天籠りのん×草野華余子、“何もない場所”から生み出す熱量 高難度の初オリジナル曲に至るまで

「この曲が自分の居場所を守る武器になればいい」(草野)

――ちなみに歌詞の印象はいかがでしたか?

天籠:とにかくすごいという印象で、マネージャーさんにも「天籠さんにこんなこと歌わせて大丈夫ですか?」と心配されてしまいました(笑)。でも、内容は強烈なのですが、メロディにすごく馴染んでいるので、一度聴いたらスッと入ってくるところがあって。ちゃんと強烈な感じを出せるように歌いたいなと思いました。

――天籠さん的にはNGワードはありませんでしたか?

天籠:はい、私はワルなんで(笑)。

草野:タイトルの「虚無虚無です。」もそうですし、歌詞には〈鬱陶しいわ〉とか〈期待してよかったこたぁないか〉みたいにネガティブな単語が全面に並んでいるんですけど、その上で「今ここでは死にきれない!」「生きたい!」という感情の込められた楽曲なので、「虚無です」と言いながらも、「自分の歌を放ち切って、絶対にこの歌をたぎらせた状態で生きていくぞ!」っていう強いメッセージ性があるんですよね。その意味でも、私がプロデューサーとして目指していた楽曲ができたように思います。

――その目指していたものというのは?

草野:りのんちゃんは、例えばイス取りゲームで誰かを押しのけて座るタイプの人ではないと思うんですね。もちろん強気な一面はあると思うけど、調和を重んじられる人なので。私も「誰かを押しのけることはしないけど、一番早くイスに座れるように誰よりも努力してやる!」と思って活動してきた人間なので、りのんちゃんには「絶対に負けたくない」という感情は表に出していいということを伝えたくて。それは生き残るために必要なことなんです。きっと彼女にとって「歌い続けられること」以上に大事なものはないと思うし、私は今回りのんちゃんを応援することしか考えていなかったので、今はVシンガーがごまんといる中で、この楽曲が自分の居場所を守ってあげられるような武器になればいいなと思って。その意味では、何か自分の人生を変えたいと思っている人にもぜひ聴いてほしいです。

天籠:……今、華余子さんのお話を聞いてすごく感動してしまいました。「私、伝えたいメッセージが何もないんですけど……」みたいなところから始まったにもかかわらず、完成してみたら自分にとってもすごく共感できる楽曲になって。表現面でも「ギリギリできたかできないか?」くらいのものをやり切れたので、この先、迷ったときはこの“虚無虚無マインド”を思い出して頑張っていきたいです。

草野:「何もない」ところからでも沸き上がるものというのは結構あるので。何を歌っていいかわからないのであれば、それを歌えばいいし、何も書きこまれていない地図ならこれから何でも書きこめるし、まだ色がついていないのであれば虹色にだってなれる。未来に向かってポジティブに捉える方法はいくらでもあるんですよね。「CHA-LA HEAD-CHA-LA」(影山ヒロノブが歌うアニメ『ドラゴンボールZ』のオープニングテーマ)でも〈頭カラッポの方が 夢詰め込める〉と歌っているわけですし。

――たしかに。名フレーズですよね。

草野:自分の弱点を知ることで強くなるじゃないですけど、そういうところをポジティブに変換していくのが我々クリエイターやミュージシャンの役割でもあるということは、今回、りのんちゃんにも伝えたかったし、田淵さんとebaくんと私のチームとしても、この曲を聴いてくれる皆さんにも伝えたいところだったので、りのんちゃんがそれを受け取って表現してくれてよかったです。

「いつかバラードも作ってもらえるように頑張りたい」(天籠)

――その意味でこの楽曲は「虚無」というテーマ性も含めて、天籠さんだからこそ説得力を持って表現できた楽曲と言えそうですね。最後に、草野さんが天籠さんの今後の活動に期待することをお聞かせください。

草野:たぶんこの曲はVEEのオリジナル曲の中でも最難関曲だと思うので、全員ぶっ倒すつもりで歌い続けてほしいですし、りのんちゃんはもっとわがままになってもいいと思うんですよ。VEEという“箱”の一員ではあるけど、「自分が手伝わせてやっている」くらいの気持ちでいればいいと思うし……こんなこと言うと誰かに怒られそうですけど(笑)。

天籠:あはは(笑)。

草野:でも、タレントがいてこその箱だから。りのんちゃんは「喧嘩上等!」と言いつつ、たまに弱気になってしまうところがあって。それはきっとファンの人も気づいていて、「りのん、やっぱいいヤツだなあ」ってみんな思っているだろうけど(笑)。

天籠:なんか恥ずかしい(笑)。

草野:でも、みんなあなたについていきたいと思って応援しているので。驕り高ぶったり調子に乗るのはよくないけど、もっと自分の思っていること、やりたいことを解放して、自由に活動の場を広げていってほしいなと思います。

天籠:ありがとうございます!

――天籠さんは草野さんとまたご一緒できるとしたら、やってみたいことはありますか?

天籠:もちろんこれからも楽曲提供していただけるように頑張っていきたいですし、私はかっこいい楽曲も大好きなんですけど、華余子さんが書かれるバラードも好きで。VEEではチャンネル登録者数が1万人を達成すると3Dモデル化してもらえるのですが、それを達成する瞬間の歌枠配信(※1)で「シルシ」(LiSA/草野が作曲を担当)を歌って、みんなと一緒に大号泣した思い出があって。

草野:そうなんだ(笑)。

天籠:それくらい華余子さんの書く曲が大好きなので、いつかバラードも作ってもらえるように頑張りたいです。

草野:次のご褒美も、その次のご褒美も達成していけば、私はバラードもポップスも書けるので、発注をお待ちしております!

天籠:頑張ります!

――ちなみにお二人の共通点として「麻雀好き」というのもありますよね。天籠さんは「雀魂」のゲーム配信をよくされていて。

天籠:麻雀、大好きです!

草野:おおっ! 私はフリー雀荘でおっさんと打っていたくらいなので。

天籠:かっこいい(笑)。

――麻雀をテーマにした楽曲を提供するというのもおもしろそうですね。

草野:私、「人間無双」という曲があるんですよ。ダメ人間ばかりでも集まったら国士無双になるという曲で。20代のときに書いたんですけど、あの頃は若かったのに背伸びしたことばかり歌っていたので、今の方が歌ったとき説得力あるかも(笑)。じゃあ次は麻雀の曲を書きますか。

天籠:わー! ぜひお願いします!

※1:https://www.youtube.com/watch?v=IYvTPaerZQI

天籠りのん「虚無虚無です。」

◾️配信リリース情報
天籠りのん「虚無虚無です。」
2024年7月31日(水)リリース
配信:https://orcd.co/kyomukyomudesu

Words : 田淵智也
Music : 草野華余子
Arrangement : eba
Sound Produced by 草野華余子

VEE 公式サイト

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