asmi、人生初の失恋から始まった物語 アルバム『リボン』と“かわいい”を貫く理由を語り尽くす

今なら胸を張ってみんなを明るいところへ連れていける自信がある

――応援してくれる人や愛をくれる人の“光”を星に喩えているような「あのね、」は、どういう想いから書いた曲だと言えますか。

asmi:『bond』(2020年リリース/インディーズ1stアルバム)を書いたあたりとか20歳前後の時、「死にたい」という気持ちが時々まわってくるというか、そういう状況になるタームがあったんです。でも、応援してくれる人、いちばん身近におる家族、友達とかの声に私はすごく救われて、最近は「死にたい」と思わなくなって。この曲を書いたのは2年くらい前なんです。この曲をみんなに歌うことで、今死にたいと思っていたり、すごく苦しい想いをしてたり、「何も信じられないわ」と思ってる人たちに、世界はもっと綺麗だよということを伝えられたらなと思って。AメロとBメロは、私の弱い部分とか「もう何も信じられない」という気持ちを書いていて、サビは「これは“綺麗”って思っていいんだよ、合ってるよ」と語りかける気持ちで作りました。

――2年前に書いていたとはいえ、時間をかけてあたためて、自信を持てるようになった今のasmiさんがこの曲を出すことに、とても意味がありますよね。

asmi:曲ができてすぐに出したい気持ちもあったけど、もしあのタイミングで出していたら、今より説得力がなかったと思います。私、2年くらい前までは「人生経験もまだないから、ラブソング以外は書けない」と言ってたと思うんですけど、今なら胸を張ってみんなを明るいところへ連れていける自信がある。だから出せたし、今この曲をみんなの前で歌うことにはすごく意味があるなと思います。

――20歳前後の頃、心の奥でどういう動きがあって「死にたい」と思う瞬間が湧いていたのだと思いますか。

asmi:その時は、まだ「認められたい」「もっと期待されたい」とかがあったのかな。周りの人のおかげで「死にたい」と思わなくて済むようになったことが、私のなかではすごく大きいことです。maeshima(soshi)さんが作ってくれたトラックを持って近所の河川敷に行って、この曲を書いたことを覚えてます。

――サビの「星を綺麗と思っていいんだよ」という気持ちとか〈綺麗なものをさ 見られたことよりきっともっと/綺麗ねと言える人がいること/それが幸せ〉というラインを、当時は想像や理想として書いているところも大きかった?

asmi:そういえばそうやったかも。今ほどはっきりしていないけど、たしかな光みたいなものをなんとか文字に起こして歌にしていた気がしますね。サビでは「振り注ぐ光」みたいなものを言葉にしていたんですけど、自分が書いた歌詞に救われていたなと思います。

――『リボン』は、「認められたい」というところから、認めてもらえて自信も持てて「恩返しをしたい」という気持ちになれた、その成長過程が見える一枚ということですよね。

asmi:うん、ちゃんと成長できたということですよね。1曲目から流れで聴いていくと物語が繋がっている曲順がお気に入りなんです。「叶わない」から始まって、「ラヴィウス」まで恋をする流れがあって、「ドキメキダイアリー」「My Life」「開青」で人生にエンジンをかける気持ちを歌って、「boyFriend」「PAKU」「恋」「BLACK COFFEE」らへんで初々しい恋心から危うい恋までいろんな恋もして、「世間様」で「もう何も信じられない、信じられるのは私だけ」みたいになって、「あのね、」で「何が綺麗なものかもわからない」「汚いものばっかりでしょう?」という気持ちに光が差し込んできて、「UTAGE」で「みんながいるから私は頑張れている、生きているんだ」と開放的になれる――という物語になっていると思います。

――それはまさに、今日話してくれたasmiさんのこの5年間の人生の流れそのものでもありますよね。

asmi:本当にそうですね。物語が続いてるように聴こえるこの曲順は最高やって思ってたんですけど、音楽を始めてからの5年間を表しているんや。今気づきました(笑)。

――⌘ハイノミさんが提供した「ラヴィウス」は、歌唱法的にも新しい扉を開いた一曲だと思いました。

asmi:「ドキメキダイアリー」「BLACK COFFEE」「世間様」とかもそうやけど、ライブで盛り上がる曲がほしくて⌘ハイノミさんにお願いしました。この13曲のなかでレコーディングをしていちばん「今日の歌おもろかったわ~」ってなったのが「ラヴィウス」かもしれないです。サビの〈ヒロインにはなれないみたい〉が裏声なんですよね。それが私にとっては新しいチャレンジでした。サビはドーン!って行くものだと思い込んでるところがあったから、裏声でやってみて「これがいいやん」ってなったのが新鮮でした。

ラヴィウス feat. ⌘ハイノミ - asmi (Official Music Video)

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