マルシィは新たな決意とともに横浜アリーナへと進む 初の日本武道館、笑顔と涙が交差した万感のステージ
ここからライブは後半へと向かう。「アイラブ」ではポップなサウンドに乗って観客がタオルを回しまくり、幸福感に溢れる空間が出現。さらに歌詞をスクリーンに映して演奏された「未来図」では、〈酸いも甘いも/抱き締めて〉の大合唱が起こり、さらに強い一体感が生まれた。特に〈僕達だけの愛の形と幸せを/二人だけで作っていこう〉というフレーズでは、バンドとオーディエンスの関係性とも強く重なっていたように思う。
さらにリリースされたばかりの新曲「フリージア」、“あなたのペースで進めばいいよ”という思いを込めた「エール」、「今日いちばんの声を聞かせてくれますか?!」(右京)という煽りからはじまった「大丈夫」、そして、離れた街で暮らす“君”への感情を綴った「ワスレナグサ」と様々な時期の楽曲を連ねる。
「次の曲、一緒に照らしてもらえますか?」(右京)の言葉に呼応し、観客がスマホのライトをかざしたのは「願いごと」。無数の白い光が武道館を照らす美しい光景が生まれ、右京が感極まって歌えなくなってしまい、オーディエンスが代わりに歌声を響かせるシーンは、マルシィと観客の結びつきの強さを証明していたと思う。
「こんなつもりじゃなかったんだけど」と涙を浮かべながら右京は、改めて観客に話しかけた。
「みんながいてくれるからマルシィがあるし、音楽をやっている理由になっています」
「このバンドで人生を賭けて、みんなの人生に関わって、寄り添っていけるバンドになるので。よかったらこれからもついてきてください」
マルシィをやっている理由、この先の活動に対する決意をはっきりと言葉にした右京。それは言うまでもなく、観客全員の心に強く刻まれたはずだ。
その直後に演奏された「プレゼント」も、この日のライブの大きなハイライトだった。ライブバンドとしての力を証明するダイナミックな演奏、ひとつひとつの言葉を手渡すようなボーカル、楽曲のストーリーとリンクした映像も含め、まるで1本の映画を観終わったような充実感があった。
ラストは「最低最悪」。ブルー、ピンク、パープルのレーザーが飛び交い、観客は楽しそうに身体を揺らし、手を挙げる。心地よい空間が広がり、ライブ本編はエンディングを迎えた。
アンコールを求める声が響き渡るなか、スクリーンには新たなライブの告知が。2026年1月9日、10日に行われる横浜アリーナ2Days公演がアナウンスされると、会場はすさまじい歓声で包まれた。
ステージに上がったメンバーはそれぞれ感謝の気持ちを伝え、「幸せの花束を」を披露。〈他では見せない表情を見せ合える/二人という居場所に/ずっと君と僕で〉というラインもまた、ライブにおけるバンドとファンの関係を映し出していたと思う。
最後のMCで吉田は、マルシィの成り立ちや軌跡について語った。もともとは自分のためだけに曲を書いていた、バンドをやろうと思ったけどメンバーがなかなか見つからなかった、人を介して知り合ったベースのタクミが「Drama」を褒めてくれた、shujiのギターを聴いたとき「この音だ」と直感で思ったーー。
「1回しかない人生、マルシィをやっている人生でよかった。ガラガラのライブハウスの頃から歌い続けてきた曲です」と紹介されたのは、「絵空」。まるで星空のようなライティングとともに奏でられたこの曲は、初の武道館ライブの素晴らしさを象徴していた。
前述した通り、来年1月に横浜アリーナ2Days公演も決定。記念すべき初の武道館ライブをやり遂げた3人は、バンドとしてさらなるスケールアップを果たすはず。ファンと寄り添いながら、自らの音楽の世界を広げ続けているマルシィ。この先、彼らが生み出す楽曲やライブシーンをたくさんの音楽ファンと共有したいと思う。