3SET-BOB、バンドのこれまでとこれからを繋ぐ初のEP 心機一転の中で見つけた“やりたいこと”
メロディックパンクやヒップホップを掛け合わせながら、爆音の演奏とポップなメロディで全国のライブハウスを沸かせている3人組バンド 3SET-BOB。その1st EP『ANTHEM』(3月20日リリース)は、彼ら自身にとって「今までとこれからを繋ぐ集大成」だと言えるほど大きな手応えを与える快作となった。なぜこのタイミングで心機一転をはかり、それだけの作品を作ることができたのか。YUSUKE(Vo/Gt)、KAI(Ba/Cho)、RUKA(Dr/Cho)の3人にじっくり話を聞いた。(編集部)
初のEP『ANTHEM』は僕らにとっての1st作品くらいの気持ち
――今作は3SET-BOBにとって初のEPですが、今回EPという形を取ったのはどうしてだったのでしょうか?
YUSUKE:今までいろいろやってきたんですが、EPって出したことないなと思って。心機一転という意味も込めて、「1st」ってつけたかったんです。
――「心機一転」とおっしゃいましたが、バンドとしては何かの節目を感じていたり、何かを変えたいタイミングだったりしたということですか?
YUSUKE:そうです。今回新しいレーベル(Paddy field SUMMER)に入ったんですけど、それも一つですし。あと僕ら的にはコロナ禍前に1回テンションが下がっちゃっていた時期があって、そのままコロナ禍に入っていって。でもコロナ禍で僕らはライブをしないことを選択していたので、そこでよくも悪くもリフレッシュできた。リリースも久しぶりだし、改めて心機一転したいなと。『ANTHEM』は1st EPなんですけど、僕らにとってはもう1st作品くらいの気持ちです。
――初めてCDを出すくらいの。
YUSUKE :そうです、そうです。
KAI: 初々しさのようなものがありますね。
――そんな心機一転の気持ちで制作した『ANTHEM』ですが、作り終えてみた今、どのような手応えがありますか?
YUSUKE:僕は『ANTHEM』というタイトルをいつかつけたいと思っていて。それが作品のタイトルなのか、曲名なのかまでは想像していなかったですけど、自分の中ではすごく大事な言葉でした。そんなタイトルを「つけるなら今だ!」と思える作品になりました。今までチャレンジできなかったことにもチャレンジしたし、今までやってきたことも入っているし、僕たちにとっての今までとこれからを繋ぐ集大成と言えるような作品になったと思います。
――もともと“今までとこれからを繋ぐ集大成”になるような作品を作ろうと思って作り始めたのでしょうか? それとも、でき上がってみたらそういうものになっていた?
YUSUKE:でき上がってみたらですかね。そもそも今回収録されている曲のタネのようなものは、それこそコロナ禍でライブができなかった時期に「ライブができるようになったらやりたいな」と思いながら作ったものが多くて。その時期、自分たちの曲も全部聴き直しましたし、周りのバンドの曲や中学生の頃聴いていたようなバンドの曲も聴いて。そういう中で、自分らのよさや、それを踏まえてこういうことがやりたいなというものが見えてきました。
――そして自然とこれまでとこれからを繋ぐような楽曲たちができたと。
YUSUKE:はい。何かを狙うみたいなことはなかったですね。でも一つあるとしたら、自分たちが聴いていて楽しいというところは大事にしたかもしれない。「これ楽しくない?」「これよくない?」という感覚を大事にして作った6曲ではあります。
やりたいことに真っ直ぐなのが今の3SET-BOBのよさ
――コロナ禍で自分たちと向かい合ったとのことですが、今思う3SET-BOBのよさや3SET-BOBらしさはどういうものだと思っていますか?
RUKA(Dr/Cho):ポップなところですかね。なんか、どうあがいてもポップになる(笑)。これはデメリットでもありますけど、やっぱり一つのよさではないかなと思います。
YUSUKE:あとは、基本的に僕が曲を作っているんですけど、やりたいことができるようになってきたという実感があって。振り返ると、今までは技術が伴っていなかったり、歌詞も背伸びしちゃったりしていたところがあったんです。だけど、今回は自分が思っていることが素直に曲にできるようになっていた。だから、今の3SET-BOBのよさは“やりたいことにストレート”なのかなって。
――それも含めて今作は“1st”なんですね。
YUSUKE:そうなんです。だからこの感じでもっとやっていきたいよね。
KAI・RUKA:うん!
――本作で軸になった曲を挙げるとしたらどの曲ですか?
YUSUKE:やっぱり「サイコーサイコー」ですかね。
――それこそ歌詞にも〈アンセム〉という単語が入っていますからね。
YUSKE:そうなんです!
