ロック好きライター/インフルエンサーが選ぶ邦ロックベストソングは? アニメ主題歌や縦型動画バズが目立った一年に

 2025年の邦ロックシーンは、アニメのタイアップ楽曲やTikTokなどのSNSでバズを起こして話題を集めるバンドをいくつも目撃した。その一方で、音楽活動の原点に立ち返り、自分たちのメインフィールド=ライブでサバイブするバンド、作品のリリースと共にそれを広げるために秀逸な企画を展開するバンドの姿も散見された。つまるところ、メジャーとオルタナティブを往来するようなバンドの躍進が目立った1年と言えるのではないかと考えている。

 そんな仮説をもったうえで、本稿では各ライターやインフルエンサーたちがピックアップした「邦ロックベストソング3選」を紹介しながら、今年のシーンをより掘り下げてみたいと思う。

音楽ライター 遊津場

1. RADWIMPS「命題」
2. muque「Dancing in my bad life(feat.CLAN QUEEN)」
3. おもかげ「ボクの文学」

 原点回帰したような疾走感のあるギターロックで魅せるRADWIMPS「命題」。壮大なスケールでヘヴィに世界観を作り上げるmuque「Dancing in my bad life feat.CLAN QUEEN」。シンプルで真っ直ぐなギターロックを奏でるおもかげ「ボクの文学」。メジャーからインディーズまで幅広いラインナップとなっている。

RADWIMPS - 命題 [Official Music Video]
muque - Dancing in my bad life(feat.CLAN QUEEN)(Official Music Video)
おもかげ - ボクの文学 【Music Video】

音楽ライター むらたかもめ

1. ゲスの極み乙女「シックマン」
2. Mega Shinnosuke「ナードと天使」
3. Laura day romance「heart」

 変幻自在なビートメイクを展開するゲスの極み乙女「シックマン」。繊細でナイーブな感情を丁寧に歌ったMega Shinnosuke「ナードと天使」。澄み切った音使いで優しく寄り添うLaura day romance「heart」。特に、ゲスの極み乙女は、長いキャリアの中でさらなる新しい扉を切り開いており、バンド音楽の可能性を拡張している。

シックマン
Mega Shinnosuke - ナードと天使 (Official Music Video)
Laura day romance / heart (official music video)

音楽ライター ふじもと

1. Trooper Salute「天使ちゃんだよ」
2. Base Ball Bear「夏の細部」
3. Aooo「Yankeee」

 どこか懐かしさを感じる緻密なサウンドのTrooper Salute「天使ちゃんだよ」。自分らしいアプローチで青春を描くBase Ball Bear「夏の細部」。アッパーで豪快なサウンドメイクで絢爛に響くAooo「Yankeee」。インディーポップの新生・Trooper Saluteは、バンド好き界隈で注目が高まっており、今後飛躍していく可能性を秘めている。

Trooper Salute "天使ちゃんだよ" Music Video
Base Ball Bear – 夏の細部 (official audio)
Aooo「Yankeee」Official Music Video

不動のセトリ職人 ソノダマン

1. 少年キッズボウイ「エバーグリーン」
2. a flood of circle「KILLER KILLER」
3. Klang Ruler「ふめつ」

 数多のライブやフェスに足繁く通うソノダマンらしい選曲。ライブ力が音源にもいかされている、パワフルかつエネルギッシュなバンドが選ばれている。その中でも、a flood of circleは己のロックンロールを研ぎ澄まし、シーンの中でも独自的なインパクトを解き放っている。

少年キッズボウイ「エバーグリーン」MUSIC VIDEO
【Music Video】KILLER KILLER - a flood of circle
Klang Ruler - ふめつ (Official Music Video)

邦ロックカフェ「ロクロラ」オーナー だんちゃん

1. ハンブレッダーズ「ピース」
2. Blue Mash「ロックバンド症候群」
3. かずき山盛り「めっちゃパイレーツ」

 今年、主催フェス『GALAXY PARK』を大阪城ホールで開催したハンブレッダーズ、各地のライブハウスで爆発的な人気を放つ若きライブバンド・Blue Mash、独自のユーモアを研ぎ澄ませたメロコアバンドの進化系・かずき山盛りと、いずれもライブシーンで着実に力をつけてきているバンドからの選出となった。

