『ハズビン・ホテルへようこそ』主題歌がバイラルヒット 曲と作品の一体感がSNSシェアのきっかけに

Viral Chart Focus

 Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top Songs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの11月5日付のTOP10は以下の通り(※1)。

1位:ジム・ジョーンズ「The Jonestown Death Tape」
2位:KIM CHAEWON「告白 (Confession) [Japanese Version]」
3位:Halloween Junky Orchestra「HALLOWEEN PARTY」
4位:Hazbin Hotel, Jessica Vosk, Alex Brightman, Sam Haft, Andrew Underberg「Gravity (From Hazbin Hotel)」
5位:INI「君がいたから」
6位:ザビャン「トゥントゥントゥンサフールに恋している」
7位:Torbahed「YOSHO HAI MONTAGEM」
8位:STARGLOW「Moonchaser」
9位:Mega Shinnosuke「ごはん食べヨ」
10位:The Citizens of Halloween「This Is Halloween」

『ハズビン・ホテルへようこそ』シーズン2 OFFICIAL本予告|プライムビデオ

 ミュージカルアニメ『ハズビン・ホテルへようこそ』(Prime Video)のシーズン2主題歌「Gravity」が、世界各国のチャートを席巻している。日本では11月4日付のデイリーバイラルチャートで初登場4位にランクイン。同日付のグローバルチャートや各国のチャートを見てみると、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ドイツ、フランス、スペイン、イタリアなど10カ国以上のチャートで10位圏内にランクイン。さらに50位圏内まで広げると、エジプト、香港、ギリシャ、マレーシア、ペルー、スイス、フィリピンなどのバイラルチャートでも名前を連ねている。

 『ハズビン・ホテルへようこそ』は、アメリカの大人向けインディーミュージカルシチュエーションコメディアニメだ。パイロット版のYouTubeでの公開から、2024年にはテレビシリーズのシーズン1がスタート。日本では、同じく2024年にAmazon Prime Video独占配信として日本語吹き替え版のシーズン1が配信され、作中の劇伴が複数曲バイラルチャートの10位以内に同時ランクインするなど、音楽面でも大きな話題をさらった。

 本アニメは、地獄を舞台にしながらも、現代社会が抱える人口過密問題をテーマにした大胆な切り口、インパクトの強いキャラクターデザイン、サイケデリックで趣のある独特な色使いなどで、シーズン1配信時に全世界に熱狂的なファンを獲得。その結果、シーズン2にも期待が集まり、主題歌「Gravity」の世界的バイラルヒットにつながったのだろう。SNSを中心に拡散され、バイラルチャートにランクインしてきたパターンはシーズン2である今回も同様だが、その拡散の背景を考察していきたい。

『ハズビン・ホテルへようこそ』シーズン2―「Gravity」|プライムビデオ

 最大の理由として考えられるのは、ミュージカル的な即効性だ。YouTubeでも公開されている映像にも顕著だが、楽曲と映像のシンクロ率が非常に高いことがわかる。

 アニメ主題歌という分野において、この数年は曲と映像の一体感が大きなポイントになっている。この“シンクロ率”に新しい解釈が加わった今、「Gravity」のシンクロ率は他のアニメ作品とは次元が違う。最大の特徴は、キャラクターのリップシンクだ。その精度も非常に高く、アニメと楽曲がしっかりリンクしている。映像は比較的短い尺の中で、リズムに合わせて繰り出されるキャラを使った演出や、テンポよく切り替わる映像など、“使いたい瞬間”が最初から最後まで満載。こうした要素がSNSでの拡散を促し、バイラルチャートへのチャートインを果たしたのだろう。

 そもそも、「Gravity」という楽曲そのものも、短尺ながら濃密なドラマを生み出している。バックサウンドのダイナミクスも明確で、後半に向かいレイヤーが増え続け、スケールアップしていく。ブラスとストリングスを軸にした華やかなオーケストレーション、繰り返される転調、スウィングを挟む展開は、ブロードウェイミュージカルそのものだ。「Gravity」を歌うのは、リュート役のジェシカ・フォーク、アダム役のアレックス・ブライトマン。ジェシカ・フォークは、歌い出しから声を張らない歌唱法で芯のある歌声を披露。声圧よりも感情の起伏を前面に出したアプローチで、後半では鬼気迫る緊迫感を見事に歌声で演じている。地声からヘッドボイスまで滑らかに移行するブリッジも見事だ。アレックス・ブライトマンはハスキーで伸びやかな高音を響かせたかと思えば、低音域でセクシーな吐息交じりの母音を鳴らしている。

 『ハズビン・ホテルへようこそ』の「Gravity」は、アニメソングが世界を動かすことが増えつつある現在の音楽シーンに、かつアメリカで生まれたアニメソングとしても、また新たなモデルケースを加える1曲になるだろう。

※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2025-11-05

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