SARUKANIが誘う“人力”の狂気にまみれた「SARUVEGAS」の世界 ゲスト続々、新体制初ワンマンに滲んだ三者三様の決意

 2月20日、ビートボックスクルー・SARUKANIのワンマンライブ『777 -THREE SEVEN-』が東京・Zepp DiverCity(TOKYO)にて行われた。フィーチャリングシリーズ『arigato.』の第1弾「キャパオーバー」に参加したみきまりあ(NOMELON NOLEMON)をはじめ、第2弾(未発表)のコラボ相手であるギタリスト・Ichika NitoとトラックメイカーのRINZO、ビートボックスにおける盟友の田中洸希(SUPER★DRAGON)やJohn-T(Jairo)、Jeneらも登場。ビートボックス生セッションシリーズ『X The Mouth Session』からは、「Baby.U」で共演したシンガーソングライター・idomもステージに立った。

 さらにはハイパーヨーヨーアクセルのプロ集団・TOP ACCEL SPINNERまで壇上でパフォーマンスを見せる大盤振る舞い。本稿では、盛りだくさんの内容で展開された狂乱のステージの模様をお届けする。SARUKANI新体制初のワンマンライブ、そこには三者三様の決意があった。

“人力”の狂気にまみれた「SARUVEGAS」

 ステージ上のスクリーンには“SARUVEGAS”と表示され、カジノを思わせる絢爛な世界観が展開。曲目の1発目には、2月4日にリリースされたEP『EPISODE 777』から「777」が披露された。

 原曲からしてエレクトロスウィングのテンション感とビンテージっぽさがあったが、ライブではよりスケールの大きさを体感できた。ステージに立つ彼らの前のめりな勢いも相まって、毎秒引き込まれる感覚があった。

 ビートボックスはその名が示すように、超人的な人力ビートによって構築される。テクノやハウスがそうであるように、キックをひとつの目印にして様々な音を足し引きしてゆく。「BEST SHOT」から「HUNGRY」へはシームレスに繋がっていったが、ダブサイレン的な音もサンプリングするようにトラックを彩ってゆく。

 それはさながら、DTMが流通する前のDJたちがアナログな手法でサウンドを作ってゆくニュアンスに近いように感じられた。高まるBPMは、オーディエンスの体温も上げていった。

 TOP ACCEL SPINNERが招かれた「SPIN’N’TURN」ではさらにフィジカルな魅力が増し、〈look at the hyper skills!〉という直接的なリリックが、ヨーヨーを自在に操る4人の姿を際立たせる。

 直後にはRUSYがソロパフォーマンスを披露。昨年末に『BEATCITY JAPAN 2026』のワイルドカード(動画予選)のために生み出した「Grandma Grandpa」を再現し、天国の祖父母に愛を届けた。メロディが強いビートを広いステージで、それもたったひとりで表現するのは至難の業に見えたが、ベースもウワモノもしっかりやり切った。

 その後は田中洸希がステージに現れ、ベースとパーカッションの応酬を繰り広げた。なお、ふたりから「RUSY×田中洸希でBEATCITY、出るかもしれません」といきなり発表され、フロアからは歓声が上がった。

 ステージに帰ってきたKAJIも、「そうなるよな。俺も初めて話聞いたとき、マジで同じぐらい叫んだわ。もし通ったらこの2人をGBB(『Grand Beatbox Battle』)で見られるかもしれんからね」と反応した。

 直後に「GBB行くかもしれないから、1回4人で練習しやんか?」と提案すると、SARUKANIの3人と田中による即興のセッションが始まった。やはり一線級の才能が4人揃うと圧巻で、パーカッションとベースに加えて声ネタも豪華になり、人力の可能性を大いに感じられるビートの打ち合いが展開された。

 その後もSARUKANIの3人によって、「SARUKANI WARS」と銘打たれた彼らの代表曲の一つが披露され、さながら90年代レイヴのようなビートの洪水があふれ出てきた。TB-303を思わせるアシッド感、高速BPMに乗って推進するキック……筆者が初めて彼らを知ったころはSkrillexの影を見ていたが、いまはThe Prodigyの迫力も感じられる。

 このあとにはIchika NitoとRINZOが招かれ、『arigato.』シリーズの第2弾が初公開された。2人の実力者が奏でたのが轟音ギターと流麗かつ重厚なピアノサウンドだったことを振り返ると、SkrillexからProdigyの文脈は必ずしも的外れではないように思われる。

SARUKANIに見るダンスミュージック(=エレクトロニックミュージック)の原点

 この日を迎えるまで、今回のライブは打ち込みのサウンドをいかにして人力で再現するのかが大テーマだと思っていた。しかしいまでは、再現するだけではなかったと考えている。

 KAJIのソロパフォーマンスに顕著だが、矢印が向かう先がSARUKANIからダンスミュージックに向かうだけではなかったのだ。彼が『GBB 2025』のために公開したワイルドカード「STIMULATION」は当時広く話題を集めたが、今回のライブでは「BASS FACTORY」を加えた7分間にその熱量を詰め込んだ。

 “ダンスミュージック”という大都会には、カオスに細分化された区画がいくつもある。シンプルな4つ打ちでもハードテクノやシュランツ、ハードスタイルにハードコアなど、微妙な差異によって異なる名前で呼ばれるわけだ。

