FELIP×ONE N' ONLY特別対談 音楽と自分、そして夢について――シーンの最先端を歩む意味を語り合う

 フィリピン出身のボーカリスト、ダンサー、プロデューサー、さらにソングライターとしても幅広く活躍するFELIP。5人組ボーイズグループ・SB19のメンバーとソロアーティストの顔を併せ持つ彼が、最新アルバム『7sins』を携え、多くのファンが待ちわびる日本にやってきた。

 今回リアルサウンドでは、日本でいち早くFELIPの活躍に注目しており、自身も海外でのライブ経験をはじめ、国内にとどまらない活動を続ける6人組ダンス&ボーカルグループ・ONE N' ONLYとの対談を企画。FELIPとONE N' ONLY――彼らはなぜ、国境を越えて愛されるのか? 2組の共通点にスポットを当てながら、対談を通してその素顔に迫った。(ONE N' ONLY・NAOYAはスケジュールの都合で欠席)(斉藤碧)

FELIPとONE N' ONLYの邂逅

――まず、お互いの楽曲やパフォーマンスについての印象を教えてください。

FELIP:ONE N' ONLYのMVをいくつか観させていただいたんですけど、一流のアーティストだなって思いましたね。特に「DOMINO」と「YOUNG BLOOD」が好きで、この2曲からはHIPHOP的な要素の強いグループだというのが伝わってきました。僕自身、パフォーマンスを観るのが好きなのでダンスに注目しがちなんですが、一人ひとりの声も特徴的でしたし、素晴らしい作品に仕上がっているなと感じました。

ONE N' ONLY/ “DOMINO” Music Video
ONE N' ONLY/“YOUNG BLOOD” Music Video

HAYATO:僕らは、2021年にFELIPさんがソロ活動をされる前からSB19の活動をチェックしていたんです。だから、グループとソロの楽曲のテイストの違いが興味深かったですね。グループの時は今の世界の音楽シーンのトレンドに近い楽曲が多いと思うんですけど、ソロの楽曲はHIPHOP路線で、最新作『7sins』もめちゃくちゃかっこよかったです。

TETTA:「envy」のMV、かっこよかったよね!

HAYATO:そうそう! 最初の馬に乗ってるシーンから、一気に惹きつけられました。

FELIP - 7sins - envy Official Music Video

REI:僕はSB19の「GENTO」もお気に入りですね。SB19の「GENTO」と「MAPA」が今年「THE FIRST TAKE」で公開されましたが、昨年、EIKUとHAYATOは一足先に「GENTO」のダンスをTikTokに上げてるんですよ。

FELIP:そうなんですか!? (EIKUとHAYATOに向けて)あとで一緒に踊りましょう(笑)。

EIKU・HAYATO:ぜひ!

SB19 'GENTO' Music Video

――おふたりはどういう経緯で「GENTO」と出会ったのでしょうか?

EIKU:僕らが「GENTO」に出会った時には、すでにその魅力が世界中に広まっていたんです。それを聴いて、曲調も僕が好きなHIPHOPでしたし、振りもかっこよかったので、ぜひ踊りたいなと思いました。

KENSHIN:世界中で「GENTO」が注目されてるのは知ってたけど、ふたりが踊ったのもかなり早くなかった?

REI:早かったと思う。いつも、いち早くHAYATOが見つけてくるんですよ。これから世界でもっとヒットしそうな楽曲を探す能力に長けていて。

――昨年8月頃からK-POPのアイドルの方々を中心に続々と「GENTO」のダンス動画を上げていますが、おふたりのダンス動画は6月に公開されたようですね(「GENTO」リリースは2023年5月30日)。

KENSHIN:おお~! 先取りしてる!

HAYATO:日本のアーティストのなかでいち早く「GENTO」を踊ったのは、僕らです(笑)!

FELIP:みなさんが日本で「GENTO」を広めてくれたんですね。ありがとう!

EIKU:そういう経緯もあったので、今回お会いできて嬉しいです。

FELIP:僕もお会いできて光栄です。言葉や住んでいる国は違いますが、境遇もそうですし、音楽に真剣に向き合っているところも似ているので、この機会にいろいろな共通点を探すことができたらいいなと思っています。

FELIP

――2組の大きな共通点といえば、国内外で活躍していることと、グループと個人で活動していることですが、音楽性の変遷も似ているなと感じました。どちらもグループが始動した当初の楽曲はどちらかというとK-POP色が強く、そこから徐々に自分たちらしい音楽を確立していったと思うので。その点についてはいかがですか?

