「和楽器バンドが消えることはない」10年分の感謝を届けた活動休止前ラストライブ 未来へ続く8人の物語

 撮影OKのアナウンスがあった「The Beast」を挟み、「Perfect Blue」「シンクロニシティ」など鈴華と町屋のツインボーカル曲を続けて披露。よりエネルギッシュになった歌声で会場を大いに盛り上げる。蜷川のイントロで歓声が上がった「吉原ラメント」では、雪の降る遊郭の画をバックに、鈴華が和傘をさして歌唱。切ない歌詞の曲ではあるが、メンバー同士で笑い合ったり向かい合ったりしながら楽しいステージを届けた。

 黒流と山葵によるドラム和太鼓バトルでは、手数が多いフレーズで超絶技巧を披露しあい、互いに一歩も譲らない熱烈な戦いを見せる。熱狂する観客は、二人が刻むリズムに合わせて飛び跳ね、会場を大きく揺らした。バトルの最後は、高速フレーズのループで全身全霊のプレイを見せた二人に、盛大な拍手がおくられた。

黒流&山葵

 鈴華の「みんなの思いを一つに込めた曲」という紹介から始まったのは、ベストアルバムに新曲として収録された「八奏絵巻」。過去にリリースした楽曲から膨大な数のフレーズを抜き出して組み合わせたという、まさに和楽器バンド10年の歴史が詰め込まれたナンバーだ。和楽器バンドからファンへの贈り物とも言えるこの曲を、彼らは輝く笑顔で届けた。そして本編ラストは、彼らの代表曲「千本桜(Re-Recording)」。満開の桜の景色を背に、大歓声を受けながら美しいフィナーレを迎えた。

神永大輔&鈴華ゆう子&町屋

 アンコールでは、各々のメンバーが今の思いを口にする。蜷川は「(メンバーは)戦友であり親友。性格はバラバラだけど、いざステージに上がって演奏すると一つになれる。会話しなくてもわかりあえた。そういうステージを応援してくれたみんなに感謝したい」と時折声を震わせながら話し、町屋は「詳しくは後日なにかで」と前置きしつつ、この場では「今日集まってくれて、私たちの音楽に出会ってくれてありがとう」と簡潔に感謝を述べた。

 神永は「前にも色んなバンドをやったけど、今一番バンドをやってて良かった。この先“あなたのバンドは何ですか?”と聞かれたら自信を持って和楽器バンドだと言える。尺八という楽器、そして僕を仲間に迎え入れてくれて本当にありがとう」と素直に思いを言葉にし、亜沙は「俺たちは8人で一人前。足りないところがあるから8人で寄り添って、音楽業界で戦ってこれた。応援してくれて感謝しています」と自身の気持ちをストレートに伝える。

 山葵は「間違いなく言えるのは、10年間支えてくれた皆さんのおかげで僕の人生は成り立った。ここまで一緒に駆け抜けてくれてありがとう」と伝え、いぶくろは「和楽器バンドは大きな成長と飛躍のきっかけだった。ファンのみんなも同じように思ってくれてるんじゃないかな。こんなにたくさんの仲間と、ライブの時間を共有して楽しく過ごせたことが嬉しい」と心境を語り、黒流は「とにかく今日集まってくれたみなさん、そして全世界から応援している方、ありがとうございました!」と晴れやかな笑顔を見せた。

和楽器バンド

 そして鈴華は、「一人では成しえなかったことも、8人が揃うことで奇跡を生み出してきた。たくさんの音楽が溢れる中、私たちを見つけてくれて好きになってくれてありがとう。今後も音楽は生き続けるから、和楽器バンドが消えることはない。私たちの命が絶えた後ですら残っていく。今日の光景は、私たち一人ひとりの背中をこれからも押し続けると思う。それぞれのヒーロー物語がある中、それを投げうって和楽器バンドに捧げてくれたメンバーにも感謝したい。みんなもその目で物語の続きを確かめていただけたら」と語り、メンバー一人ひとりにも感謝の気持ちを伝えた。

 そしてついにラストへ。和楽器バンドが最後に披露したのは、「GIFT」。〈いつまでも立ち上がって守り続けていくんだ 更なる場所へ 未来へのストーリー〉〈変わらない絆で また会おう 笑顔のまんまで〉と、未来への決意とも約束ともとれる歌詞を、眩い光のアーチの下、晴れやかな笑顔と共に届けた。

 活動休止前ラストにして、バンドの集大成となる最高のライブを届けた和楽器バンド。濃密な時間を振り返ってみれば、浮かぶのはライブを心から楽しむメンバーの笑顔ばかりだ。この夜の美しい思い出を心に携え、8人の物語はこれからも続いていく。

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