 KAJIがひとりで表現しきったのは、そういった街々の原風景である。彼が繰り出すビート一つひとつが、むしろ先人たちの音楽を照らしていた。それは90年代のオランダかもしれないし、2000年代初頭のドイツかもしれない。繰り返される“電子の音”がグルーヴを生み、それがいかに身体的・有機的な魅力を持っているのか。気が付くと筆者は2階席からステージに向かって叫んでいた。

 人体の限界に挑んで生み出されるビートは、大いなる愛でもってレジェンドの魅力さえも引き出していた。その意味で、今回のSARUKANIのライブは双方向的だったのだ。リアルサウンドが2月に公開したインタビュー(※1)では、みきまりあとの「キャパオーバー」のリファレンスに、テクノの巨匠・Chris Liebingの名前があがっていたが、その意味が分かるパフォーマンスだった。

 その後も「ULTRA POWER」など4つ打ちの魅力あふれるパーティーチューンが続き、Koheyのソロパフォーマンスへ。持ち前の手数の多さでさまざまなビートとベースを表現し、さながら多彩なリズムパターンを持つ人力ドラムマシーンといった様相を呈していた。

 直後にはJeneがステージに登場し、2人の共作による新曲「Heart Rate」が披露された。ドラムンベースを基軸に、Jeneのクリアなボーカルが響き渡る。Pendulum(およびKnife Party)周辺のサウンドが好きなファンは期待していてほしい。3月18日のリリースが待ち切れない、ポテンシャルの高いトラックに仕上がっている。

 そしてライブも佳境へ。『EPISODE 777』のキラーチューン「ZUN CHA」は“SARUVEGAS”をジャングルに変えた。トライバルハウスのような質感に、レゲエ的リズム。さらにバックスクリーンにはヤシの木。真冬であることを忘れさせるようなシチュエーションに心も躍った。

「ビートボックスをもっと広めたい」

 「Here We Go Again」でコールアンドレスポンスを挟んだあと、怒涛の『X The Mouth Session』コーナーが続く。ここで『arigato.』シリーズの第1弾コラボアーティスト・みきまりあが満を持して登場。「キャパオーバー」は若手社員の苦悩を軽快なビートで乗りこなす曲だが、その重さを引き受けられる胆力をSARUKANIとみきまりあは持っている。

 個人的にはちゃんと“重い”のがこの曲の良さだと感じていて、ライブでも〈今週耐えれば温泉旅行〉のあとに続くキックは強調されており、それこそテクノばりの重厚感があった。それを踏まえて4人が軽妙に“キャパオーバー”を乗り切るのである。やはりライブでもクールだった。

 続くセッションではJairoのJohn-Tが登場。実は彼とタッグを組むYAMORIも出演予定だったが、体調不良に見送られた。そこで「Get Through」の相方を急遽務めたのが、RUSYだった。図らずもレアなパフォーマンスとなり、トラブルにも即興で対応できるのもSARUKANIの、ひいてはビートボックスの魅力かもしれない。

 そして最後の『X The Mouth Session』ではループステーションが壇上に運ばれ、idomが登場。目を合わせながらそれぞれのタイミングを計り、スリリングな雰囲気のなか「Baby.U」が披露された。原曲からして瑞々しいR&Bだが、ビートボックスで表現するとより素朴でむき出しなニュアンスに変貌した。

 歌い終わったあと、idomが放った「いやー、緊張するわ」という言葉はそのままの意味だろう。アカペラとはまた異なる“生歌”。SARUKANIがセッションを通じて掲げる「様々なアーティストと共作することでビートボックスをもっと広めたい」という大目標は、この日のフロアに伝わったのではないか。

 このあと披露された新曲「どうすんの」は、まるで決意表明のような内容だった。「ZONED BEAT」、「CROWN」と再び4つ打ちに舞い戻り、本編は幕を閉じる。

 アンコールがあってステージに戻ってきたSARUKANIは思いの丈を語った。RUSYは涙をこらえながら、次のように話す。

「(SARUKANIが)3人になって不安になるファンもいると思うんですよ。『もうSARUKANIはビートボックスをしなくなった』とか。でも僕たちのルーツはビートボックスだし、僕たちは全員ビートボクサーだから、これからも音楽シーンで挑戦を続けたいんです。ビートボックスで皆さんの前に立つこと、それが自分の生まれてきた意味なのかなと、最近は強く感じます。これからもぜひSARUKANIをよろしくお願いします」

 引き継いだKoheyもまた、感極まりつつ「(ファンの)みんなと、メンバーと、そしていつも協力してくださっているスタッフの皆さんと、さらに大きなステージに行きたいと本気で思っています。今日は来てくれて本当にありがとう」と感謝を伝えた。

 グループ内年長者のKAJIは「俺も泣きそうになってきた」と言いつつ、「それでもしみったれたまま終われねぇよな!」と踏ん張った。そしてラストナンバーとして、再び「ZUN CHA」。この日の出演者も総出でステージ上に姿を見せ、「SARUVEGAS」の大団円を祝った。

 身ひとつ、口ひとつあれば実践可能なビートボックス。その身軽さとは裏腹に、3人の人生の重さが乗ったヘビー級のライブだった。

※1:https://realsound.jp/2026/02/post-2297325.html

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