Perfume、戦い続けた25年の物語 「私たち3人は繋がっています」――約束の東京ドームから旅立つ新たな未来
2025年9月22日、23日――多くの人がさまざまな想いを抱えてこの日を迎えただろう。東京ドームにて行われた『Perfume ZO/Z5 Anniversary “ネビュラロマンス”Episode TOKYO DOME』は、Perfumeの結成25周年、メジャーデビュー20周年を締めくくる公演であり、2020年に新型コロナウイルス感染拡大防止のため急遽当日に開催中止となってしまった『Perfume 8th Tour 2020 “P Cubed” in Dome』東京ドーム公演のリベンジにもあたる。そして、前日のデビュー20周年記念日に「大切なお知らせ」として年内でのコールドスリープ(活動休止)を発表した彼女たちにとって、今回が休止前ラストのライブだ。ただし、ステージ上の3人から語られたのは、ポジティブな言葉ばかりだった。
『Perfume ZO/Z5 Anniversary “ネビュラロマンス”Episode TOKYO DOME』の初日。「もう一度、あの日から始めよう」――その言葉が告げられた後、ライトセーバーを使ったパフォーマンスが印象的な「GAME」でライブがスタートする。5年前の東京ドームでもオープニングを飾った楽曲だ。メインステージ横に並ぶ12から25の数字のオブジェは、結成10周年の年に行われた初の東京ドーム公演のタイトル『1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11』から繋がるもの。届けられる曲、演出の一つひとつが、彼女たちの歩みを表している。
ライブは、最新アルバム『ネビュラロマンス 後篇』を軸に進行していった。そもそも『ネビュラロマンス』は、昨年リリースの『ネビュラロマンス 前篇』とあわせて、壮大なストーリーを描くコンセプトアルバム。その世界観をライブで再現したのが、今年春までに行われた全国アリーナツアー『Perfume 10th Tour ZOZ5 “ネビュラロマンス” Episode 1』と、本公演である。
アリーナツアーでは、20年戦争で月がロボットアーミーに占拠され、そこから脱出したアヤカ、ユカ、アヤノの3人が地球で成長していく過程が描かれていた。記憶を失っている3人はキキモという女性に育てられており、彼女の語りによって『ネビュラロマンス』のストーリーが明らかになっていく。3人は地球防衛軍に所属する傍ら、ダンスボーカルグループ“Perfume”として活動中。映像のなかのテレビ番組でPerfumeが紹介されると、ステージに3人が現れて「ネビュラロマンス」を可憐に歌い上げた。今、ステージでパフォーマンスをしているのは、『ネビュラロマンス』の物語に登場する“Perfume”なのだろう。
彼女たちは初のドローン討伐に挑むが、そこで重大な事実を知ってしまう。ロボットアーミーに遭遇した3人は、自分たちがロボットアーミーと同じ、かつて地球を追われた“旧人類”である可能性を告げられたという。アリーナの外周には、多数のロボットアーミーの姿が。旧人類は真の人間であり、現在地球に存在する“新人類”はキキモが追う“カキモト”という人物によって生み出された機械人間なのだ。キキモの目的は、カキモトを破壊することで長く続く戦争を終わらせること。3人は花道に散らばり、ハンドマイクで「Teenage Dreams」を切なく歌い上げる。〈帰ろう 帰ろう あの頃に〉というフレーズが、物語がクライマックスに差し掛かっていることを連想させる。
そして、明かされる衝撃の真実。カキモトは、アヤカ、ユカ、アヤノの父親だったのだ。3人はカキモトを破壊するパスワードに心当たりがあるという。彼女たちの手によってカキモトは消え去り、同時に“新人類”も消滅すると思われたが、彼らは真の人間となり、代わりに消えたのはアヤカ、ユカ、アヤノだった。キキモは、彼女たちがまだどこかに存在している可能性に懸けて捜索を開始する。ステージには儚く月が浮かび、「Moon」が届けられる。
そこから「exit」へ。キキモは彼女たちの痕跡を見つけたという。どうやら転生し、また3人で“Perfume”として活動しているらしい。その様子を表すように、メインステージで輪になった3人が互いの手を取り合ったところでエンドロールが流れる。「これからだって、きっと大丈夫」――。キキモの最後の言葉は、『ネビュラロマンス』という物語上の彼女たちにも、現実世界で生きる彼女たちにも重なった。
「Are you ready to dance?」という文字がスクリーンに表示され、ここからは現実世界の“Perfume”としてのステージが始まる。「ポリリズム」「Butterfly」「edge」「チョコレイト・ディスコ」といった人気曲を集めた「Perfume ZO/Z5 Reeeeemix」に続き、ライブではお馴染みの「P.T.A.」のコーナー。客席からは終始大きな歓声があがり、ステージ上の3人も笑顔を見せながら、ファンとコミュニケーションを取っていった。
「ライブは生きがい。このために生きてきたんだなって思います」と、今日を振り返ってしみじみと語ったあ~ちゃん。かしゆかも、昨日の発表があって不安を感じていたというが、「今日ライブをやって、大丈夫だなって思いました」と安堵の表情を浮かべ、「私たち3人は繋がっています」と力強い言葉を投げかける。のっちも、「真面目な3人ですけど、選択をしていける自由さだったり、軽やかさがあったことに、自分のことながら感動した」と今回の決断について想いを明かし、そのうえで「“人生ともに”と思っていますので」と、また必ずPerfumeとしてファンの前に戻ってくることを誓った。
「ずっとずっと一緒にいられるために、3人が新しい挑戦をするという宣言でした」「カムバックするその日まで、みんな元気でいてね!」とあ~ちゃんが呼びかけ、25年を振り返る映像が流れたところで、「巡ループ」へと続いていく。映像にも、ステージにも、ずっと固い絆を結んで一緒に歩んできた3人の姿がある。この先も彼女たちは、巡る季節をともに過ごしていくのだろう。その想いが込められているように感じたステージだった。
歌い終えた3人は、ウエディングドレスのような純白のドレスを身にまとい、まるでヴァージンロードを歩くようにして、センターステージから伸びる3つの花道を別々に進んでいく。会場に響きわたるのは、25から数字が下っていくカウントダウン。15年前の東京ドームでも行われた「GISHIKI」だ。ただし、前回が花道から全員がステージに集結したのに対し、今回はその逆である。数字が1になった瞬間、彼女たちはステージ下へと消えていく。
そして、スクリーンには「See you at the next stage」の文字。3人は新しい未来へと旅立っていったのだ。再会を約束するとともに――。