新着MVランキング:米津玄師「IRIS OUT」首位 『チェンソーマン』劇中映像のみで構成された愛あふれる作品に

MV Chart Forcus

 毎週更新される「YouTube Music Charts」ウィークリー ミュージック ビデオ ランキングより、MVをはじめとした音楽関連の新着動画から上位10作品/楽曲を取り上げ、ランキング化&レビューしていく連載「MV  Chart  Focus」。9月12日〜9月18日のウィークリー新着のTOP10は以下の通り(※1)。

1位:米津玄師「IRIS OUT」MV
2位:Number_i「Numbers Ur Zone」MV
3位:BE:FIRST「空」MV
4位:Creepy Nuts「ちゅだい」MV
5位:King & Prince『King & Prince LIVE TOUR 24-25 〜Re:ERA〜 in DOME』ダイジェスト
6位:星野源「2 (feat. Lee Youngji) 」MV
7位:FRUITS ZIPPER「ピポパポ」『TOMAKOMAI MIRAI FEST 2025』Live
8位:Ado「CAT'S EYE」Official Audio
9位:STUTS「夜を使いはたして feat. PUNPEE」THE FIRST TAKE
10位:初星学園 「ナイワ」Lyric Video

 今回取り上げるのは、米津玄師の「 IRIS OUT」のMV。本作は現在公開中の劇場版『チェンソーマン レゼ篇』の主題歌にも起用されており、映画のために書き下ろされた楽曲。「オリコンデイリーストリーミングランキング」(2025年9月16日付)でも現在トップとなっており、自身が持つソロアーティスト歴代最高記録も更新中だ(※2)。これまでタイトルホルダーだった「KICK BACK」は、『チェンソーマン』のTVシリーズ放映時のオープニングテーマ。同じ原作で二度目の快挙は、改めて両者の相性の良さを物語っている。

米津玄師 Kenshi Yonezu - KICKBACK

 『チェンソーマン』はチェンソーの悪魔を体内に宿し、デビルハンターとして暮らす少年・デンジを主人公にしたダークヒーローアクション。今回の『レゼ篇』は、デンジがひょんなことから出会った魅力的な少女・レゼに翻弄されつつ、壮大なバトルに巻き込まれていくエピソードを映画化したものだ。

 同作の主題歌である「IRIS OUT」のMVは米津作品には珍しく、全編を劇中のシーンのみで構成。これについては、映画の予告編を見た米津が出来栄えの素晴らしさに感激し、そのまま使わせてもらった背景があることを、ワールドプレミアに寄せたビデオメッセージで明かしている(※3)。

 心臓の鼓動のように力強く刻むビートにラテン味のあるピアノ伴奏が絡むイントロに、街を歩くデンジやレゼ、マキマの姿が重なる。その後、Aメロではデンジとレゼの出会い、マキマとのデートに浮かれるデンジなど、ストーリーをなぞるようにシーンが切り替わっていく。Bメロのラップパートではマキマとレゼの間で揺れ動くデンジの恋心を活写。〈死ぬほど可愛い上目遣い〉〈この世に生まれた君が悪い〉など、歌詞に合わせ絶妙なシーンセレクトがなされているのも印象的だ。原作ファンの米津は楽曲について「レゼが写ってるページを四六時中開きっぱなしにして睨みつけながら作りました」(※4)と語っているが、後出しだったはずの本編映像が楽曲にこれほどリンクするとは綿密な擦り合わせの結果か、はたまた作品への愛ゆえか。いずれにしろ見事な符合であると言っていい。

米津玄師 Kenshi Yonezu - IRIS OUT

 サビ途中の「ボン」などは米津が予告編からインスピレーションを得て、楽曲完成後に新たに追加した部分だという(※3)。2番では劇中屈指の胸キュンシーンであるプールでのやりとりに続き、畳み掛けるような構成で視聴者のテンションを爆上げ。さらに、二度目のBメロを経たタイトルコールの後には、ボムの圧倒的な戦闘力を長めの間奏にのせてじっくり見せ、ラスサビでさらに迫力を増したバトルシーンを挿入する。本編を鑑賞した方なら、チラ見せどころではない、と感じるかもしれないが、むしろそれすら狙っているのだろう。楽曲と融合した映像は何度も観返したくなる中毒性を獲得している。アウトロでは米津の絶叫に合わせ、さまざまなキャラの叫びのシーンを白黒反転したカットでコラージュ。ラストにタイトルを表示し、終幕となる。

 「IRIS OUT」=アイリスアウトとは、映像技法のひとつで、画面が円形にフェードアウトしていく表現のことだが、意外にもMVの中には使われていない。代わりに本編映像をこれでもかと詰め込んだのは、映像に絶対的な信頼があったからだろう。またアイリスアウトはある人物が画面からこっそり姿を消すことの比喩としても使われるということだが、これもある意味、物語の結末の暗示とも取れる名付けだ。映画を鑑賞する前の予習としてはもちろん、鑑賞後に観ても新たな発見のあるMVだが、果たして「KICK BACK」のように全世界を巻き込むフィーバーを巻き起こせるのか。今後の盛り上がりにも注目したい。

※1:https://charts.youtube.com/charts/TopVideos/jp/weekly
※2:https://www.oricon.co.jp/news/2407082/full/
※3:https://www.toho.co.jp/movie/news/chainsawman_reze_250915
※4:https://chainsawman.dog/movie_reze/music/

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