2025年のバイラルチャートは時代の感情の共感を示す場に ファンダムの意思表示が可視化された1年を総括
そして、喪失と、それに伴う追悼の動きも2025年のバイラルチャートの特徴だった。偉大な音楽家やアーティストらの訃報は、リスナーの感情を揺さぶり、その悲しみや敬意は再生数という形でチャートに刻まれることも多かった。2025年の日本のHIPHOPシーンでは、晋平太の突然の死が大きな衝撃を与えた。彼の代表曲「ボコボコのMIC」がチャートを急上昇した現象は、懐古や話題化という意味合いだけではなく、マイク一本で道を切り拓いてきた彼の生き様と、その言葉の強度を再確認する行為として、多くのリスナーが再生ボタンを押した結果だったと思う。さらに、ビートメイカー/プロデューサー、そしてラッパーとして日本の音楽シーンを支えてきたJJJの訃報を受け、彼が関わった複数の楽曲が同時にチャートインを果たしたのも記憶に新しい。洗練されたビートと内省的なフロウは、都市生活者の日常に寄り添う音楽として機能しており、その不在によって、彼が果たしてきた役割の大きさが改めて可視化された。加えて、ネオソウルの巨星・ディアンジェロの訃報を受け、「Brown Sugar」や「Voodoo」といった楽曲が日本のバイラルチャートでも複数ランクインした現象も象徴的だった。これらの動きは、バイラルチャートが流行の指標であると同時に、リスナーが想いを共有し、功績を称えるレクイエムの場としても機能していることを示している。
バイラルチャートの背後には、常に人の感情がある。“推し”を支えたいと願うファンの指先、自分を奮い立たせるために音楽に共感を寄せながら生きる日常、そして去りゆく存在を惜しむ涙。2025年のバイラルチャートは、そうした無数の感情が交錯する、きわめて人間的なドキュメンタリーだったと言えると思う。2025年という年が刻んだチャートの変遷は、音楽シーンの記憶として残り続けるだろう。