草彅剛&香取慎吾――“永遠の少年”が演じるシングルファーザー 役を通じた子育て、そして親としての葛藤

 その理由のひとつに、ふたりが持つ“少年性”があるのではないだろうか。国民的スターとしてキャリアを重ねながらも、「つよぽん」「慎吾ちゃん」と親しまれ、どこか永遠の少年のようなイメージが根付いているふたり。それゆえに大人の象徴ともいえる“親”という役柄とのギャップが大きく、「どんな親になるのか」と視聴者の好奇心をくすぐる。それが、たとえ大人になりきれていない未熟な親として描かれたとしても、拒否反応を示さずに、「誰もが最初からいい親になれるわけではない」「きっと何か事情があるのだろう」という、どちらかといえば共感のほうへと傾いていくように思える。

 そして、シングルという設定はパートナーが不在であることから、より親と子の純度の高い人間関係を浮き彫りにする。幼い子どもと向き合うことで、自分がどんな人間なのかを突きつけられ、過去や未来を見つめる葛藤が生まれるのが子育てだ。日々できていない自分を痛感し、それでも目の前の子どものために何度も立ち上がる。そんな成長する姿を演じながら、彼らもエンターテイナーという道の先輩として、子役たちに“いい背中”を見せようという気概とリンクしているようにも見えるのだ。実際、共演した子役たちが成長後もドラマやバラエティに駆けつけるなど彼らを慕い続けている姿を見ると、役を通じた彼らの“子育て”がいかに素晴らしかったかを垣間見ることができる。そうして次世代へと受け継がれた彼らの人間性にもまた、大きな魅力を見出さずにはいられない。

 また、シングル家庭では家庭外に他者の手を借りざるを得ない場面がどうしても発生する。そこで、人々のぬくもりや社会的な課題を再認識するというドラマが展開していくのだが、その場面でも彼らの持つ親近感や放っておけない人としての魅力が説得力を持つ。以前、彼らが出演するレギュラーバラエティ番組『ななにー 地下ABEMA』(ABEMA)では、「シンママ・シンパパ大集合!リアルな今を全部聞いちゃうぞSP」と題し、実際のシングルペアレントを招いた回があった。そこで香取は14歳で妊娠したシングルマザー・横井桃花さんの話を真摯に聞き、出産をすぐに認めたという彼女の母親について「なんでそういうお母さんだったの?」と問いかけた。その姿からは、大きな心で子どもたちを包み込むことのできる世界を考えるヒントを探しているようにも見えた。

 彼らが演じるシングルファーザーに胸を打たれるのは、もしかしたらその演技の根底に、誰もが子どもたちに手を差し伸べ、そして孤軍奮闘する親をも包み込むやさしい世界への願いがあるからかもしれない。草彅と香取がこれまで私たちに届けてくれた“親”の物語は、フィクションでありながら私たちが生きる現実を静かに温めてくれた。だからこそ、草彅が『終幕のロンド』で紡ぐ新たなシングルファーザーの姿にも、社会への救いや希望を抱かせてくれるのではないかと期待が高まる。

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