Number_iにとっての音楽、日本の音楽シーンにおけるNumber_iの存在――2ndアルバム『No.Ⅱ』全曲解説
KC Vibes
Number_iは自分たちのことを口では多く語らず曲にして伝えてきたグループで、今作の岸のソロ楽曲でそれをあらためて感じたうえに、彼の表現者としての底知れぬ可能性に心が震えた。『No.Ⅰ』では自身作曲、ギター演奏も手掛けた優しい手触りの「Recipe」を届けた岸だが、今作では一転。ソロ楽曲「KC Vibes」は、低く鳴り響くピアノと弦楽器が共鳴するトラック、さらには性急なボーカルが嘆くように畳みかけてくる重々しい一曲だ。〈みんなが思ってるほど何も考えてもないかもしんないし〉と歌われているが、実際は相当深くまでいろんなことを考えているのでは?――この曲を聴いたらそう思わざるを得ない。これだから、岸優太というアーティストは恐ろしいのだ。
Hard Life
「KC Vibes」の〈俺たちそんなん考える暇もなけりゃ何も考えてない〉を表したような「Taboo」から、グループ名義のプロデュース曲「Hard Life」へ。本アルバムを聴いていて思ったのは、Number_iの楽曲の面白いところはタイトルから想像するイメージをことごとく裏切ってくること。“苦しい人生”を意味するタイトルとは相反するようなご機嫌なリズムに、3人の軽やかなボーカルが重なる本曲は、いろいろなことがある毎日を明るく乗り越えようとする前向きさが宿っている。どんな時も心の持ちようだと、私たちに言い聞かせるように。
2OMBIE
「Hard Life」に登場する〈Kick Snare〉のフレーズをキーに「Kick Snare Man 2」へと続き、そこから繰り広げられる「2OMBIE」で、私たちはさらに未知なる世界へと誘われていく。ここまで“2”が強調されているのは、アルバムタイトル『No.Ⅱ』を意識してのことなのかもしれない。蘇るゾンビ=「2OMBIE」をテーマに、再び起き上がってトップを目指すことを歌った岸プロデュース曲。淡々と進むようでいて、不思議な音が散りばめられたり、急にノイズが走ったりする予測できない展開も含めて、彼らの冒険心が強く表れている。
幸せいっぱい腹一杯
平野プロデュースの「幸せいっぱい腹一杯」は、軽快なハンドクラップに高揚感のあるメロディ、ユニークなタイトルも含めて終始ハイテンションモード。食べ物の名前が多数並ぶだけに、聴いているだけで強烈な陽のエネルギーを摂取できる楽曲だ。「本能のままに騒げ!」とでも言われているようなパーティーチューンで、ライブでも盛り上がる楽曲になるのではないかと思う。冒頭の「In-flight」での“ハピネス”のくだりはこの曲の伏線だったのかと思わせられた。
i-mode
MONJOEの手によって、より刺激的なクラブチューンに生まれ変わった「未確認領域 (MONJOE Remix)」に続き、『No.Ⅱ』のラストを飾るのはNumber_iプロデュースの「i-mode」。要は物語のエンドロールにあたり、『No.Ⅱ』という作品を通して伝えたかったメッセージが、この曲には詰まっているように感じる。Number_iはすでに完成された道を歩いてきたわけではなく、自分たちの手で道を開拓してきたようなグループだ。まだ誰も見たことのない物事をやり遂げることは、多くの人を惹きつける反面、さまざまな声を受け取るだろう。それでもついてきてくれる人を彼らは離さないと、Number_iは「未確認領域」でも歌っている。〈i-modeな君を見たい/i-modeな君を見たい/i-modeな君といたい/それだけでいいよ〉――つまり、“i=愛”を持ってずっと手を繋いでてほしいということ。彼らが願うのは、おそらくそれだけなのだ。アルバムをすべて聴き終えた今、たしかにそう思うのだ。