ゆず、“図鑑”のページをめくるような音楽体験 横浜アリーナ最多公演数を記録・更新したツアーを観て
バンド(FLOWER BAND)やFLOWER PERFORMERSなどのメンバー紹介に続けて、ここからは一気呵成で攻め立てた。ハイスピードでまくし立てるメロディと民族調のエッセンスが印象的な「Frontier」では、パフォーマーがフラッグをはためかせ、観客もミニフラッグを振った。ライブの定番曲「夏色」では、観客と一緒にタンバリンを鳴らして大合唱。北川は客席に突撃して、花を配りながら通路を練り歩き、岩沢が「リーダーどこへ行った?」と叫ぶ場面も。何度も繰り返す恒例の展開を行い、最後は北川が頭から花びらを被ってバズーカを発射した。そしてゴスペルのようなサウンドで始まった「Chururi」は、冒頭を「横浜アリーナで歴代アーティスト1位 本当にみんなのおかげだよ」と替え歌にして感謝の気持ちを伝える。さらにコーラスを会場一体となって楽しそうに歌い、気がつけばさっきまで土だったステージには大量の花が飾られ、2人は花のようなピンクとブルーの衣装に。カラフルでポップな世界がステージ上に花開いていた。
いよいよライブも終盤。「Interlude -harmonies-」の神秘的なサウンドから、昨年12月にリリースしたシングル曲「flowers」へと流れると、メランコリックなサウンドに合わせて力強いボーカルを聴かせるなど、雰囲気はクールに一変。バックには、「AMKK」の映像作品『Drop Time』シリーズとのコラボで花の映像が映し出され、どこか哀愁と色香が漂う大人のムードで観客を魅了した。観客の手拍子をドラム代わりにアカペラで始まった「ビューティフル」では、立ちこめるスモークをかき分けるようにセンターステージへ。蝶の映像、レーザー、花、客席にも蝶型の紙吹雪が舞うなどの演出が渾然一体となって、会場はまさしく春の嵐といったところ。北川の「カモン!」という呼びかけに、会場には〈Beautiful, never give up〉の大合唱がこだまし、それに呼応するように北川のシャウトが会場に響き渡った。
ゆずが初めて横浜アリーナでライブを行ったのは1999年のことで、「こんなデカイところで本当にできるのだろうか? とドキドキしたことを今でも覚えている。本番前は今も相変わらずドキドキしているけど、ステージでみんなの顔を観ると“爆発して最高の夜にしてやろう”って思う。毎回そんな思いを重ねて81回目のステージです」と、当時を振り返った北川。そして「デビューして28年目。これからも図鑑のページをめくるように、好奇心の赴くままいろんな音楽と表現を続けていきたい。そんな俺たちの姿がみんなの勇気になり、俺たちの音楽が少しでも心の支えになるようにと思う、今日この頃です」と今の思いを語った。
ラストは「伏線回収」。明るくアッパーなリズムに乗せて、ゆりやんレトリィバァに教わった振り付けを楽しむなど、みんなで一緒に歌って踊った同曲。「もういっちょ!」で復活するところは、「夏色」の「もう一回」の系譜。新たなライブの定番曲の誕生に、会場全体がお祭り騒ぎになった。
花・冬・命といった普遍的なテーマで選曲・構成されたライブ。アンコールはなかったが、その分楽曲や本ツアーで表現したいメッセージがダイレクトに伝わった。路上時代からの彼らの芯である、人と人が交じり合うことの喜びが、全身全霊で表現されたライブだった。
■セットリスト
1.Overture -harmonics-
2.図鑑
3.かける
4.RAKUEN
5.みぞれ雪
6.いつか
7.シャララン
8.つぎはぎ
9.SUBWAY
10.十字星
11.青
12.スミレ
13.花言霊
14.ワンダフルワールド
15.栄光の架橋
16.Frontier
17.夏色
18.Chururi
19.Interlude -harmonies-
20.flowers
21.ビューティフル
22.伏線回収