BURNOUT SYNDROMES、『ORIGAMI』で示す進化 FLOW、CHiCOらとのコラボが生んだ新たな学びと強みを語る
11月27日、BURNOUT SYNDROMESの約3年半ぶりとなる5枚目のオリジナルアルバム『ORIGAMI』がリリースされた。驚くべきは、全14曲の半数にあたる7曲がほかのアーティストとのコラボレーションを通して制作された楽曲であることだ。アニソンシーンを牽引するFLOW、CHiCO、東山奈央、ASCA、halca、レーベルの先輩である石崎ひゅーい、そしてブラジルのラッパー・niLL。それぞれのアーティストとBURNOUT SYNDROMESが交差することで新たな化学反応が起きており、彼らはそうした経験を通して自分たちの強みや独自性を再確認したという。今回のメンバー3人へのインタビューでは、それぞれのコラボを通して得た刺激や新たな気づき、また、世界を見据えて活動する彼らの今後の展望について語ってもらった。(松本侃士)
多様なアーティストとのコラボレーションから得たもの
ーーはじめに、国内6組のアーティストたちとコラボレーションを重ねる中で得た刺激や学び、気づきについて教えてください。
熊谷和海(以下、熊谷):一番最初にリリースした「I Don’t Wanna Die in the Paradise(×FLOW)」では、KOHSHIさんとKEIGOさんがボーカルとして参加してくれてるんですけど、「これまであまりやったことない曲だね」「こういうのやりたかったんだ」って言いながらボーカルを入れてくれて。その時に、長いキャリアを誇るお二人に、こちらからも何かしらの刺激を与えられたような実感があったというか、相手にもそうしたものを与えられるのであれば、とても意義のあるコラボになるなと思いました。
また、「KUNOICHI(×ASCA)」でご一緒したASCAさんには、ボーカルを入れる時に“一切声を張らない柔らかい歌い方”をお願いしたんです。ご本人は、「あまりこういう歌い方をしたことない」とおっしゃっていたんですが、それがとても上手くはまり、ASCAさんのファンの方からもリリース後に好評の声をいただきました。皆さんとのコラボを通して、もちろん自分たちが得たものも大きいんですけど、せっかくコラボするんだったら相手にも何か持って帰ってほしいっていう感覚が大きくて。だから、こちらからもいろいろ提案をさせていただくこともありましたね。
ーー「I Don’t Wanna Die in the Paradise(×FLOW)」には〈武士道〉というキーワードがあったり、歌詞だけではなく、三味線のような和のサウンドや日本的な音階をはじめとした日本独自の要素が入っている楽曲が多く収録されています。世界を舞台に音楽活動するからこそ、こうした日本人としてのアイデンティティを色濃く感じさせる楽曲がより映えるのだろうと思いました。
熊谷:ありがとうございます。少し話が変わってしまうかもしれないんですけど、どこまで洋楽に寄せて、どこまで邦楽の良さを出すかというバランスはとても難しいと思っていて。邦楽に洋楽の要素を入れるパターンもあるけど、私は逆だと思っているんです。世界と戦うにあたってはベースを洋楽にして、そこにどれだけ邦楽の良さを詰め込んでいくのかが勝負かな、と。世界と戦う上で特に鍵になるのは、私はコード感だと思っています。日本の音楽と欧米の音楽で何が一番違うかって言われると、それはコード進行で、向こうはループの曲が圧倒的に多いんですよね。西洋音楽はジャズから発展していて、ジャズのコードはずっとぐるぐるループしているのが基本なんですよ。
ーー逆に、J-POPやアニソンは、Aメロ→Bメロ→サビというような大きな展開がついていたり、転調が多用されるという特徴がありますよね。
熊谷:それが良さだっていう話ももちろんあるんですけど、世界を目指す上でそういう音楽は聴かれづらいと思っていて。アメリカにもアニソンが好きな人はいますが、そういう人たちは幼少の頃からループする音楽を聴いてきているわけだから、結局そっちの方が直感的に聴きやすいんだと思うんですよ。日本の音楽が新鮮に聴こえることもあるかもしれないですけど、コードがループしていないと、おしゃべりしながら聴きづらいし、曲の展開に頭が持っていかれてしまうんですよね。やっぱり向こうでは日本の音楽ってあまり流れていないし。だから、曲を作る上ではコードのループ感は意識していて、そこに日本独自の要素や日本語の言葉遣いとか、ヨナ抜き音階と呼ばれるような音階であったりとか、そういうのを混ぜて作っています。
ーーコードのループ感のお話がありましたが、石川さん、廣瀬さんは、今のお話をどう解釈していますか?
