トンボコープ、数多のファンと夢を引き連れて次のステージへ 結成2年初ワンマン公演を観て
「先日僕たちは結成2周年を迎えることができました。この2年間、やれることは全部やってきたつもりです。でも、やりたいことはまだまだたくさんあります。進化し続けていきたい。変わり続けていきたい。これはトンボコープとしての姿勢の示し方だと思っています」
本編最後の楽曲を前に、雪村りん(Vo/Gt)は力強くそう宣言し、「恋はいたずらに」という新曲を歌った。トンボコープ、初のワンマンライブ『BUTTERFLY EFFECT』。LIQUIDROOMを埋めた満員のオーディエンスを前に、彼らはバンドの眼前に広がる果てしない未来を表現してみせた。記念すべき1日、しかしそれは彼らにとっては間違いなく、新たな「始まり」の1日だった。
開演を待つ場内に、「ぐーぐー」といびきの音が響き渡る。そうして披露された1曲目は、本編のラストがそうだったように、こちらも新曲である「鼾」だった。ステージに張られた幕に、ギターを弾きながら歌う雪村のシルエットが浮かび上がる。落ち着いたリズムと語りかけるようなメロディがじわじわとフロアに広がり、ライブは始まっていった。半ば呆気に取られるようなオーディエンスを前に、幕を落としてここですかさず代表曲「ストーリーモンスター」を投下。瞬く間に手拍子が巻き起こり、「みんな、歌えるか!」という雪村に応えて声が上がった。それを見てでかそ(Ba)も林龍之介(Dr)も満面の笑みを浮かべている。
「スーパーギター!」と呼ばれてそらサンダー(Gt)がアウトロのギターソロを披露すると、LIQUIDROOM中から大きな歓声が生まれた。軽やかなリズムが弾む「くだらないこと」を挟んで「独裁者」ではハンズクラップが最高の一体感を醸し出し、「風の噂」ではみんなで一緒にジャンプ。雪村も飛び跳ねながら笑顔を浮かべている。そしてでかそのベースと雪村のギターから「信号花火」へ。メンバー4人とも、ここで音を奏でていることを心から楽しんでいることが、その表情や素振りから伝わってくる。
「このメンバーで結成してから初めて書いた曲」という紹介とともに演奏されたのは「サンポリズム」。ジャキジャキとしたギターのストローク、雪村の歌にバンドのアンサンブルが覆い被さってくるような展開が、まさにバンドの始まりの姿を描き出すようだ。そんな中、おもむろに「次の曲は動画撮影OKにします」と雪村が告げる。
「辛いことや悲しいことを笑い話として消化し切るまでにしんどいこともあると思う。そういうときに、今あなたが撮っている動画を見返して、ちょっとでも楽になればいいなと思ってます」
そんな言葉とともに歌われたのは「夢の10年後」。一言一言をそっと差し出すように丁寧に歌う雪村に、無数のスマホが向けられる。きっとそこで撮影された動画たちは、この日集まった一人ひとりにとってかけがえのない思い出になったはずだ。もちろん最初は4人だけで始まったトンボコープだが、こうして多くの人と濃密なコミュニケーションを重ね、関係性を築き上げることで、バンドはますます強く、大きなものへと成長してきたのだろう。
そんな「夢の10年後」を終えると、場内には再びSEが流れ始める。一度ステージから退場したメンバーが衣装を着替えて戻ってきた。最初は白や黒を基調とした服を着ていたが、帰ってきた彼らはそれぞれにカラフルな服を着こなしている。この、ライブ途中で衣装をチェンジするというのは林のアイディアだったそうだ。最初はモノトーンだった4人が、自分たちの音楽を聴いてくれる人々と出会い、カラフルに色づいていくーーそんなメッセージが込められていたのだという。そんなメンバーの思いに応えるように、LIQUIDROOMはここからどんどん一体感とボルテージを高めていった。