“今の日向坂46”だからこそ生み出せたステージに 『MONSTER GROOVE』の実験性、浮かび上がったグループの軸
日向坂46の全国ツアー『日向坂46 ARENA TOUR 2025「MONSTER GROOVE」』の最終公演が、11月21日に開催された。
二期生から今春加入の五期生までという新編成で臨む初めての全国ツアー千秋楽のステージは、グループとして新たな一歩を踏み出した場所でもある国立代々木競技場 第一体育館。『日向坂46 BRAND NEW LIVE 2025「OVER THE RAINBOW」』(※1)から半年を経て、彼女たちがどのように成長・進化したのか。今回のライブはその真価を問われる瞬間とも言える。
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オープニング、楽器演奏パート……新たな試みで可能性を提示
9月20日の宮城公演を皮切りに、全国6都市のアリーナ会場で全13公演を開催。このうち東京は先の国立代々木競技場 第一体育館にて3公演が実施されたほか、うち1日(11月19日)は二期生 河田陽菜の卒業セレモニーも用意された。つまり、千秋楽公演は河田が卒業し、さらに新しい形で迎えるステージだったわけだ。
『MONSTER GROOVE』と銘打ったツアータイトル同様、ライブ冒頭は重低音の効いたゴリゴリのサウンドが会場中に鳴り響く。前身グループのけやき坂46時代からモットーとしてきた“ハッピーオーラ”とは一線を画するシリアスな展開に動揺していると、ステージに二期生の金村美玖&小坂菜緒が登場。クールな表情を浮かべるふたりを中心に、ライブはヘヴィさを強調したリミックス版「NO WAR in the future 2020」にて幕を開けた。二期生から五期生までが順を追ってステージに姿を現し、激しいサウンドに合わせてダイナミックなダンスを見せていく。新体制での1stライブ『OVER THE RAINBOW』でも新たな可能性を随所で提示してきた彼女たちだけに、このオープニングには少々驚かされた。
しかし、続く四期生楽曲「夕陽Dance」以降は従来の日向坂46らしさを前面にアピールした選曲・演出へ。センターの渡辺莉奈をはじめ、もはやグループの中心メンバーといえる四期生の面々は、一人ひとりが眩いほどの輝きを放ちながら、おひさま(日向坂46のファンの総称)に笑顔を振りまいていく。また、「キツネ」ではアリーナ中央のセンターステージ、その四方に設置されたサブステージなどにもメンバーが散り、広い会場ながらもメンバーを間近に感じられることができた。そして、「君はハニーデュー」ではセンターの正源司陽子を中心に、センターステージから四方八方に向けてハッピーを届けてくれた。
その後、MCを挟んで会場が再び暗転すると、ステージにひとり登場した小坂が「Love yourself!」をソロ歌唱。『MONSTER GROOVE』というツアータイトル的には先の「NO WAR in the future 2020」から始めるのが正解なのかもしれないが、今の“新生日向坂46”を強くアピールするのなら、本来はこの曲、この演出で始めたほうがよかったのでは……と思ってしまったのは、筆者だけだろうか。それくらい、小坂の自信に満ちた歌声と、その後に登場したメンバーたちの生命力に満ち溢れた表情とパフォーマンスには、心奪われるものがあった。
続いて披露されたのは、五期生による最新曲「空飛ぶ車」。残念ながら高井俐香が体調不良のため東京公演は欠席となってしまったが、センターの松尾桜を筆頭にこの日ステージに立った9人は半年前の『五期生「おもてなし会」』(※2)や『OVER THE RAINBOW』の時以上に強い存在感を纏っており、この短期間での急成長ぶりを窺わせた。
今回のツアーでは新たな試みとして、メンバーの楽器演奏などをフィーチャーしたパートが用意されており、それぞれが刻むグルーヴを起点に、二期生から五期生までのメンバーがシャッフルされたスペシャル編成で楽曲を披露。大野愛実は、MPCを駆使し、彼女の内から湧き出るビートを表現する。
また、正源司は激しいロックサウンドをバックにエレキギターをかき鳴らし、平尾帆夏はエレキピアノで流麗なメロディを奏でる。また、松尾は大野がMPCで繰り出すビートに乗せて、オリジナルのラップも披露。これまでさまざまな場面で特技として披露してきた楽器演奏や、今回新たな武器として初披露された演目含め、メンバーが能動的にライブを牽引していく様は非常に興味深く、こうした実験が今後のライブ演出における大きなヒントになるのでは、と観ていてワクワクしてしまった。
こうした楽器演奏に続いて披露されたシャッフルユニットパートでは、上村ひなのを中心にコミカルさを見せる「足の小指を箪笥の角にぶつけた」、小坂や小西夏菜実、平尾、松尾がアリーナ四方のサブステージで歌唱する「この夏をジャムにしよう」、藤嶌果歩や宮地すみれなどがトロッコに乗って2階スタンド席通路を移動する「どうする?どうする?どうする?」など、新鮮な組み合わせと意外な選曲で我々を楽しませてくれた。そんな中、大野がセンターに立った「恋した魚は空を飛ぶ」では、彼女の鬼気迫る表情とパワフルなダンスに目を奪われる場面も。先のMPC演奏ではほんわかした空気を漂わせていただけに、この豹変ぶりに鳥肌を立てたのはきっと筆者だけではなかったはずだ。