすなかで、ふと「これが一生続くのかな」とそれが幸せじゃないような気がしたというか……。もちろん、それだけが行き詰まった原因ではないんですけど、何かに渇望して、満たされる、そんな人生のサイクルになっていくのかな、と――。
――モラトリアムのなかでふと我に返る瞬間があったというか。
上野:はい。そこから精神的に落ちた時期があって、その時期に本屋で『ブッダの言葉』という超訳の本に出会って。信仰しているわけではなかったんですけど、読んでいるとスッと心が楽になった気がしたんです。そこから人生のメソッド的な本を読むようになっていったんですけど、いろんな本を読んで自分なりに解釈した結果をぎゅっとまとめると、「やっぱり愛か」ということだったんです。すごく言語化が難しいんですけど、現時点での暫定的な自分の価値観として、根底には愛があるんだろうなとは思っています。
――今の愛のお話を聞いて思うのは、今作『Silver Lining』もまさしく愛の詰まった作品でしたよね。
上野:そうですね。愛だったと思います。
――ソロになった際の気持ちをお聞きしましたけど、このタイトルこそが今の上野さんの気持ちを表していると思うし、生身の人間として表現された作品群だったと思うんです。この作品はいつ頃から着手されたんですか?
上野:昨年の10月頃、「EPにまとめよう」という話し合いを重ねていったんです。その前に、「欲望」という曲を今作でもご一緒した阿南智史さんにサウンドプロデュースしてもらって。リリース直後にいくつかデモを彼に投げて、阿南さんから「All Your Love」と「Self Timer」をアレンジしたい、という返事をもらったんですよね。その時点ではEPにすることは決まってなかったんですけど、僕のほうからスタッフさんに「EPにしたい」と話しました。
――ちなみに、阿南さんと共同制作することになった経緯は?
上野:きっかけは制作スタッフさんのご紹介でした。「僕に合うのではないか」というご提案で。そこから「欲望」でご一緒して、ファーストインプレッションから「自分の曲を任せたい!」と思えたんです。彼は結構寡黙でクールなタイプで、大袈裟でもなければ、口が上手いわけでもない。でもその数少ない言葉のなかで核心を突いた言葉をくれる人なんですよ。そういう意味で自分の曲をお任せしたいと思ったし、ルーツも年齢も近いので共通言語もあった。だから、「欲望」もアレンジは任せっきりで上がったものそのままでレコーディングまで終えて(笑)。そこから一緒にEPを作ることになって、より密にコミュニケーションを取るようになりましたね。
――上野さん的に、いちばんビビッときたポイントはあったんですか?
上野:阿南さんは、見えているビジョンがしっかりしていて、それを言語化できるんです。たとえば、「欲望」の制作時にはデモを聴いて、「いい」と思ったところをしっかりと伝えてくれたし、そのうえで「歌謡曲っぽいメロディとUKロック的なギターロックを組み合わせたものを出したら新しいかもしれない」と、こちらがわくわくする提案を的確に出してくれたりして。その感覚がすごいと思ったんですよね。