AKB48 倉野尾成美が赤裸々告白 現役がOGメンバー参加に抱いた複雑な感情、「ここで負けたら終わる」20周年の悔しさ
「完全にアウェイでした」――戦闘体制で臨んだ武道館公演
――高橋さんと同じく、初期メンバーである前田敦子さんとの交流もありましたね。
倉野尾:私は前田さんがご卒業されてから加入しているので、最初は「見ていた人だ!」という感覚がありました。印象的だったのは、「Oh my pumpkin!」で歌番組に出演するためのリハーサル中に、私たちに「もっと元気にやってもいいと思うよ」と短いけど的確なアドバイスをくださったことで。前田さんが感じたことを感じたままに言ってくれている姿が、すごく響いたんです。現役のことをしっかり見てくれていることがわかって、優しさを感じました。
――ご自身はお祭りを楽しむだけでもいいかもしれないのに、現役メンバーのことをちゃんと見てくれていたんですね。
倉野尾:そうなんです。シングルに参加してくださるだけでもありがたいのに、現役との活動に対しても一つひとつ向き合ってくれていることが伝わって、嬉しかったです。
――現役メンバーとして、武道館公演で「こういう姿を見せたい」というイメージは明確に決まっていたのでしょうか?
倉野尾:“縮こまらないこと”をいちばん大事にしていました。卒業生がセンターに立って、現役はそのまわりで踊るという構成が多かったので、特別感もありますし、なかなか敵わないじゃないですか。そのなかで、どうやって現役メンバーが目立てるのか、どう立ち向かっていけばいいのかをすごく考えました。だから、セットリストをもらっていちばん最初に抱いたのは、「自分たちを消さないようにしないといけない」という想いで。「この気持ちを現役メンバーにも共有しなきゃ」と思ったんです。なので、「先輩方を食っていくくらいのガツガツ感がないと、視線はこっちに向かないよ」ということを、ことあるごとに伝えていました。
――AKB48のコンサートではありますが、気持ち的にはアウェイだったんですね。
倉野尾:別のアーティストのコンサートだと感じるくらい、完全にアウェイでした。現役の出ている時間だけ、明らかに歓声の量が減ってしまうんですよね。こちらもできる限りのパワーでやるんですけど、明らかに会場の温度が違っていて。初日が終わったあとに「やられちゃったね…」という反省を楽屋でしていました。でも、「明日、明後日もそうなってしまうかもしれないけど、やり切るしかない!」って、みんな戦闘体制で。ここで負けていたら終わってしまうから、自信を持って楽しんで、いつも通り自分たちらしくやれば大丈夫だと鼓舞していました。
――新しいファンを獲得する、ある種のチャンスの場でもありますよね。
倉野尾:その意識はありました。先輩方がトロッコに乗っていると、ステージで踊っている現役メンバーではなくて、どうしてもトロッコに視線がいってしまうんですよね。でも、ひとりでもこっちを観てくれる人を増やそうという気持ちを持ち続けていました。
――初日公演は、“チーム8祭り”と言ってもいいような内容でしたね。
倉野尾:同期が集まっていて、すごく楽しかったです! 数年ぶりに会うメンバーがいたり、みんなの近況も聞けたりして。大所帯でなかなか集まれるタイミングもないので、同窓会みたいな雰囲気もあって、とてもいい機会をいただけました。AKB48の歴史のなかにチーム8が存在している、その一員として認められているということが10年前じゃ想像できなかったですし。武道館期間は、初日からずっと気を抜ける瞬間がなくて、ずっと肩が上がっているような感覚があったんですけど、あの日のチーム8ブロックだけは、自分に戻れたというか。いちばん自然な私としてパフォーマンスができた気がします。観ていた方にも「この瞬間がいちばんなるらしかった」って言っていただけました。
――歴代総監督による「愛しさのアクセル」も話題となりました。
倉野尾:この曲は、ひとりで剣を振り回す姿がかっこいい曲なんですけど、それを4人でやったら逆に面白くなっちゃうんじゃないか、って。「どっちにいくんだろう?」というのが、最初に思ったことでした(笑)。リハのときから「(かっこよく見せられるか面白くなるか)紙一重だよね」という話はしていました。でも、当日は大きな歓声をいただけたのでよかったです。歴代総監督でパフォーマンスをする機会なんてなかなかないと思うので、本当に大きな経験でした。
前田敦子、大島優子……レジェンドたちとの共演で生まれた感情
――最終日には前田さんや大島優子さんなど、レジェンドメンバーが揃いました。倉野尾さんは、どのような思いで見ていましたか。
倉野尾:みんなが観たかったAKB48が詰まっていましたよね。多くの人が望んでいた瞬間をたくさん目撃できたと思いますし、すごくメモリアルなコンサートだと感じてます。でも、あの時代の楽曲で盛り上がっている状況には、「ここには食い込めなかったのか」という悔しい想いもやっぱりありました。だけど、一緒にステージに立つと「やっぱりすごいな」と納得させられることばかりで。もちろん私もファンだった時代があるので、半分は嬉しい気持ちだけど、半分は「負けないぞ」という複雑な感情でしたね。最終日はチーム曲のブロックもあって、私はチームKの先輩方と一緒にパフォーマンスをしたんですけど、「あの時代のチームKに自分がいる」という喜びもあるし、同時に強い悔しさもあるし。自分でも意味がわからなくなるくらい、初めての感情に出会いました。
――チームKは特に体育会系の雰囲気が強いチームでしたよね。
倉野尾:先輩方は久しぶりに踊るということだったんですが、もうかっこよすぎるんですよ。リハーサルも本気でやってくださって、本当に当時のままの空気感で。現役も呑まれないように、「先輩たちより低い姿勢で踊ろう」とか言い合って、一つひとつの動作にこだわりながら爪痕を残せるようにパフォーマンスしました。
――千秋楽ラストのダブルアンコールは、現役メンバーのみのパフォーマンスで終わるという構成も印象的でした。セットリストは倉野尾さんが考えたそうで。
倉野尾:たかみなさんが「ダブルアンコールは絶対に現役だけでやった方がいい」って言ってくれて、私が楽曲を選びました。1曲目の「緞帳を上げてくれ!」は、先ほど話した『ここからだ』公演のアンコール1曲目の楽曲でもあって、すごく気が引き締まる楽曲なので、絶対に入れたいと思って。私たちの言いたかったことが歌詞に詰まっていて、このタイミングでやるのにもピッタリだったんです。
――2曲目の「次のSeason」は、2012年リリースなので少し懐かしい選曲でしたね。
倉野尾:これも歌詞で選びましたね。当時アンダーガールズのメンバーさんが歌っていた楽曲ではあるんですけど、今のメンバーで歌うとまた響き方が変わる気がして。構成も工夫して、当日は1番は先輩メンバーが歌って、2番は後輩メンバーが歌っているんです。「次のSeason」という言葉の意味合いは、当時と今では違うとは思うんですけど、今の私たちが伝えたいメッセージを届けられたと思います。
――最後は新公演タイトル曲「ここからだ」でした。
倉野尾:最後の曲は、いちばん悩みました。この曲は、前総監督の向井地美音さんと一緒に選んで。「ここからだ」は、あまり振り付けがないからこそ、視線や表情で語る曲なんです。「ここで自分たちの意思をはっきり見せたほうがいい」という想いから、この曲に決めて。ありがたいことに「3公演のなかでダブルアンコールがいちばん良かった」という声を多くいただくことができました。もともと「『(現役のパフォーマンスが)いちばんよかった』と思ってもらわないといけない」という覚悟で臨んだので、響いてくれたことは嬉しかったですね。