Ado、ボーカルディレクション映像で見せた才能を引き出す力 “人の気持ち”に寄り添った巧みな指導法

メンバーとの接し方に表れるAdoの“人の気持ちを想像する力”

 Adoは自身の活動においてセルフディレクションを基調とし、自らのアーティスト像を作り上げてきた。今年1月25日にはXで、自分が発信する物事、誰かとコラボすること、他アーティストのゲスト出演などはすべて自らが提案していると綴り、SNSでの発言も含めて「1000000%私の意思」と言い表した。その根源にあるのは「コンテンツとして楽しい形を目指していきます」という考え。だからこそ自分自身の意思や興味が沸かないことは、作品や表現には取り入れない。それを常に徹底してきたのだろう。

 2022年2月5日放送のバラエティ番組『マツコ会議』(日本テレビ系)出演時、「どうやったら自分のことを好きになれますかね?」とマツコ・デラックスに相談する様子が印象的だったが、そんなAdoがここまで活動できた理由は、彼女の才能はもちろんのこと、ファンの存在の大きさにほかならない。ラジオ番組『Adoのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)でのリスナーとのコミュニケーションや、自身が出演したバラエティ番組『あちこちオードリー』(2024年7月31日放送回/テレビ東京系)放送時にXでおこなった“実況投稿”などからも、それがよくわかる。そもそも彼女自身も、かつてボカロPらの熱心なファンだった。ファン心理を深く知っているからこそ、その声を大事にしているのではないか。

 ファンが求めていることと真っ直ぐ向き合うこと、それは“人の気持ちを想像する力”にも繋がる。前述したように、レコーディング時のファントムシータに対するAdoの接し方を見ても、メンバーの気持ちをちゃんと察しながらディレクションをおこなっている。これまでの活動で身につけてきた“人の気持ちを想像する力”が、アイドルグループのプロデューサーとして大いに活かされているように映った。そして、そんなAdoの姿勢が、彼女に対するメンバーのさらなるリスペクトにも繋がっているだろう。双方の関係性の良さが、「キミと✕✕✕✕したいだけ」「魔性少女」のレコーディング映像からはひしひしと感じられた。

 大げさな言い方になるが、両動画を観れば誰もが「このグループはきっと良いものになるだろう」と感じるはず。もちろん、Adoが携わっていることで刺激的なクリエイティブにも期待できる。すべての面でファントムシータは、安心感を持って推せるグループになるのではないだろうか。

※1:https://www.youtube.com/watch?v=uxU5Yj8KzWk
※2:https://www.youtube.com/watch?v=bQRhu6eLkNs

Adoが国立競技場で叶えた夢とは何だったのか? 歩んできた物語のすべてを詰め込んだ一夜を振り返る

女性ソロアーティストとして初となる国立競技場でのワンマンライブをAdoが開催。B'z 松本孝弘と初音ミクとのコラボレーションも披…

imase、Ado、紫 今……Z世代はなぜ凡人であることを歌うのか 葛藤の垣間見える楽曲から紐解く

様々な分野においてZ世代への熱視線が送られている近年。彼らに通底しているイズムとして、“自分が凡才であることとの対峙”が挙げられ…

関連記事