千葉雄喜、Spotify US/グローバルチャートでも存在感 「チーム友達」「Mamushi」ヒットが示す世界的トレンドとの合流

 しかし、こうしたリリックがなぜ海外、特にアメリカをはじめとした英語圏で受け入れられたのか? その理由に関する興味深いのが言語学的な観点からの考察だ。AI歌詞翻訳ツール「Moozi Lyrics」を手がけるシアラ・アドキンス氏は自身のMediumで特に〈スター〉という単語の使用が効果的だと指摘する(※1)。この言葉は日本語と英語で同源語であり、両言語で意味と発音が似ている。「Mamushi」では、この〈スター〉という言葉が頻繁に繰り返されることで、日本語を理解しない聴衆にも親しみやすく、記憶に残りやすい楽曲となっているというのだ。これは日本語ネイティブである我々にとってはあまり考えが及ばない盲点とも言える指摘だ。しかし、自分の過去を振り返ってみると、筆者は「高速道路」など日本語と同じ意味で発音がほぼ同じ単語がある韓国語に親しみを持った経験がある。そのことを踏まえるとこの考察は案外的を得ているのではないかと思わされる。

 実際に千葉雄喜がゲストとして登場したミーガン・ジー・スタリオンの『Hot Girl Summer』アリーナツアーのロンドン公演の動画を見ると、〈スター〉という単語が出てくるコーラス部分を観客がアーティストと一緒に合唱する様子も見られる。これらの反応は「Mamushi」は言葉の壁を越えて、多くの人々の心に響いていることを如実に示しているが、こうした魅力が「Mamushi」のグローバルでの成功につながっている。

 その証拠に楽曲は、SpotifyのUSチャートやグローバルチャートにランクインしているほか、「Today's Top Hits」(フォロワー3400万人超)や「RapCaviar」(フォロワー1600万人超)といった影響力の大きいプレイリストにも選出。現在、その再生回数は1億1000万回を突破し、ミーガン・ジー・スタリオンの楽曲の中でも最も人気のある曲のひとつとなっている。さらにその追い風となっているのが「Mamushiダンス」と呼ばれるダンスチャレンジの世界的なトレンド化だ。この現象は「チーム友達」で見られた拡散パターンが国際的なスケールで再現されたものと言えるだろう。

 グローバルヒットしたことで「チーム友達」と「Mamushi」は、日本のヒップホップが世界に通用する可能性を示した象徴的な楽曲となったが、この成功は、近年のヒップホップのグローバル化の流れの中に位置づけることができる。例えば、プエルトリコ出身のバッド・バニーは、スペイン語でラップを展開しながら英語圏でも大きな成功を収めているほか、韓国出身のキース・エイプも母国語で歌った「It G Ma」で世界的なヒットを生み出している(KOHH時代に千葉雄喜も参加)。2曲のグローバルヒットは、この多言語・多文化的なトレンドの延長線上にあり、日本のヒップホップがこの世界的な潮流に合流したことを示している。

 今後は言語や文化の違いを越えて、リスナーを惹きつける楽曲がグローバル時代における真のヒット曲になっていくはずだ。「チーム友達」と「Mamushi」のグローバルヒットによって、日本人アーティストが海外で活躍できる可能性は大きく広がった。千葉雄喜を含む日本のアーティストたちが世界の音楽シーンにどのような影響を与えていくのか。音楽ファンとしては、引き続きシーンの動向に注目していきたい。

※1:https://ciaraatmoonbird.medium.com/cognates-and-collaborations-the-global-appeal-of-mamushi-37cd8916e13d

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