リアルサウンド連載「From Editors」第70回:『ウルトラマンアーク』が教えてくれる“想像力”の大切さ 王道と斬新の見事な融合!

 「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。

 第70回は、特撮とメタルが好きな信太が担当します。

『アーク』は昭和から続くアイデアリレーの美しき最新形

 夏。今年も新しいウルトラマンが盛り上がる季節がやってきました! 7月6日から放送スタートした最新シリーズ『ウルトラマンアーク』。これまた自信を持ってオススメしたいめちゃくちゃ面白い作品です。

 近年のシリーズの中でも、とりわけシンプルなデザインや構えのポージング、キラキラと輝くタイトルバックに『帰ってきたウルトラマン』(1971年)を、必殺の光線技(アークファイナライズ)やバリアを張るモーションには『ウルトラマンA』へのオマージュを感じさせるなど、昭和ウルトラマン好きにはたまらない要素が詰まった『ウルトラマンアーク』。これについてメイン監督の辻本貴則さんは「初代ウルトラマンやウルトラセブンのオマージュは今まであったけど、新マン(『帰ってきたウルトラマン』)やウルトラマンAは案外少ないし、今後も『やりたい!』って言う監督は出てこない気がして。もう『俺が行く!』」(※1)と語っていますが、“盛りに盛っていく”スタイルでどんどんゴージャスになっていったここ10年ほどのニュージェネレーションシリーズと差別化され、引き算の美学で楽しませてくれるところがまず素晴らしい! お手本のように「シュワッチ!」と綺麗に言ってくれるところも最高です。思えば、辻本監督は『ウルトラマンZ』(2020年)第19話「最後の勇者」で、ゲスト登場したウルトラマンAをとても魅力的に撮っていたので、ウルトラマンAにもオマージュを捧げる『アーク』で辻本監督がメインを担うのは必然だったのかもしれません。

『ウルトラマンアーク』第1話(新)予告「未来へ駆ける円弧(アーク)」 -公式配信-

 前作『ウルトラマンブレーザー』(2023年)が壮大な謎に迫っていくシリアスなSF作品だったのに対し、『アーク』はどこかアットホームで、人情に泣かされる話が多い印象です。また、気を衒った設定以上に、1話ごとに出てくる怪獣たち(しかも「これぞ日本の怪獣!」と言いたくなる王道デザインばかり)の豊かな個性がストーリーの軸になっていて、「次はどんな怪獣が出てくるんだろう?」とここまでワクワクできる作品は久しぶりかもしれません。

 ……そう書くと正統派なウルトラマンっぽい感じもしますが、もちろんそれだけではありません。とにかく度肝を抜かれたのは第1話「未来へ駆ける円弧」。3分間の戦闘シーンを全てワンカット演出で見せ切っていて、その“時間の使い方”にかなり感動しました。スマホ撮影から俯瞰へとダイナミックに切り替わるカメラワーク、地上戦から空中戦への移行、バリアを武器にするユニークな戦闘シーンから必殺光線を打つまでの鮮やかな流れ、30歳の筆者でも思わず真似したくなるアークアイソードでのカッコよすぎる一刀両断。ある種マンネリ化しやすい戦闘シーンを、格闘メインでこれだけ鮮やかに描けるのか! といい意味でショックを受けました。この戦闘シーンのためだけでも、騙されたと思ってぜひ第1話を観てほしいです!

 変身方法も斬新。ウルトラマンアークが主人公・飛世ユウマ(戸塚有輝)を後ろから抱きしめる変身プロセス“ウルトラハグ”が第1話から話題になりました。人間とウルトラマンが一体になる瞬間は今まで様々な形で表現されてきましたが、ハグされるのは初めてかも。第3話「想像力を解き放て!」で明かされる、ユウマ自身の壮絶な過去のトラウマを知ってから見ると、ウルトラハグってなんて温かい変身方法なんだろう……と、思わず涙が出そうになります。個人的には、シリーズ史上最も斬新な変身方法=ウルトラタッチ(詳細はググってください)を生み出した『ウルトラマンA』へのリスペクトをここにも感じましたが、辻本監督曰く、ウルトラハグ発想のきっかけは、『シン・ウルトラマン』(2022年)でウルトラマンの手が人間を掴む変身カットを観たことだったのだとか(※2)。まさかのアイデアリレー、面白すぎる! しかも「初めて手にした変身アイテムを、なんですぐ使えるんだ!」という定番のツッコミに対しても意外なアンサーが用意されていて、そこも『アーク』のユニークなポイントです。

『ウルトラマンアーク』予告 第3話「想像力を解き放て!」 -公式配信-

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