SUPER BEAVER 柳沢亮太、人生の切実さを包み隠さない作詞 WEST.、生田絵梨花ら提供曲にも一貫性
柳沢は、SUPER BEAVERのメインソングライターでありながら、並行して他のアーティストへの楽曲提供を行っていて、もちろん、それらの楽曲においても彼の言葉の力は一貫した輝きを放っている。例えば柳沢は、WEST.に計4曲を提供していて、その中でも特に、2021年リリースの「僕らの理由」は、グループにとって大切な代表曲の一つになっている。
〈正解のない人生に 盛大な拍手が鳴った/手探りの日々に出会った 手応えはあなたの笑顔で/だからこそ僕は言うよ 何度も救われてるって/あなたが自分自身を もし見失いかけても/あなたという人の意味は 今日も僕が感じているから/怯まないで 比べないで あなたは今日もあなたのままでいいんだ〉(「僕らの理由」)
先ほど、SUPER BEAVERのライブ体験について、「自分で自分自身のことを奮い立たせるよう」と書いたが、そのことに通じる忘れられない瞬間がある。昨年、WEST.が『SUMMER SONIC 2023』に出演(出演時のグループ名はジャニーズWEST)して「僕らの理由」を歌った際、間奏で、重岡大毅は「一緒に歌いたいよ。一緒に歌いたいっていうか、自分たちに歌ってるような感じで一緒に歌おうぜ!」と叫んだ。その時、SUPER BEAVERとWEST.が大切にしている音楽観、ライブ観が非常に近いものであることが伝わってきて、柳沢が彼らに楽曲を提供した必然性を強く感じたのをよく覚えている。なお今年の4月、柳沢は、CDデビュー10周年を迎えたWEST.の記念すべきシングル曲として「ハート」を提供した。
〈きっと いつまでも どこまでも ずっと/戦っていくんだろう 張り合っていくんだろう 自分と/諦めたい夢なんてないよな/涙って僕らの 正直さなんだよ/誰にも止められやしない 勝ち越せたらいい/好機を演出するのは 「信じる」をやめないハート〉(「ハート」)
この曲には、SUPER BEAVERの数々の楽曲と同じように、自らの生き方に対する切実な願いや覚悟が凝縮されていて、次の5年、10年を目指して走り出したWEST.の新しいテーマソングとしての眩い輝きを放っている。今回、デビュー10周年という大切なタイミングでオファーがあったことからも、WEST.が柳沢に寄せる信頼の厚さが伝わってくるし、今後両者のタッグが次々と実現する未来をどうしても期待してしまう。
4月にリリースされた生田絵梨花の1st EP『capriccioso』には、柳沢が提供した「だからね」が収録されている。このEPは、乃木坂46の1期生として、2011年の結成から2021年の卒業に至るまでアイドルとしてのキャリアを築いてきた生田による、ソロアーティストとしてのデビュー作だ。生田は、かねてよりSUPER BEAVERの音楽に背中を押されてきたことを明言していて、この楽曲は、生田たっての希望によって実現したもの。同曲について、柳沢はX(旧Twitter)で、「『だからね』という楽曲を書きました。多少なりとも、彼女の“心根”みたいな部分を歌にするお手伝いが出来ていたら幸いです」(※1)と投稿していた。また、生田は、この曲について、「SUPER BEAVERさんの曲は、心のド真ん中にぶつかってきてくれる。自分は本当はこう思ってるのかな、こうしたいんだろうな、というのが見えてくるんですよね」と語っている(※2)。
〈だからね/私は私のできること/あなたはあなたの得意なことを/悩んでも 迷っても できることが/今やるべきことだと そう思えたの〉(「だからね」)
その言葉の通り、この曲は、悩み、迷いながらも、新しい一歩を踏み出そうとする今の生田の“心根”と深くリンクしていて、自らを奮い立たせるように歌われる歌声がとてもエモーショナルな響きを放っている(特にMV冒頭約1分のアカペラは圧巻)。生田と言えばピアノ弾き語りのスタイルを思い浮かべる人が多いと思うが、この曲との出会いによって彼女はソロアーティストとしての新しい扉を開いたと言えると思う。
最後に、昨年、柳沢がポルノグラフィティの岡野昭仁に提供した「指針」について。
〈変わらずありたい心も 変わるべきだって焦りも/投げやりな がむしゃらじゃなくて いちいち向き合ってみないかい〉
〈切なさと目を合わせたら 悔しいをちゃんと考えたら/忘れないよって手を振って 未来のこと想えるのさ/引きずりながら歩むんじゃなくて/大事に抱えられたなら/埋もれても見つけだせるもの/いつかの涙も指針なんだろう〉(「指針」)
この曲にも同じように、焦りや悔しさから目を背けることなく生きようとする志が詰まっていて、その愚直とも言える生き様に強く心を震わせられてしまう。また、これはWEST.や生田への提供曲にも通じる話であるが、いつかSUPER BEAVERのセルフカバーも聴いてみたい。そう思えるのは、やはり、柳沢の言葉の力が一貫した輝きを放っているからであり、こうして振り返ってみたことで、改めて、彼の作家性が浮き彫りになったように思う。今後のSUPER BEAVERの新曲はもちろん、彼が様々なアーティストへ提供する楽曲にも引き続き注目していきたい。
※1:https://twitter.com/yayayayayanagi/status/1778001130276126916
※2:https://natalie.mu/music/pp/ikutaerika
SUPER BEAVER、Mrs. GREEN APPLE、羊文学、SHE'S……苦悩や葛藤に寄り添う青春/エールソング
2023年には悩みもがく人の心に寄り添い、内から勇気づけるような青春ソング/エールソングが様々なバンドから発表された。SUPER…
SUPER BEAVER 渋谷龍太はなぜ多方面から愛される? 長渕剛や木村拓哉らも魅了するロックミュージシャンとしての技量と求心力
魅力的なボーカリストは世にたくさんいるが、特に存在感を強めているのがSUPER BEAVERのボーカル・渋谷龍太である。UVER…