HANAの「Tiger」が持つ“真似したくなる”キャッチーさ じわじわと人気を高めた理由を分析

 HANAの「Tiger」が、12月3日発表のBillboard Japanの集計において、ストリーミング累計再生回数1億回を突破した(※1)。2025年4月に「ROSE」で鮮烈なデビューを飾り、約8カ月を経た今も飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進を続けるHANA。ストリーミング再生が1億回を突破した楽曲は「ROSE」「Blue Jeans」「Drop」「Burning Flower」に続いて5曲目となり、国内女性ダンス&ボーカルグループとして史上最多となった。

カラオケで歌いたくなる魅力も?

 「Tiger」は1stシングル『ROSE』に収録されており、彼女たちを生んだオーディション番組『No No Girls』(Hulu)で5次審査の課題曲でもあった楽曲。デビュー直前イベントでも披露されたことから、HANA黎明期の重要な楽曲なのは間違いない。それを踏まえ、今回の記録が先の4曲からやや遅れての到達となったのにも実は理由があるように思う。コンスタントに新曲をリリースして新たなファン層の開拓に成功したために、過去曲の掘り起こしが行われ、じわじわと人気が高まっていったのではないか。一方で「Tiger」は先に1億回再生を達成した4曲とは違い、シングルカットされていない楽曲。“隠れた名曲”的立ち位置も、繰り返し聴かれる要因になったのではと推測する。

 また、「Tiger」はDAMとJOYSOUND双方のカラオケランキングの2025年発売のガールズグループ楽曲部門でもそれぞれランクイン(※2、3)。SNS上では「カラオケでHANAが歌えたらすごい」「一生歌える気がしない」という声も多く挙がっているのを見ると、難易度の高さを押しても挑戦したくなる楽曲であることがわかる。同様に、SNS上には振り付けのカバー動画が世代を問わず投稿されていることから、ダンスにもつい踊りたくなるような魅力があるようだ。これほどまでに「Tiger」が人々を惹きつける理由はどこにあるのか。その魅力を改めて紐解いていきたい。

7人の特徴的な歌い方と“虎”をモチーフにした動き

 まずは歌唱だが、本作は冒頭からワンフレーズずつソロで歌い繋ぐスタイルで進行する。しとやかな歌声で曲の世界観へ誘うNAOKO、それをいたずらっ子のように表情豊かなKOHARUが引き継ぎ、独特の低音ボイスで聴き手を煽るMOMOKAへ。サビではCHIKAが圧倒的な声量と表現力を見せつけ、続く2番のAメロは昂った心をクールダウンするようにYURIが引き締め、JISOOがキュートさの中に毒を忍ばせる余裕ぶりを発揮。ラストはMAHINAが奔放で快活なラップをキメる。7人それぞれが特徴のある歌唱をしているため、真似をしたい心理がくすぐられるのもよくわかる。HANAのほかの楽曲と比べ、キーが高すぎないのも挑戦しやすいポイントだろう。何より、しなやかに獲物を狙う獣の姿になぞらえ、何事にも恐れずに前進していくというメッセージは、歌詞として口ずさむと不思議と自分自身が鼓舞されるような感覚も味わうことができる。そんなファイトソングとしての側面も歌いたくなる理由かもしれない。

 ダンスで目を引くのは、タイトルどおり虎をイメージした動きが随所に取り入れられている点だ。指先を曲げて爪で引っかくような動作をしたり、獣が獲物に近づくようなゆったりとしたステップを多用したり、鋭い視線を投げたり、それらすべてが“虎”というモチーフに重なる。また、間奏から大サビで披露されるイスを使ったパフォーマンスも本作の特徴で、楽曲の持つ攻撃的な美しさを最大限にまで高めている。サビのワンフレーズだけ、イスのパートだけでも真似できたら、よりこの世界観にどっぷりハマれるのでは――そんなことを考える人も少なくないだろう。カラオケで歌唱する際に取り入れたら、大いに盛り上がるはずだ。

HANA / Tiger -Performance Video-

 歌唱においてもダンスにおいても、メッセージが伝わりやすく、キャッチーさを宿しているのが「Tiger」という楽曲なのだと思う。それでいてHANAというグループの土台となっている自立や解放、自分らしさの追求というテーマにも合致している点が、聴き継がれている理由のひとつと考えられる。泥だらけでも可憐に花開く強さを歌った「ROSE」が彼女たちの表層ならば、好戦的でしたたかな野生を歌う「Tiger」は深層心理と捉えることもできよう。ファンが真似したくなるのは、そんな裏の顔に無意識に惹かれる心理ゆえではないだろうか。

 12月5日に待望の新曲「NON STOP」をリリースし、さらにギアを上げたHANA。年末には『Spotify On Stage Tokyo 2025 -Year-End Special-』や『COUNTDOWN JAPAN 25/26』への出演、『第76回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)出場も決定し、ますますシーンを席巻していくことは間違いない。折しも忘新年会シーズンでカラオケに行く場面も増えそうだ。その効果はさまざまなところへ波及するのだろう。

※1:https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/155980/2
※2:https://www.clubdam.com/ranking/2025/
※3:https://www.joysound.com/web/s/karaoke/contents/annual_ranking/2025

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