wapiti、バンド史に刻まれる重要なマイルストーン ソールドアウトの初ワンマン――未来を確信させた夜

 スポットライトを浴びた織田龍紀(Vo)の歌声、wapitiが織り成す豊かなアンサンブルに導かれるように、観客が自然と手拍子を始める。10月4日、東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASUREで開催されたwapitiの初ワンマンライブ『wapiti live 2025 -The First-』。ソールドアウトとなった会場は、オープニングからすでに温かな一体感に包まれていた。

 2023年7月に結成され、今年8月のメジャーデビューを皮切りに活動がますます盛んになることが期待されるwapiti。今回の初ワンマンは、バンド史に刻まれる重要なマイルストーンになったのではないだろうか。

 ソウルフルな歌唱とフロントマンらしく華やかな佇まいで、観客の耳と目を惹きつける織田。力強くブライトなプレイが持ち味で、演奏中にスティック投げも披露するエンターテイナー、工藤健介(Dr)。繊細かつ滑らかなフレージングでアンサンブルに色彩と奥行きをもたらす、吉村瑠莉(Pf)、ハーマン・チャン(Vn)の上モノコンビ。結成から2年。若くて多感なバンドである彼らは、ファンに囲まれ笑顔を輝かせながらも、一本のライブ中にぐいぐいと進化した。ポップ、ロック、AOR、エスニック、ブルーグラス、ビッグバンド……どのジャンルにも振れるポテンシャルが感じられた。真っ白なキャンバスには、これからどんな絵を描くこともできる。「きっとこんな会場も似合うだろう」「いつかこんな曲を聴いてみたい」と、つい未来を想像したくなるライブだった。

織田龍紀(Vo)
工藤健介(Dr)

 wapitiが1曲目に届けたのは「エンドレスゲーム」。〈僕らのこの時間を幸せに変えてゆく〉という歌い出しは、一生に一度のこの舞台――そしてここから長く続いていく音楽人生に対する彼らの決意表明だった。カラフルなサウンドとともに会場が高揚感に包まれるなか、観客が手拍子をしてアンサンブルに加わる。wapitiというバンド名の由来であるアカシカは、大人しく親しみやすい動物。リスナーにとっての憧れの対象になることよりも、親しみやすさを大事にする彼ららしいオープニングだった。「ambitious」「鬼さんこちら」とアッパーチューンが続くなか、客席から飛ぶ声の熱量も高く、織田は「すごく熱い声が聞こえてくるね。もっと出してくれてもいいからね!」と笑顔。「僕らにとっての初めてのワンマンライブ。こんなにもたくさんの人が集まってくれるのがすごく不思議、かつ感謝の気持ちでいっぱいです」と率直な想いを語りながら、ライブを進めていった。

吉村瑠莉(Pf)
ハーマン・チャン(Vn)

 代々木公園辺りでビニールシートを広げながら、4人だけでセッションをしていたのが自分たちの原点だと語ったwapiti。ライブ中盤では「原点を思い出しながら」とアコースティックセッションが設けられた。素朴で温かいサウンドで鳴らされたのは「守唄」と「門出」の2曲。演奏後、織田が「初心に返れる時間っていいですよね」と噛みしめていたのが印象的だった。今後バンドが歩みを重ねるうえで、初ワンマンの思い出や4人で鳴らす音楽そのものは、wapitiがいつでも立ち返れる場所になるはず――。そんなことを彼らは感じていたのではないだろうか。

 中華圏での音楽チャートインも話題のムード溢れるナンバー「ノクターン」、〈まだ見たことない景色をみんなで一緒に見るために〉と歌うドラマティックなバラード「僕は愛を知らない」からライブのクライマックスへ。10曲目には、10月24日に配信される新曲「もののけ」をリリースに先駆けて初披露。「どこよりも早くみなさんにお届けしようと思って」と前置きし、「“自分自身を解放できない”という現代病に抗うための曲です」と織田が語った同曲は、スリルも疾走感も抜群。まさに自分を解放させながら、拳を突き上げる観客の姿も印象的だった。きっと織田は、今目の前に広がっているような、活気溢れる光景を生み出したくて、「もののけ」という曲を書いたのだと思った。

 新曲「もののけ」をきっかけにwapitiの魅力がさらに開花していった。初ワンマンということで、メンバーにとって慣れないことも多かっただろうが、4人は笑顔で演奏を重ねながら徐々に環境をモノにしていき、最終的に完全掌握。メンバー4人のソロ回し(織田はキーボードを演奏)に観客が沸いた「OREO」、そして「凪」「ロックスター」というラスト3曲は、エネルギッシュなバンドサウンドと華やかなオーラがステージから溢れ出す様が痛快だった。これぞwapitiの真骨頂という感触があり、まだまだライブを観ていたい気分にさせられた。

 アンコールに応えたwapitiは、「みんなの顔がこっちからよく見えるんですよ。いち人間として必要としてもらっているのはすごく幸せなことだと思いながら、今日は演奏していました。いつもありがとうございます」と充実感と観客への感謝を語った。来年春には東京、大阪、愛知、台湾をまわる初のワンマンツアーが開催される。彼らは初ワンマンの喜びを胸に、次なるステージへと進んでいくのだ。

飛び抜けた歌唱力とメロディの強さ――ネクストブレイクバンド・wapiti、「ロックスター」で光る無二のセンス

wapitiのメジャーデビュー曲「ロックスター」をレビューする。

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