宮本浩次が求められ続ける理由とは キャリアに甘んじない挑戦意欲で多方面に振り撒く話題

 宮本浩次が来年1月からの全国ツアー開催と、6月10日に約4年半ぶりのニューアルバム『I AM HERO』をリリースすることを発表した。エレファントカシマシ(以下、エレカシ)のボーカリストとしてのデビューから数えてもすでに大ベテランの域にいるミュージシャンだが、決して腰を落ち着けることなく常に話題を振り撒く存在であり続けている。

 ソロ活動を本格化してから6年が経ち、2025年はエレカシでもソロでもない新プロジェクト「俺と、友だち」を始動するなど特に精力的な1年だった。本稿では直近の活躍の数々を振り返りつつ、宮本浩次が絶えず求められる理由について考えていきたい。

映画『爆弾』主題歌からエレカシのメモリアルなライブまで

 10月31日に公開され、現在もロングヒットを続ける映画『爆弾』。その主題歌として「I AM HERO」を提供し、映画に強烈なインパクトをもたらしている。グルーヴィな演奏に乗せ、激しいボーカルを響かせるこの楽曲。歌詞の中で何度も繰り返す〈I AM HERO〉という言葉も強い説得力を帯び、タフな生き様が伝わってくる。エレカシのハードコアサイドの代表格たる「ガストロンジャー」のような楽曲をオーダーされ作ったとのことで(※1)、宮本のロックボーカリストとしての地力が今なお新鮮に求められ続けている証明と言える。

宮本浩次 「I AM HERO」×『爆弾』 スペシャルMV

 また、9月にはエレカシの代表曲「今宵の月のように」をソロとして歌い直し、新たにリリースもした。大幅なアレンジの変更はなく、色褪せない温かなメロディを円熟味の増した丹念な歌声で向き合っている。これまで歩んできた人生の重みが滲むセルフカバーだ。このバージョンは今秋、柳楽優弥と宮﨑あおいが出演したマクドナルド「月見バーガー」のCMソングとして再録されたもの。生活者にそっと寄り添うようなCMの内容からも、「今宵の月のように」が長きにわたって人々の心を鼓舞してきたことを示しているようなタイアップである。

宮本浩次 ー 今宵の月のように from 五周年記念 birthday concert GO!

 そして活動の礎であるエレカシとしても2025年は重要なライブを行った。建替え再整備工事のため10月より使用休止となった日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)の最後のライブアクトとして選ばれ、9月28日に公演『〜日比谷野音 The Final〜 俺たちの野音』を開催したのだ。エレカシは1990年に初めて野音でライブを行ってから35年間で実に41公演を開催してきた。これは同会場での最多公演記録だ。リスナーのみならず、業界や会場そのものから強固な支持を受けてきたことがよくわかる。

エレファントカシマシ「日比谷野外大音楽堂2022」ダイジェスト

 ここ数年はエレカシとしての活動は控えめだが、宮本のミュージシャンとしての地盤は間違いなくエレカシにある。ロックバンドのソングライターとして、シンガーとして培ってきた実力を存分に発揮しながら、新たなフィールドに踏み出しているのがソロ活動なのだ。

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