LAGHEADSとKIRINJI、共感し合う両者の接点 「どうして髭を?」制作背景を語る
2020年代のJ-POPからアーティスティックな音楽まで、幅広く牽引するジャムポップ・バンドLAGHEADS。2月にはメンバーがレコーディングやライブサポートを行うKIRINJIとコラボレートした新曲「どうして髭を? feat. KIRINJI」をリリースした。3月10日にはブルーノート東京にてKIRINJIもゲスト参加した一夜限りのスペシャルなライブも実施されたばかりだが、ここではコラボの経緯や楽曲の着想など、共感し合う両者の接点を探ってみた。(石角友香)
ちょっと土の匂いのする感じのサウンドの方がやる意義があるかなと思った
ーーまず今回のコラボレーションの経緯を教えてください。
山本 連(以下、山本):もともと伊吹と純くんが高樹さんのサポートをやってたつながりでできることになって。
伊吹文裕(以下、伊吹):高樹さんはどこで僕たちを見つけてくれたんですか?
堀込高樹(以下、堀込):多分kiki vivi lilyの……。
山本:レッドブルのスタジオライブですか?(2020年12月と2021年2月に投稿された、LAGHEADSとMELRAWが参加したkiki vivi lilyのスタジオセッション動画/※1)
堀込:「この人たち全員いいな」と思って(笑)。お願いしたいみたいな感じだったんですけど。
伊吹:頑張ってよかったな。
堀込:それでまあレコーディングのたびにちょこちょこお呼びして。
――ミュージシャンとしてのお互いの印象は一緒に制作される前と後で変わった部分はありますか?
山本:印象が変わったというか、一緒に作った「どうして髭を?」って曲はオケと歌メロの主旋律だけまずこっちで作って、それを高樹さんに丸投げして歌を入れてもらったんですけど、ブラッシュアップ具合がすごくて。割とシンプルなファンクのオケだけを送って、高樹さんにデモを入れてもらったんですけど、クリエイティビティがめちゃくちゃすごい。曲のパワーが80%ぐらい増したなって感じで、すごいなって改めて思いました。
――山本さんと小川さんは高樹さんをイメージして作曲を?
山本:割とそうですね。
小川 翔(以下、小川):最初、僕と連と高樹さんとで「どんな曲にしましょうか」みたいな打ち合わせをして。まあファンクっぽい曲やりましょうって決まって、僕らで“っぽい”のをオケだけ作ったんですけど、僕一個だけサビのメロディの中に自分で思ってるKIRINJIっぽい…#11thに行くっていうのだけやりたくて(笑)、それだけ入れといたんですよ。そしたら乗っかってきたコーラスもテンションが乗ってるし、あれで急にKIRINJIらしくなってっていう感じでした。
山本:髭のコンセプトも特に決めずにおまかせでやってもらったんですけど、歌詞がもう秀逸な。
宮川 純(以下、宮川):絶妙なちょけ感というか、ゴリゴリのファンクなんだけど歌詞が可愛くて、可愛いけど遊び心がある。
伊吹:高樹さんは髭生やさないですか?
堀込:生やした時期もあったんだけど、だんだん白いものが混じってきて、なんかこう欠落感がある。ぽっかり穴が空いてるのはなんだろう? と思うと「あ、これ白いんだ、やめよう」つって。あんまり綺麗にならなかった(笑)。
――ファンクはファンクなんですけど、いい意味でのいなたさみたいな感じもあるじゃないですか。それは割となんかこう高樹さんにぶつけるっていう意味でも新鮮だったのかなと。
山本:うんうん。あんまりKIRINJIにはこういう曲は?
堀込:あんまりないかな。昔ちょっとこういうニューオリンズが入ったビートみたいなのをやってた時期はあったけど、最近はあんまりないですね。結構新鮮で面白い。
宮川:翔くんと高樹さんの会議をする前に4人の間で高樹さんにどんなものを歌ってもらったら面白いと思う? みたいな話をしたよね。
山本:結構こっちの色を強めに出したかったというか、あんまりKIRINJIっぽくない方がやってる意味があるなと。
堀込:今のKIRINJIがやらなさそうな?
宮川:やらなさそうなのなんだろうな? って時にリファレンスにSly & The Family Stoneの曲とかね? そういうのがいっぱい出てて、いわゆる本当にファンクな。
――高樹さんがLAGHEADSとせっかくやるんだったらファンクだと?
堀込:伊吹くんのソロのアルバムの映像とか見ると、Stuff(スタッフ)っぽかったりとか。フュージョンというか、バカテクになる前のR&Bをベースにしたインストゥルメンタルの映像があったんですよね。ああいうのあんまり自分ではやらないなと思って。それにHIMIくんの方で結構メロウな曲が多かったから、自分がやるならなんかちょっと土の匂いのする感じのサウンドの方がやる意義があるかなと思ったんですね。
伊吹:そこまで考えていただいて(笑)。
――LAGHEADSの皆さんにとってKIRINJIはどういう存在なんですか?
山本:難しい(笑)。
――いつ頃意識しました?
宮川:でも存在は高校生ぐらいですかね。「エイリアンズ」? 父が割とAORが好きで父がかけてたのを聴いてた記憶があります。
山本:お父さん喜んでるんじゃない?
宮川:めちゃくちゃ喜んでますよ。まあ父はいっときSteely Danのコピーバンドをやってたぐらいそういうのが好きで。だから父が「日本人でここまでのサウンドを作る人がついに出てきた」みたいな感じで興奮しながら家でかけてたのをすごく覚えてます。
堀込:そんな長くやってるんだみたいな(笑)。
小川:僕も20代に入ったぐらい、20代前半とかの頃に聴いてたイメージだった。2015年とか。
伊吹:俺、自分で掘ってたどり着く前に多分ブルー・ペパーズの井上薫に聴かせてもらって。で、多分「The Great Journey feat. RHYMESTER」が出てたぐらいかもしれないですね。「カッコいいな」と思って聴いてました。
――今回のコラボで世代が縮まったといいますか、それは高樹さんの最近の音楽的なアプローチのなせる技なのかなと。
堀込:でも皆さん割と聴いてるものが僕とあまり変わらないっていう感じだから。70年代から80年代の辺の音楽も当然だし、もっと古いものもきっといろいろ聴いてると思うんですけど。だから誰それの何ってこちらがパッと言うと、「あ、はいはい」って感じの人たちだから、その辺の聴いてきたものーーもちろん最近のものは彼らの方が全然詳しいと思うんですけど、リファレンスするものが結構近いような気はしますね。だから話が早いのもあってレコーディングとかお呼びしてるんですけど。
宮川:僕らからすると高樹さん「いやなんでこんな新しい人ももう知ってんだろう」みたいに思いますけどね。
堀込:そんなことないと思うよ(笑)。ただだらだらサブスクを聴いてるだけで。