廣瀬拓哉(以下、廣瀬):海外のアニメのイベントによく出演させてもらっているんですけど、海外の方にも知ってもらえているアニソンだけじゃなくて、それ以外の曲でもすごく盛り上がってくれてるので、洋楽をベースとしたフォーマットは正しいんだなってライブをやりながら実感してます。
石川大裕(以下、石川):ループ感のある曲もあれば、いわゆるアニソンっぽく展開する曲もあって、それぞれの曲に役割があるんですよね。その使い分けができるところが僕たちの強さなんだと思います。
ーー今回、コラボする相手が様々ということもあって、各曲の歌詞の書き方も多様だと感じました。
石川:「KUNOICHI(×ASCA)」と「I feel you(×halca)」が、いい対比になっていて。Aメロで女性の気持ちを歌って、Bメロで男性の気持ちを歌うっていう構図は一緒なんですけど、「I feel you(×halca)」は最後に2人で答えを出すという結論を出しているのに対して、「KUNOICHI(×ASCA)」は2人の結論が出ないんですよ。そのまま消えていくというか、2人の想いが交差しない感じがある。こういう展開になるのがASCAさんらしい、逆に、2人で答えを出すのがhalcaさんらしいというか、それぞれにとってぴったりだし、この対比がすげえおもしろいなって。
ーーFLOWさん、CHiCOさん、ASCAさんとは、すでにライブのステージで共演していますね。
廣瀬:いつものライブではスリーピースなのでセンターが空いてるんです。そこにゲストの方がいらっしゃることで、それぞれのコラボのステージごとに新しい景色があってすごく面白いですね。たとえば、CHiCOさんは、結構ドラムの方を見てコミュニケーションを取りながらライブをする方なので今までにない感じがしてすごくテンション上がりますし。皆さんに共通して言えるのは、お客さんの盛り上げ方の上手さですね。とても学びがあって、何より一緒にやっていて本当に楽しいなと思います。
石川:東山奈央さんとコラボさせていただいた「魔王(×東山奈央)」は、まだ東山さんとライブでやったことがないんですけど、これをライブでやった時の爆発力ってすごいと思うので、いつか実現したいですね。
新たに見えてきた“BURNOUT SYNDROMESらしさ”
ーーいろいろなアーティストとコラボする中で、逆に自分たちの強さ、自分たちらしさを再確認したようなことがあれば教えてください。
石川:熊谷はやっぱり、ホスピタリティがすごい高いと思う。コラボ相手のイメージに合わせて、相手が一番輝くようなものを作るというか。一方で、今回のアルバムに収録されている熊谷君が一人で歌う曲と対比して聴いた時に、改めて、その“良さを”再確認しました。よそ行きじゃない熊谷が見られるというか、今回たくさんのコラボを経験したからこそ再確認できたことだと思います。
ーー今作には、ブラジルのラッパーのniLLさんとのコラボ曲も収録されていますね。niLLさんと国境を越えたコラボをするに至った経緯について教えてください。
熊谷:ブラジルのイベントに出た時にライブを観てくださって、その後、DMが届きまして。「めちゃくちゃよかったよ」「俺ラッパーなんだけど曲作らない?」という内容で、よし、誘われたからやろう! って。
石川:唯一の逆オファーでしたね。
熊谷:海外のアーティストとのコラボはずっとやりたいと思っていたんですけど、まさかブラジルの方とコラボできるとは思ってなかったです。英語じゃないですし、しかも今回の相手はラッパーですから。今回これが実現できたことは、今後に向けた大きな自信になりました。
ーーそして今作にはボーナストラックの一つとして、レーベルの先輩にあたる石崎ひゅーいさんとコラボした「Good Morning [New] World!(×石崎ひゅーい)」が収録されています。石崎さんとのコラボを通して、印象に残っていることなどがあれば教えてください。
廣瀬:ひゅーいさんの曲かなって思うくらいにすごく曲が合っていて、もう本当にびっくりしました。こんなに似合うことってあるんだ! って。
熊谷:すごく私と“似てる感じ”がするなという感じがしていて……特に歌い方ですね。自分で録ってるのに、どっちがどっちの歌声か一瞬わからなくなったりすることもあったんですよ。最初のレーベルの担当が同じ人だったりすることもあってか、通じ合うものを感じて、歌声だけじゃなく、なんだか雰囲気も似ていて。なんて言うんでしょうね、言語化できない、人が持ってる雰囲気というか。