2025.02.06 21:00

にしな、自分を知り、自由を知る　新しい季節の訪れと“いのち”のバラード「つくし」を語る

文・取材＝金子厚武、写真＝林将平、ヘアメイク＝Eriko Yamaguchi、スタイリスト＝Erika Nakanishi

にしな、2025年のモード「あらためて、自分を知る。そして、自由にやる」

――ボーカルのレコーディングに関してはいかがでしたか？

にしな：「わをん」もそうだったんですけど、最近歌録りは自分ひとりでやるようにしてるんです。マインドは無意識でも環境に左右されると思うので、周りを気にせずトライし続けられる環境を求めると、「自分でやる」ということになっていったんですよね。ひとりでやってるとゲシュタルト崩壊して、「これはいいのだろうか？」みたいになりがちではあるんですけど（笑）、一旦ひとりで完成させて、ミックスの段階でほかの方の意見も交えながら、どれだけハイを持ち上げるのか、もっと凛としてたほうがいいんじゃないかとか、そういう議論をして決めていきました。

――どんな環境で歌録りをしてるんですか？

にしな：レコーディングブースと言うほどではないんですけど、事務所の部屋にマイクを立てて録ってます。去年機材を一新して、パソコンから何から全部変えたので、そこでいろいろ録ってみて、自分でセレクトして、それをミックスしてもらってます。本当にひとりなので、すごくこだわれるのはいいんですけど、集中しすぎてもよくない気もするし、今も悩みながらではありつつ、この曲の歌録りではそのチャレンジをしてみました。

――個人的に「つくし」の歌で特に印象的だったのが間奏の部分のフェイクで、ライブで聴くことはあっても、音源にああいうパートがあるのはわりと珍しい気がして。

にしな：ひとりだと「作りながら録ってる」みたいな側面もあって、だからこそ、これまではやらなかったことでも「ここにこの音があったらよくない？」って、チャレンジをしやすくなったのはありますね。あの部分はなくても成り立つと言えば成り立つけど、それこそライブ感というか。今は新しい試みをどんどん試せる状態で、すごく楽しいです。

――最後に4月に予定されている東京国際フォーラムホールAのライブについて聞かせてください。タイトルは決まりましたか？

にしな：“MUSIC”と“SICK”を合体させて、『MUSICK』にしようと思っています。まだ内容は考えてる途中なんですけど、ライブは毎回これまでにやってないこと、面白いことに挑みたいと思っていて。これまではしっかり一曲ずつ届けるスタイルでやってきたんですけど、バンドメンバーももう一緒にやって長いですし、音楽的にちょっと違うアプローチをしてもいいのかな、って。それでタイトルも「いい感じの音楽」みたいな、音楽そのものを立たせる意味で、『MUSICK』にしてみようかなって。

――『MUSIC』ではなく『MUSICK』なのはなぜ？

にしな：タイトルは、いつも何か一癖ほしくて（笑）。“SICK”は病気の意味もあるし、“かっこいい”というような意味もあって、病的に音楽が好きな人もいるし、最高にかっこよく音楽をやってる人もいるし、そんなニュアンスでがっちゃんこしました。

――さっきの歌録りの話を聞くと、にしなさん自身がこれまで以上に音楽に対して中毒的に、病的に向き合うようになってる気もしますね（笑）。

にしな：歌録りを自分でするようになると、やっぱりゲシュタルト崩壊するぐらいまでのめり込んじゃうし、しかも今の私は知識がなくて「ここのザラザラ感はどうしたらいいんだろう？」みたいな、すごく抽象的な感じなので、時間ばっかり奪われたりもして。でも、それを楽しいなと思いながらやってるので、そういう意味では病的かもしれないです（笑）。

――自分でボーカルを録るようになって、自分の歌や声の特徴について、あらためて発見したことはありますか？

にしな：謎は深まっていくばかりです（笑）。もともとは自分のローが好きだったのもあって、最近ローの部分が多い曲が多いんですけど、ほかの人に引き出してもらうと、自分の知らない側面が出てきたりもして。この前indigo la Endの「夜凪 feat.にしな」に参加させてもらって、前に川谷（絵音）さんの曲を歌ったのは美的計画の時だから、それこそ5年前とかなんですよね。当時とは声が変わってきたことを自分でも実感していて、「前に戻りたい」と思う瞬間もあったりするんですけど……。でも、今回川谷さんの曲を久しぶりに歌ったら、当時の美的計画っぽい声が出て、奥が深いなって。

――やはり2025年は「自分とは？」をさまざまな面で掘り下げる一年になりそうですね。

にしな：あらためて、自分を知る。そして、自由にやる。そういう一年にしたいです。