――この曲はラップを取り入れた歌詞やその言葉選び、ノリ感など、まさに3SET-BOBならではの1曲だなと感じます。
YUSUKE:まさに、やりたいことが形にできたのがこの曲で。
KAI:でもサビはノリでできたよね(笑)。
YUSUKE:ノリだね(笑)。まず「サイコーサイコー」っていう言葉選びも僕たちにとっては挑戦で。仮タイトルは、それこそ“アンセム”だったんです。でも新しいレーベルに所属して、チームのみんなで話し合っていく中で「『サイコーサイコー』がいいんじゃないか」って意見が出て。最初は正直「ダサくね?」って葛藤もあったんですけど(笑)、振り切ってよかったなと思います。歌詞で〈さあ行こう 最高 最高〉って歌っているところも、最初は適当に〈最高最高〜〉って歌っていただけだったんですよ。ただそれがたぶん気持ちよかったんでしょうね、そのときに最高な気分だなと思って。
KAI:本当にそのノリだったよね。
YUSUKE:うん。レコーディングまでに歌詞を直そうと思っていたんだけど、「もうこれでいいんじゃない? やりたいことできたし」って。
レコーディング中から感じていた手応え
――KAIさん、RUKAさんはこの曲を初めて聴いたときはどう思いましたか?
KAI:僕は完成したものを初めて聴いたときのことをすごく覚えています。実は僕、このアルバムの自分のパートを録り終えたあとに入院したんですよ。この曲も、完成したものを初めて聴いたのは入院中の病院のベッドの上で。そのときは自分の曲ながら、普通に感動しちゃいました。
YUSUKE:体調は“サイテーサイテー”だったけど(笑)。
KAI:そう(笑)、でも感動しました。
――素敵なエピソードですね。
YUSUKE:知らなかったね、それは。
RUKA:うん。私は、レコーディングする前の状態から最高だなと思っていました。私はYUSUKEの歌や歌詞に合わせてドラムを考えるのが好きなのですが、そのドラムを考えながら「これはいい曲になるぞ」って思いました。
――YUSUKEさんの歌や歌詞に合わせてドラムを考えるということですが、その視点で見た「サイコーサイコー」は、今までの楽曲と何か違いはありましたか?
YUSUKE:確かにそれ知りたい。
RUKA:うまく答えになっているかわからないんですが、私はこれまであんまりバンドのコピーとかをしてこなくて。でもKAIくんの入院中はライブができなかったので、その間にいろんなバンドの曲を聴いたりコピーをしたりしたんです。そしたらYUSUKEのやりたいことが理解できた。そのことが、私の中では大きかったかもしれないです。「こうやったらもうちょっとカッコよくなるんじゃないか」って思うものに寄せられるようになっていって、結果的にいいものが作れたのかなと思います。
――ちなみにどんな曲をコピーしたんですか?
RUKA:海外のポップパンクだったり、日本のミクスチャーだったり。
YUSUKE:具体的に挙げると? それがわかると「サイコーサイコー」を紐解ける気がする。
RUKA:日本のバンドだとRIZEで、海外のバンドだとGood CharlotteとかSUM 41とかそのあたり。
YUSUKE:なるほどね。確かに「サイコーサイコー」にその感じ入ってるかも!
――とはいえ、もともと3SET-BOBにはポップパンクやミクスチャーの要素は入っていましたよね?
YUSUKE:はい、入っています。
KAI:僕とYUSUKEはばっちり入っていますけど、RUKAは吹奏楽部出身で。
RUKA:3SET-BOBに入ってから、2人から「こういうバンド好きなんだよね」という話は聞いていましたけど、それまでパンクロックとかミクスチャーって全然聴いていなかったんです。
YUSUKE:僕とKAIは聴いてきたものが近いので「これ、あの曲の感じね」って話が早いんですけど、RUKAにはそれが通じない。逆にRUKAは音楽の専門用語で説明されたほうがわかると思うんですけど、僕らはそれがわからない。だって俺らがSUM 41を聴いていた中学時代、RUKAは吹奏楽部で演奏するクラシックを爆音で聴いていたんでしょ(笑)?
RUKA:そう(笑)。
YUSUKE:今回のタイミングでそのあたりのコピーをしていたというのは、今日初めて知りましたけど、さっき話した、やりたいことにストレートになったとか、やりたいことができるようになったというのは、こういうことも一つだったんだなと思いました。
――そんな「サイコーサイコー」が本作の中で最初にできたということは、バンドにとってすごく大きな出来事だったんですね。
YUSUKE:確かに。「サイコーサイコー」ができたから、他の曲ができたと言っても過言ではないですからね。「『サイコーサイコー』の中のここの要素だけの曲を作ろう」とか、そういうふうに他の曲を作っていったような気がするので、本当に軸になっている曲です。