ハンブレッダーズ「ピース」Music Video
ロックバンド症候群 - Blue Mash
かずき山盛り【めっちゃパイレーツ】Music Video

インフルエンサー 餓鬼Иちょ

1. UVERworld「PHOENIX AX」
2. ELLEGARDEN「カーマイン」
3. GIRL TALKING ABOUT LOVE「アンダンテ」

 Dragon AshのKjが楽曲を提供したことでも話題になったGIRL TALKING ABOUT LOVEのピックアップも踏まえ、王道のロックバンドが目につくラインナップとなった。ELLEGARDENは今年、TVアニメ『ONE PIECE』のオープニング主題歌を担当したことで、これまでとは異なるリスナー層にも名前を広げた。

UVERworld『PHOENIX AX』(THE LIVE 2025 at Shibuya eggman)
ELLEGARDEN - カーマイン [MUSIC VIDEO]
劇中曲「アンダンテ/GIRL TALKING ABOUT LOVE」作詞作曲:Kj【Music Video】

インフルエンサー/プロデューサー 日めくりプレイリスト

1. CLAN QUEEN「Checkmate」
2. Kroi「Method」
3. WurtS「どうかしてる」

 邦ロックというベースを持ちながらも、そこにプラスαのセンスや魅力を取り込むようなテクニシャン系のアーティストが目につくラインナップとなった。WurtSの「どうかしてる」はアニメ『ダンダダン』第2期エンディングテーマとしても注目を集めた。

CLAN QUEEN "チェックメイト" MUSIC VIDEO
#Kroi - Method [Official Video] #SAKAMOTODAYS
WurtS「どうかしてる」 × TVアニメ『ダンダダン』 Special Music Video

ヂラフマガジン編集長・三橋温子

1. Mellow Youth「春になれば」
2. YAPOOL「Mayday」
3. 奏人心「それがすべて」

 邦ロックシーンにおける主流というよりは、独自のシーンで話題を集めるカリスマが選出された。奏人心は福岡を拠点にするバンド。生命力溢れる表現力の高いボーカルが大きな魅力だ。

春になれば
YAPOOL - 「Mayday」 Music Video
【それがすべて】ライブ映像

 そんな中で、私が選んだ邦ロックベスト3選は、こちらだ。

ロッキン・ライフ

1. サカナクション「怪獣」
2. NIKO NIKO TAN TAN「ミラクル」
3. 雪国「シオン」

サカナクション / 怪獣 -Music Video-
NIKO NIKO TAN TAN - ミラクル (Official Visualizer)
雪国 pre. “shion” Archive Movie

 本稿の選曲を眺めながら今年の邦ロックシーンを振り返ってみると、サカナクションやELLEGARDENのように、第一線を走る人気バンドが初めてアニメ主題歌を手がけたことが印象深い。近年におけるアニメ作品の人気の高まりと呼応するように、これまでアニメとは関わりが薄かったバンドも、今後はコラボレーションを果たしていく可能性を示唆した2025年だったのではないだろうか。

 そのほか、新アルバム『あにゅー』とトリビュートアルバム『Dear Jubilee -RADWIMPS TRIBUTE-』で注目を集めたRADWIMPS、常にチャートの上位をキープするMrs. GREEN APPLEと、近年のシーンの立役者が今年も話題を勝ち取った。RADWIMPSはトリビュートアルバムをリリースする際に、SNSを使って参加者を一人ずつ公開していく手法が話題になったし、Mrs. GREEN APPLEもベストアルバム『10』リリース時にCDの魅力を伝える「CD聴こうよ。」キャンペーンという今までにはない展開を見せた。そのまま作品をリリースするだけではなく、より多くの人々に届けるための企画にもこだわり抜く。作品のクオリティはもちろんだが、自らの手で仕掛けていく姿勢も両バンドをトップバンドたらしめる要因の一つなのは間違いないだろう。

 一方で、インディーズシーンではTikTokで話題になるバンドが急増。本稿で取り上げている奏人心もその一組だが、他にもセカンドバッカーやCloudyなど、SNSを中心に話題を集め、その名を世の中に轟かせるバンドも少なくない1年だった。ただし、これらのバンドはひとつの楽曲がきっかけで、SNSで急に話題になったというわけではない。そもそもライブシーンでしっかりと下積みをしており、その界隈ではすでに人気が高まっていた。そういう意味で、SNSや縦型動画は現場と切り離されたものではなく、より地続きなものとして機能している印象がある。

 邦ロックという幅広いシーンをひとつの視点で語るのは難しいが、それでも「ライブバンドとSNS」や「タイアップとDIY精神」など、これまで距離があった要素が近付いていくような感覚を覚える瞬間はいくつもあった。今後はこれらの要素がより融和して溶け合うようにシーンが動く予感は大きくある。そんな予感をもって、この記事のまとめとさせていただく。

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