Mardelas、デビュー10周年を見据えて新たなスタートラインへ 『Dead or Alive』の本当の意味と未来

 劇的かつ叙情味溢れる楽曲が支持されてきたMardelasが、去る9月25日にライブ作品『Live 2024 -Dead or Alive-』(Blu-ray/DVD/CD)をリリース。同作は2024年2月25日に東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASUREで行われたホール会場での初ワンマン公演『Dead or Alive』を収録したもので、スタジオ音源とはまた異なる、ステージにおけるMardelasの魅力がよくわかる内容に仕上がっている。

 ただ、タイトルに冠された“Dead or Alive”という言葉は、バンドのキャリアを語るうえで非常に重要な響きを持つものでもあった。メンバーの蛇石マリナ(Vo)、及川樹京(Gt)、本石久幸(Ba)は、来るべき日をどのように考え、そしてどう臨んだのか。10月19日、20日に東京・池袋 Club Mixaにて行われた発売記念ライブからほどなくしたタイミングで、3人にこのアイテムについて、そして気になる将来に向けての話を聞いた。(土屋京輔)

コロナ禍の試行錯誤を経て“今のバンドの実力”を試すための『Dead or Alive』

蛇石マリナ(Vo)

ーー先にリリースされた『Live 2024 -Dead or Alive-』は、文字通りに“死ぬか生きるか”を賭けてのライブを収めた作品でもありました。そもそも同日の公演をなぜ『Dead or Alive』というタイトルを掲げて行ったのか、まずはその背景を知らない人に向けて、あらためて説明をしていただけますか。

及川樹京(以下、及川):まずこの3、4年、音楽業界というかバンド界隈では新型コロナウイルスによる影響が大きくありましたけど、そのあいだにMardelasはドラマーが抜けてたりとかもあったんですよね。ただ、その期間にも新しくYouTubeチャンネルを始めたり、配信ライブを何度かやってみたり、無観客ライブの映像を出してみたり、ライブも作品としてCDとして出したり、すごく精力的に活動はしてきました。そういったなかでキャパシティとか声出しなどのさまざまな制限がようやくなくなった。そこで、どのぐらい自分たちが成長できたのか、そして、その活動を見てお客さんがどれぐらいついたのか、それを計る意味でもやっと勝負できる時期になったっていうのも大きいんですよ。つまり、今のバンドの実力を試したいということで企画したライブだったんですね。

 同時にネガティブな面で言えば、それをもってしても、今までのキャパとかを超えられないのであれば、そもそも頑張っているベクトルが違うというか、今の時代に求められてないのかもしれない。その点では、自分が音楽と向き合っていくことにおいて考えなきゃいけないな、と。でも極端な話、趣味ならともかく、プロとしてのこだわりを持っているからこそ、そう感じるのはツラいですよね。バンドの調子が本当にいいというのも、(ライブを)企画した大きな理由でしたね。以前よりも確実に音もよくなっているし、みんなのスキルも上がってきていて。映像を撮ったり配信することで、自分たちをよりシビアに見ることにもつながっていったんですよ。あとはサポートドラマーにMAKIくんが決まったのも大きいです。やっとウィークポイントがなくなったというか、「全力で行ける」と思える状態になりました。

【9/25発売】"Live 2024 –Dead or Alive-" Trailer [Live Blu-ray/DVD/CD]

ーーそれが「勝負できる」と思った背景であり、『Dead or Alive』という言葉にもつながっていくわけですね。バンド内でこのライブを行うことを決めてから当日までは、一年ぐらいの期間がありましたよね。

蛇石マリナ(以下、蛇石):そうですね。その前年の同じ日にライブをやってるんですけど、その日にライブの制作側とも話をして、「もう会場を押さえた」っていうやり取りをしたのをすごく覚えてます。その段階で、「このタイミングで節目になるライブをやらなくちゃいけないよね」っていう共通認識はみんなのなかにあったんです。同じことを繰り返していくことをよしとしないバンドだと思ってるし、プロとして毎年何かを更新していけるバンドでなければいけないとも思ってますし。

ーーふたりはそう言いますが、本石くんはライブに向けてはどう考えてました?

