JUBEE「主役になって、俺とぶつかり合ってくれ」 Kj、JESSE、OMSB、MUD……豪華ゲストと鳴らした熱狂の20曲
本編は全20曲。長いように思えるが、実際は驚くほど小気味よく進んでいった。今さらだが、たっぷり聴かせるイントロやアウトロがない上、チューニングなどの時間も要しない1DJ1MCスタイルは効率がいいのだなと思う。ただ、それだけではない。自分語りが出発点であるはずのラップを使い、何を見せるのか、この音で何を成し遂げたいのか、本人が極めて自覚的だったところが大きい。
JUBEE、2ndアルバム『Liberation』を携えたツアーのファイナル、代官山UNIT公演。平日、冷たい雨の降る夜とは思えない人の入りだが、ふわりと踊り出す客に対して「もうちょっと前に来れる?」とJUBEEはまず密度を求める。近づくことで生まれる熱、もっと言えばぶつかり合う摩擦や吹き出す汗が必要。それを煽るのがタテノリの高速ビートを多用するトラックであり、シャウトにも近いJUBEEのガナリ声だ。ディストーションまみれのそれは、「ひとりバンド」と呼ぶほうが正しいのだろう。複数名で集まれば戦隊モノみたいなパワーが生まれる、というのはよく聞く話だが、たった一人でこれをキープするのは相当なカロリーが必要だ。ふっと素に戻ってしまえばできないことである。
スタートから拳を突き上げ、派手にジャンプを繰り返し、何度も「もっと前に詰めろ!」と煽るJUBEEは、あまり例のない「ひとりバンド」の王としてフロアを制圧したいのか。そうではないことは最初のMCで明らかになっていく。曰く、「一対一、みんな主役になって、俺とぶつかり合ってくれ」「俺がヒップホップだっていうこと、ロックの先輩に見せつけてやりたいから」。
最初の数曲を除き、次々と現れるゲストの数が凄まじかった。OMSB、MUD、CYBER RUIにLeon Fanourakisなど、若きラッパーがJUBEEの世界を盛り立てる。共に闘うライバルであり最高の同志だと拳を突き合わせて互いの肩を抱く、クラブシーンの美しい光景だ。そのマイクリレーにはバンドマンも自然と交ざり合っている。Age Factoryの清水英介が登場した「Boost」ではフロアに初のダイバーも登場。ざらつく清水のシャウトとJUBEEの野太いガナリ声がそうさせるのだ。〈rock on〉と決め台詞を繰り出す2人の姿は、ラップとラウドロックが真正面からぶつかり合っていた90年代ミクスチャーに限りなく近い。
ただ、当時のガチンコな空気と、ゆったりしたチルのムードを同時に表現できるのが2024年のJUBEE流ミクスチャーだ。後者をRIZE/The BONEZのJESSEとのコラボ曲「Vision」で表現するところも感慨深い。裸一貫を代表するロックシンガーと、あえて柔らかなメロディを共有。「ホンモノだぁ!」と大いに盛り上がる観客を、実の兄のような眼差しで受け止めるJESSEは、自分が放ち続けた熱量が確実に受け継がれていることを感じたのだと思う。JUBEEがまた同じことを言う。何度だって言いたいのかもしれない。「俺はラッパーだけど、このまま先輩たちの背中を追い続ける」。