平手友梨奈は今本当の“表現者”になった――新曲「bleeding love」が与えた衝撃とは何だったのか

 平手友梨奈という表現者は、今何を思い、何を生み出そうとしているのか――。

 事務所移籍後、まっさらな状態から再出発した彼女がリリースした新曲「bleeding love」。10月16日のリリースとともに、同日21時にはYouTubeチャンネルにてMVを公開。ついに解禁された彼女の姿に、今までと変わらない表現にかける情熱と、少しの新鮮さを感じた。またひとつ表現のステータスを前進させたという意味で、ひとりで歌い踊る彼女に強い存在感を感じたのだ。

 所属事務所クラウドナインの5周年特別番組『雨音』(フジテレビ系)にて同曲を歌唱、パフォーマンスする姿を目にした際にも同様の思いを抱いた。本当の意味で“ソロ”としてステージに立った彼女に、新たな胸の高揚を覚えたのだった。

 
 
 
 
 
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 23歳、大人になった平手友梨奈が現在地点で表現したいものは何なのか。新曲「bleeding love」にあらためて触れてみると、そこにさまざまな新境地を見ることができる。

 音作りの面から聴いてみると、エレクトロ的なアグレッシブさが前面に押し出されているが、曲タイトルをリフレインするサビではどこか虚無感を感じさせるサウンドが印象的だ。

 MVの冒頭、〈物足りない 満たされない〉という歌詞とともに暗い砂地をさまよい歩く平手の姿が映る。サビに入ると薄暗い水槽でひっそりと息をする赤い観賞魚そのもののようにして動く姿が映し出され、2番のAメロでは歌い出しよりも感情を乗せた歌声が〈止められない君への愛〉とある種の危険信号を放つ。何度も繰り返される〈bleeding my love〉という言葉。そこで、血のように赤いスポットライトが踊る平手を照らし、まとう赤いヴェールが風になびき、かつて彼女こそが観賞される側(=観賞魚)そのものだったのだということに気づく。そして最後には、「やっと見つけた」と言わんばかりの表情でこちらに手を伸ばす――そこで暗転するのだ。

平手友梨奈『bleeding love』MUSIC VIDEO

 ダンスパフォーマンス面で見れば、大勢のダンサーとともにシンクロさせるようなダンスとは違った、ソロでのコンテンポラリーだ。映像から捉えられるのは、鑑賞対象(メタファーとしての観賞魚)としてではなく「私も誰かを愛したい」とただよいながら願い、歌う姿。これらは、これまでの経験や環境を積み重ねて“蓄積のうえでたどり着いた平手友梨奈”だけによって創出されたものとは違う、新たな赤い衝撃を帯びて私たちの眼前に広がったのは言うまでもないだろう。

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