本石久幸(以下、本石):概ねふたりが言った通りなんですけど(笑)、大きい会場、特にホールを埋めてみたいという願望はあって。その前に出した『Mardelas IV』(2022年)の手応えがよくて、ライブを行ううえでの制限もなくなってきていたから、その意味でもどこまでいけるのかというチャレンジはありました。大きい会場は1年後とかでないとなかなか空きがないので、そのぶん、それまでの時間に何ができるかを考えて、自分を高めていこうという気持ちではありましたね。

蛇石:『Mardelas IV』のあと、2023年9月には『Snake to the Fire』というすべて英詞のシングルを出したんですけど、それもそこに向けての道のりのひとつというか、ステップのひとつとして作品を出したいと話していたんです。そういう作品のコンセプトもありますし、1曲目に入っている「Patriot Anthem」の歌詞に〈Dead of Alive〉という言葉が出てくるんですよ。

Mardelas “Patriot Anthem” (Official Music Video) 2023

予想を超える熱気を生んだライブ本番「新しいスタート地点に立てた感覚」

及川樹京(Gt)

ーー客観的な見方をすると、『Mardelas IV』は最高傑作という呼び声の高いアルバムですし、バンドのいい状態が傍からもよくわかる状況で一年間待った。自分たちがやるべきことはこれなのだという確信を持ったうえで、ライブ当日まで過ごすことができたのかなと思うんです。

及川:そうだと思います。その日にいい演奏をするとか最高のパフォーマンスをするというのはもちろんなんですけど、あとは数字ですよね。客席をどう埋めるか。それに関しては、やっぱりストーリー作りみたいなものを意識していましたね。応援してきてくれたみんなが集結してくれれば、ソールドアウトするキャパではあったんです。何か意気込みみたいなものを表面に押し出すのは、今まではちょっとダサいと思ってたんですけど、たまにはいいかな、と(笑)。「本当に埋まらなかったら田舎に帰りますよ」じゃないけど、「それぐらいの気持ちでポジティブに仕上げていくから、ぜひ観てほしいです」というような発信は、自分はSNSだったりで意識しましたね。

ーーよりわかりやすく伝えるということですよね。

及川:そうですね。 今は情報が多いから、わかりやすくないと……ただ「ワンマンやります、頑張ります」といっても、「また次もあるだろう」みたいに思われることもあるでしょうし。

蛇石:『Snake to the Fire』を出してツアーをまわれたことも、すごく大きかったなと思っていて。各地のMCでそういう話もしていたんです。バンドにとって本当に大事なライブにしたいから、みんなにも応援してほしい、って。実際にファンも真摯に受け止めてくれたなと感じていますし。

及川:東名阪だけじゃなく、経費の面でどうしようか悩むようなところも含めて、久しぶりにいろんなところに行ったんですよ。

蛇石:シングルが会場限定販売だったので、より多くのところに行かないとな、っていうのもありましたね。

本石久幸(Ba)

ーーそして、無事に2024年2月25日のSHIBUYA PLEASURE PLEASUREは満員の観客に迎えられた。当日の模様は『Live 2024 -Dead or Alive-』に明らかですが、かなり大きな意気込みで臨んだあの日を振り返ると、どんなライブでした?

及川:個人的には演奏に関しては、過去イチちゃんと仕上がっていたなと思いますね。目標とか夢とかも、現実になると現実でしかないんですよね。ちゃんと用意していくし、計算していくから。だから、ステージに立ったら立ったで、本当にやってきたことをやるだけだなと思ったし、ソールドさせるつもりでやってきたから、お客さんが入っているのは予定通りって言ったら変ですけど、それに対する特別な感動とかはなかったんです。ただ、ライブが始まってみて、お客さんを目の当たりにすると、その熱気などが予想を超えてたっていうのはありましたね。バンドの演奏がよかったのもあるかもしれないけど、それ以上に今までの活動がフラッシュバックする……そう感じるほどいいライブだったなと思います。

ーー涙腺も緩みますよね(笑)。

及川:そうですね(笑)。楽しかったし……「ごめんな」って思いました。(バンドを)やめようとか思っていたことに対して。

本石:僕は気がついたら終わってた感じだったんですよ。だから、映像の編集に立ち会っていた時に、「こんなシーンがあったな」と再発見するみたいな。大きいホールで、撮影も大がかりなチームを入れて、子供の頃に観ていたプロのライブってこういう感じだなとか、それを俯瞰で見ている自分もいて。やっとスタートに立ったな、って感じですね。これまでを否定してるわけじゃなく、今までとは違うレベルに到達したというか。そこからまたどうしていくんだっていう話なんですけど、新しい扉が開いた、そういうライブやったかもしれないですね。

蛇石:やっぱり伝えてきたストーリーが的確に伝わったんだなっていう実感がありましたね。今までのライブとは構成も結構変えてる部分もありましたし。たとえばMCをダラダラやらないとか――。

ーーいつもはダラダラやってるみたいな言い方じゃないですか(笑)。

蛇石:(笑)。でも、いつもよりシリアスな感じはあったと思います。ただ、そのぶんお客さんとみんなで歌う時とかの対比みたいなものもより大きく感じられましたし。お客さんの声も過去イチ、大きかったように感じましたし。声が出せないライブが続いていたのもあるけど、やっとまた新しいスタート地点に立てた感覚でした。

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