日向坂46、初開催『ひなたフェス 2024』徹底レポ 地方創生やサステナビリティを重視した祭典に
個人的に印象に残ったのは、初日に披露された「月と星が踊るMidnight」で卒業を控えた加藤史帆がセンターを務めたこと。長期にわたり齊藤京子とのシンメ(トリー)ポジションに立ってきた加藤が、その齊藤がセンターを担当した楽曲で彼女の位置に立つことにエモーショナルさを感じずにはいられなかった。また、初日に「こんなに好きになっちゃっていいの?」、2日目に「僕なんか」といった翳りのある楽曲でセンターを務めた小坂菜緒。ダイナミックな動きの中にも繊細な表現が求められるこれらの楽曲において、小坂は年齢とともに表情や動きに深みが増しており、グループの顔としてメンバーを牽引する彼女の気概を強く感じることができた。
ちょうど四期生ライブの直後ということもあってか、この2日間のステージで見せた四期生のパフォーマンスや存在感には目を見張るものがあった。多くの楽曲で卒業生のポジションに入り、個々がダンスや表情などで観客を惹きつけたことはもちろん、期別曲でもほかの期よりも1曲多く披露するなど、現在の勢いを存分に体感できた。
また、8月の『TOKYO IDOL FESTIVAL 2024』で初めて期別単独ライブを行った三期生も、これまでのライブ同様に期別パートのトップバッターとして会場の熱量を上げる役割を見事に全う。当初は山口陽世だった煽りも、今では4人それぞれ高い熱量で行っており、ここでも個々の成長が存分に感じられた。二期生は今やグループの軸を作っている重要な存在。一人ひとりがスター級のオーラを放ち、ずっしり響く歌とパフォーマンスを届けてくれる。そんな頼もしい後輩たちがいるからこそ、一期生はハメを外してはっちゃけることができる……現在の日向坂46は絶妙なバランス感で成り立っているのだなと、シンプルなセットリストだからこそ気づかされることも多い。この日初めて日向坂46のステージを観た人にも、こうした魅力が伝わっていることを願っている。
「君しか勝たん」では宮崎のシンボルキャラクター「みやざき犬」(ひぃ、むぅ、かぁ)も迎えてパフォーマンス。「HEY!OHISAMA!」では『ひなたフェス 2024』仕様として、歌詞を〈HEY!MIYAZAKI!〉に変えて歌唱。曲間でも〈MIYAZAKI〉の綴りをコール&レスポンスするなど、特別感を演出する。さらにライブ中盤では佐々木美玲のナレーションにより、宮崎のさまざまなお祭りのパフォーマンスが展開。フェスを通して宮崎を応援してきた日向坂46だが、ここでは宮崎が日向坂46へエールを送る。そんな宮崎の人たちに対して、客席のおひさまも大きな声を上げて一緒に応援する。この温かみこそ『ひなたフェス 2024』の醍醐味ではないか……そんなことを強く実感できたトピックだった。
アンコールでは9月18日リリースの新曲「絶対的第六感」をライブ初披露。スタイリッシュな衣装やハウスダンスを取り入れたパフォーマンスなど、グループとして新たな一歩を示すこの曲を、グループの歴史を振り返る構成の『ひなたフェス 2024』で見せることにも強い意志を感じずにはいられない。シングルでは二度目のセンターとなる正源司陽子、四期生ライブでの堂々とした姿が目に焼きついている藤嶌果歩という日向坂46の未来を担う2人が、グループ初の試みとなるダブルセンターを担当。その頼もしい佇まいはほかの先輩たちにもまったく引けを取らず、クールに徹したダンスの中でキラキラした笑みを見せるなど、彼女たちならではの表現でこの新曲を見事に表現してみせた。今後パフォーマンスを重ねていくことで、どのような進化を遂げるのか注目していきたい。
2日目のアンコールでは、11月から新たな全国ツアーがスタートすることも発表された。ツアーの終着地として選ばれたのは、彼女たちにとって念願であった東京ドーム。昨年12月、キャプテン・佐々木久美の口から「四期生を含む今のメンバーで、もう一度東京ドームに立つ」と新たな目標が告げられてから1年。しかも、前回のドーム公演(2022年3月)はコロナ禍での開催でマスク着用、声出しNGという制限があったため、通常のレギュレーションでは初めてのドーム公演となる。佐々木久美は「この1年、私たちは『ひなたフェス』と東京ドームを夢にしてきたので、その夢が叶うと思うととってもとってもうれしいです」と喜びを伝えると、続けて「ここで終わりではなく、ここ宮崎の地から始まって東京ドームを目指したいと思います」と宣言。最後にセットリストになかった「約束の卵 2020」をプレゼントすると、無数もの花火が夜空を彩り、2日間にわたる『ひなたフェス 2024』を締め括った。
フェスというと、多くの人は野外ロックフェスのような複数アーティストが集ってライブをするような内容をイメージするかもしれないが、日向坂46の『ひなたフェス 2024』は古くから親しまれてきた“お祭り”を彼女たちなりの解釈で表現したものだった。もちろん、これが初回ということで改善点もゼロではない。交通や宿泊などに関するインフラ面もそのひとつだろう。そういった点を踏まえて今後少しずつ形を変えていくこともあるかもしれないが、開催地・宮崎のために何ができるのかという姿勢を貫きながら、地方創生やサステナビリティを重視した彼女たちらしい祭典がこれからも続いていくことを願っている。
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