香取慎吾、フジテレビ連続ドラマ11年ぶり主演への大きな期待 磨き上げられた俳優として底力を振り返る
香取慎吾が、来年1月スタートのドラマ『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系)で主演を務めることが発表された。フジテレビでの連続ドラマの主演は2014年の『SMOKING GUN〜決定的証拠〜』以来、約11年ぶりとあって注目が集まっている。
今回香取が演じる大森一平という男は、タイトルにもある通り“日本一の最低男”だそう。家族より仕事を優先してきたテレビ局の報道マンだったが、前時代的な考え方によって不祥事を起こしたことで無職同然の生活に。そんな一平が、亡き妹の夫で2児のシングルファーザー・小原正助に実家での同居を持ちかける。正助とともに家事に育児に奮闘する一平だったが、そこには生活者目線を持つ政治家になるという目論見があった。イメージアップのためにホームドラマのような家族を演じることにした“最低男”。だが、日常生活を通じて義弟や子どもたちとさまざまな問題にぶつかりながら、少しずつ家族や社会と向き合い、やがて本気で選挙に立候補する。そんな笑いあり、涙ありの完全オリジナル作品だという。
香取といえば、若い頃から『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)でのコントをはじめ、三谷幸喜脚本のシットコム『HR』(フジテレビ系)などコメディ作品との相性の良さを見せてきた。加えて、映画『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』のハットリくんや、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(TBS系)の両津勘吉、ドラマ『西遊記』(フジテレビ系)の孫悟空などインパクトのあるキャラクターを演じてきたことでもおなじみ。そして、慎吾ママなどのヒットも相まって明るく楽しい“慎吾ちゃん”を確立してきた。そのためテレビで見てきた“慎吾ちゃん”の印象が強い人にとっては、今回の“最低男”は意外な役柄に思うかもしれない。しかし一方で、その“慎吾ちゃん”としての光があるからこそ、シリアスな作品での影ある演技も魅力的でもある。それが、この作品でより広く知れ渡ってほしいと願うばかりだ。
特に、2017年に新しい地図を広げてからは、“最低男”と呼ばれるような役柄にも積極的に挑戦してきた。なかでも際立っていたのが映画『凪待ち』だ。暴力的で、無鉄砲で、本人もどうしたら最悪の状況から抜け出せるのかわからずに、自暴自棄になっていく男を熱演。人生に絶望した眼差しは、見ていて胸が苦しくなるほどだった。また、映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』では、妻に旦那デスノートに愚痴を書き込まれてしまうダメ夫を演じたことでも記憶に新しい。悪い人ではないけれど、デリカシーのなさから妻の地雷を無自覚に踏んでいく男をリアルに演じた。
それでも苛立ちと笑いを同時に誘うことができるのは、光と影を使いこなしてきた香取だからこそと言えるかもしれない。ドラマとはいえ、最低だと感じる人間を見続けることはなかなかできない。そこに「見守りたい」という情を感じることができなければ。その点、香取が演じてきた“最低男”たちは、どこか愛される要素や、放っておけない引力のようなものがあるから不思議だ。今回もその絶妙なバランスが発揮されるのではと期待が高まる。