櫻坂46、「I want tomorrow to come」MVで描かれる“孤独” 挑戦的な映像表現はグループの新基軸に

櫻坂46『I want tomorrow to come』

 それを踏まえた上で「I want tomorrow to come」のMVを見ていきたい。冒頭で描かれるのは横たわる山下。その左手に顔の見えない誰かが手を重ねている。そのまま暗転し、横たわった山下を中心に右往左往しているメンバーたち。そしてフォーメーションが構成され、メンバーがセンターの山下の目を覆い、再び彼女ひとりにフォーカスされる。この象徴的な一連のシーンからいくつもの意味を見出すことができるが、その姿はまるで山下の存在が誰にも知られていないかのようなある種の孤独を描き出す。

 1番Aメロからサビまでで描かれるのはフォーメーションダンス。ここでも特徴的なのは、やはりセンターである山下以外のメンバーを意図的にフォーカスしていないことだ。接写と引きの映像を使い分けながら臨場感たっぷりに描いており、櫻坂46のダンスの魅力が最大限に発揮されている。その立体的なダンス表現の描かれ方がとても美しく、櫻坂46を新たな角度から切り取っているのだ。的野、山﨑天、森田ひかる、村山美羽の4人はスローで象徴的に描かれているものの、映像全体としては山下を中心としたフォーメーションで進んでいく。

 サビに入ってからも、なお映像の中心となるのは山下。2番Aメロ以降は、藤吉夏鈴や向井のアップも差し込まれ、映像にしっかりと意味付けがなされていく。大サビではメンバー一人ひとりの切なげな表情が映し出され、最後には谷口愛季と井上梨名らが安らぎの表情を浮かべながら抱擁する。静寂のダンスから生まれるメンバーのその表情には、中村の未来に対する不安を抱えながらも明日が来ることを信じたいという想いが詰まっている。

 アイドルグループのMVを見るポイントとしては、映像のクオリティやコンセプト、そしてファンにとってはそれぞれの推しがどの場面で映し出されているのかだろう。アイドルとしては後者がかなり重要な要素となってくるが、こと櫻坂46においては映像のクオリティやコンセプトが重視される傾向にあると言えるだろう。アイドルのMVとしてはかなり挑戦的なMVに映るが、Buddiesから好意的に受け止められているのはそのスタンスの違いも大きいと思う。

 これまでもコンセプチュアルなMVを作り上げてきた櫻坂46だが、「I want tomorrow to come」は彼女たちのまた新たな可能性を引き出してくれるはずだ。いつも期待を超えてくる彼女たちなだけに、本作でもどのような表現を見せてくれるのか、早くも期待で満ちあふれている。

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