星街すいせい「ビビデバ」は現代のシンデレラソングに VTuber屈指の歌姫として広がる存在感

星街すいせい、歌姫として広がる存在感

 とはいえこの楽曲の最大の魅力となっているのは、現代らしい共感を呼ぶ歌詞だろう。歌詞の面で全体のテーマになっているのは、〈ガラスシューズ〉や〈馬車〉など、全編にちりばめられた『シンデレラ』のモチーフ。だが、この曲のシンデレラは原作とは随分様子が違う。それが最も表れているのが、本来は妖精がシンデレラにかけるはずだった魔法の言葉「Bibbidi-Bobbidi-Boo」(夢が叶うの意/歌詞での表記は〈BIBBIDI BOBBIDI BOOWA〉)を、自分自身で唱えるかのようなサビの歌詞だ。

 いじわるな継母たちにこき使われていたところ、妖精に人柄を認められて舞踏会へと赴いた原作のシンデレラとは対照的に、「ビビデバ」の主人公は自分自身に魔法をかけて、自分で馬車に乗り、自分の人生を自由に歩んでいく。その様子はまるで、日々社会の荒波にもまれながらも奮闘する女性たち、あるいは現代の人々を鼓舞するような雰囲気で、「自分の人生は自分で掴み取る」というメッセージが伝わってくるようだ。

ビビデバ / 星街すいせい(official)

 彼女のリスナーならご存知の通り、これは代表曲のひとつ「Stellar Stellar」の歌詞〈そうだ僕がずっとなりたかったのは/待ってるシンデレラじゃないさ/迎えに行く王子様だ〉などを筆頭に、形を変えて様々な楽曲で描かれてきた、バーチャルアイドル・星街すいせいの根幹をなす価値観のひとつ。個人勢を経てホロライブに加入した叩き上げでもある彼女のキャリアも相まって、歌詞に説得力が生まれている。そうした魅力は2次元と3次元をつないで展開される「ビビデバ」のMVにも反映されていて、ここにもシンデレラのモチーフが登場するため、未見の方はぜひ観ていただきたい。

 ビヨンセのような欧米のディーヴァたちやK-POPなどのガールクラッシュ的な価値観にも通じる強い女性像を描いた「現代のシンデレラソング」であることが、「ビビデバ」がVTuber界隈を超えて多くの人々の共感を得た最大の理由なのだろう。

 今年7月、星街は大谷翔平選手らが所属するロサンゼルス・ドジャースとホロライブとのコラボレーション企画に、同事務所のがうる・ぐらや兎田ぺこらとともに参加。筆者は残念ながら現地には赴けなかったが、会場のドジャー・スタジアムにはグッズを求めて現地のファンによる長蛇の列ができていたという。また、8月24〜25日には同じ事務所の仲間である英語圏向けのグループ・ホロライブEnglishの2度目の全体ライブ『hololive English 2nd Concert -Breaking Dimensions-』がニューヨーク・ブルックリンの歴史ある建造物を改修したキングスシアターで開催予定。現地のフェスイベント出演やコラボカフェを筆頭にしたオフラインイベントも多種多様な国や地域で開催されるなど、VTuberの活動はますます世界中に広がりつつある。

 その流れを牽引するホロライブの、もしくはVTuber界屈指の歌姫として、星街すいせいの活躍もより様々な場所に広がっていきそうだ。

■リリース情報
星街すいせい『ビビデバ』
2024年8月7日(水)発売
購入リンク:https://hoshimachisuisei.lnk.to/20240807_BIBBIDIBA_PKG
・完全生産限定盤:7,300円+税
CD+BD+「ビビデバ」オリジナルアクリルスタンド+「ビビデバ」ミュージックビデオシーンフィルムカード(全4種ランダム封入)+豪華仕様パッケージ
・通常盤:1,800円+税
CD+BD

<CD収録内容>
1. ビビデバ
2. ビビデバ - BloodPop® Remix
3. ビビデバ(Instrumental)
<BD収録内容>
「ビビデバ」ミュージックビデオ

ホロライブプロダクション 公式サイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる