“3ピース”というストイックな矜持 3Pガールズバンドが一堂に会する要注目イベント『#楽園収穫祭~三人官女ノ集イ』解説

 “3ピースバンド”と“3人組バンド”の違いをご存知だろうか? 同じような意味の言葉ではあるが、実際のところは明確な違いがある。意味合いが異なるというよりは、指し示す範囲が異なるといったほうが適切で、「3人組バンドのうち、特定の条件を満たすものを3ピースバンドと呼ぶ」と考えていいだろう。音楽史を彩ってきた偉大な3ピースバンドたちによって、この語には単に「3人組である」という以上の特別な意味が与えられたのである。

誤魔化しの利かない綱渡り、最小人数で最大を鳴らす3ピースの美学

 一般的に3ピースバンドというと、ギター、ベース、ドラムからなる3人編成のロックバンドを指す。しかも原則としてエレクトリックギターおよびエレクトリックベースの使用を前提とした、かなり限定的なニュアンスを含む言葉として使われることが多い。これは印象論に過ぎないが、ピアノトリオ(ピアノ、ベース、ドラムス編成)やアコースティック編成の3人バンドのことはあまり3ピースバンドとは呼ばない傾向があるように思える。

 そして多くの場合、3人のうち誰か1人(以上)がボーカルを兼任するのが通例だ。音楽の3大要素とされるリズム、メロディ、ハーモニーのすべてをまかなえる編成であると同時に、フルオーケストラに肉薄するほどの帯域幅や音圧を、たった3人の人員と3つの楽器だけでおおむねカバーしてしまう。「最小の人数で最大の効果を発揮する」という美学が、“3ピースバンド”の概念には欠かせない要素として含まれるのである。

 ”3人組バンド“との決定的な違いはそこだ。たとえば「メンバーの人数は3人だが、ライブでは必ずサポートギタリストが加わる」というような場合、それは3人組バンドではあるが3ピースバンドではなく、完全に4ピースバンドである。逆に、「メンバーは4人以上いるが、ライブで音を出しているのは常に3人だけ」のような特殊なケースも稀にあり(ダンサーがいる場合など)、これなどは紛れもなく3ピースバンドと言える。ギターを弾いて歌うソロシンガーが常に同じベーシストとドラマーを率いて3人でライブを行っているケースなども、実質的には3ピースバンドだ。

 判断に困るのが、「メンバー数は3人でライブも常に3人の生演奏だが、常に同期トラックを使用している」ケースだろう。原理主義的には適用外ということになりそうだが、“同期がなければ演奏が成立しない”ラインを超えてさえいなければ、個人的には3ピースバンドと見なしていいのではなかろうかと考えている。

 いずれにせよ、人数と音数の少なさによる音響的なハンディキャップを自ら背負い、一人ひとりの音が目立つがゆえに演奏のごまかしも利かず、しかも歌を兼務することで演奏の難度は跳ね上がり、誰か1人がミスをすれば即座に演奏が成立しなくなるという、ストイックにもほどがあるバンド形態と言える。なぜわざわざそんな難儀な道を選ぶのかというと答えは簡単で、そうすることでしか得られない喜びがあるからにほかならない。そのギリギリの綱渡りからしか生まれない、“魔法のような何か”を追い求める求道者──それが3ピースバンドなのではないだろうか。

SHISHAMO「明日も」

 このように、3ピースバンドというものは効率化の時代に逆行するかのようなロマンチックな美学のもとに成り立っている概念なのだが、なぜか令和の世の中になっても淘汰される気配がまるでなく、むしろ増殖し続けているという不可思議な現状がある。とりわけ女性メンバーのみで構成される、いわゆる“3ピースガールズバンド”の隆盛は目覚ましく、SHISHAMOやHump Back、リーガルリリーといった有名どころを筆頭に、UlulUやカネヨリマサル、TRiDENT、Conton Candyといったバンドが次々に台頭。特にインディーシーンにおいては、3ピースガールズバンドという形態が、もはやスタンダードのひとつと言えるほどの圧倒的な層の厚さを見せている。

カネヨリマサル『関係のない人』MV

 世界的にロックバンドという形態そのものが絶滅危惧種になりつつある中で、なぜ日本でこのようなシーンの変化が見られるのかは大いに気になるところだが、本稿の趣旨からは外れるためここでは触れない。いずれにせよ、ただでさえ限定的な“3ピースバンド”という概念に、さらに性別要素まで加えて条件を絞った“3ピースガールズバンド”という存在が増え続けている事実は、注目すべき興味深い潮流といって差し支えなかろう。

関連記事