HAYATO:たしかに、僕らはグループの立ち上げ当初からJUNEさん(ONE N' ONLYのサウンドプロデュースを担当/韓国出身)のもとで楽曲を制作してきたという背景があるので、初期の楽曲はK-POPの要素が強めに入っていたと思います。歌う時の発音もJUNEさんから基礎を学んだので、あえて日本語を崩して英語っぽく歌ったり、息を多めに含んだK-POP特有の発声をしたりと、K-POPや洋楽から着想を得たアプローチが多かったなと思います。でも、今や世界的に評価されているK-POPに対してリスペクトしつつも、ただのオマージュにならないように、そこにいかに自分らしさを入れるかを模索し続けてきて。それは今でも課題なんですけど、最近はラテンの要素を強めに取り入れることで、ワンエン独自の音楽性を確立してきたんじゃないかなと感じています。

EIKU:だから、はじめの頃はワンエンの音楽性を“JK-POP”と表現していたんですけど、最近はジャパンとラテンを掛け合わせた“ジャティンポップ”を掲げて活動しています。

FELIP:ONE N' ONLYは、ラテンサウンドが似合いますよね。なかにはチルっぽい曲もあるけど、アグレッシブな曲調は僕の音楽性と似ていると思うし。僕も“自分らしさ”からクリエイティビティが生まれると思っているので、みなさんが“自分らしさ”を追求しながら楽曲制作する姿勢にも共感しました。ただ、僕は日本語があまりわからないから、サウンドや語感を楽しんでいて、みなさんがどういう歌詞を歌っているのか、本当の意味では理解できていないんですよね。歌詞もちゃんと理解したいんだけど……。

TETTA:僕らもそうですよ!

――この取材中、REIくんは積極的に英語で話しかけてますけど、ほかのメンバーは……?

TETTA:(肩をすくめ、両手の掌を上に向けて「わからない」という表情)

HAYATO:僕もまだまだ勉強中です(笑)。

FELIP:じゃあ、みんなで“Learn Japanese & English”だ!

全員:あははははは!

FELIP:ONE N' ONLYのみなさんはすごく耳がいいと思うので、きっとすぐに覚えられると思いますよ。英語だけじゃなくて、タガログ語(フィリピンの言語のひとつ)もね(笑)。

ONE N' ONLY

――日本人のファンのなかには、FELIPさんとコミュニケーションをとるために、タガログ語を覚えてくる方もいるんですか?

FELIP:いらっしゃいますよ。日本で生まれ育った方が、他国の言語を習得するのは簡単なことではないと思うんです。それは英語にしても、タガログ語にしても。だからこそ、僕と話すために、僕の音楽を理解するために努力してくれることが嬉しいし、ファンの方の努力が自分の原動力になっています。それと、日本のファンの方は、一度好きなアーティストができたら一途に応援しますよね。浮気はしないでしょう(笑)? 僕はその一途さを日本人らしい魅力だなと感じています。

――SWAG(ONE N' ONLYのファンの呼称)も、国内外ともに熱心な方が多い印象があります。

KENSHIN:そうですね。「ワンエンの曲をきっかけにポルトガル語の勉強を始めました!」という日本のファンの方がいらっしゃったりします。僕らの場合、もともと日本語で発表した「L.O.C.A」という楽曲のポルトガル語バージョンをリリースしたりとか、ポルトガル語や英語を織り交ぜた楽曲も多いんです。

FELIP:ああ、なるほど! 南米での人気が高いからこそ、ラテン調の曲が多かったんですね。

KENSHIN:そうなんです。「L.O.C.A」が南米を中心にバズって、2022年にはブラジルで海外初のライブを開催しました。去年は初のラテンツアーにも行ってきました。

FELIP:南米の方からしたら、自分の国の言語でリリースしてくれたり、実際にライブをしにきてくれるのは、すごく嬉しいことでしょうね。ファンの方が歩み寄るだけでなく、アーティスト側からも歩み寄る。そうすることで、ファンの方もより愛情を注いでくれると思うし、素敵な関係だなと思います。

HAYATO:僕らのファンのなかには、フィリピンから応援してくれている方々もいて。オンラインでファンミーティングをした時は、日本語で話しかけてくれた方もいましたね。しかも、日本語がわからない他のフィリピンのSWAGのために、僕らの発言を全部タガログ語に翻訳するというSNSも運営してくれていて! 僕らのTikTokはフィリピンでも何度かバズったことがあるんですけど、「このダンス、今フィリピンでバズってるからやったほうがいいよ」というアドバイスをくれるんです(笑)。

FELIP:すごい!

HAYATO:だから、いつかはフィリピンでライブをしたいなと思っていて。今回の対談がその一歩になるんじゃないかなとワクワクしています。

FELIP:もしフィリピンでライブをする機会があったら、僕もぜひ呼んでくださいね。会場に駆け付けますから!

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