三阪咲、“自分らしさ”への葛藤を経た新曲「tamerai」 昭和歌謡に惹かれたポイントも語る

三阪咲「tamerai」インタビュー

 20歳のシンガー・三阪咲がニューシングル「tamerai」を配信リリースした。昨年9月から12月にかけてリリースされた“恋愛三部作”に続く新曲は昭和歌謡のムードが漂う、懐かしくも新しい、片想いソングとなっている。11歳から路上ライブを始め、全国高校サッカー選手権大会の応援ソングや恋愛リアリティショーの主題歌などで注目を集め、ダンスやラップもこなす彼女が、なぜ今、ネオレトロポップと表される昭和歌謡を歌うのか。3月末日に開催されるEX THEATER ROPPONGIでのワンマンライブを控え、精力的なリリースを続ける彼女を悩ませる“三阪咲らしさ”とは――。(永堀アツオ)【記事最後にプレゼント情報あり】

葛藤を経て見えてきた今の私のスタイル

三阪咲(写真=林将平)

――ニューシングル「tamerai」のお話に行く前に、少しだけディスコグラフィを振り返っていいですか。2022年11月にリリースした「Singing for the night sky」から昨年9月にリリースした恋愛三部作の第一弾「恋の計画」まで、約10カ月ありました。その期間はご自身にとってどんな日々でしたか。

三阪咲(以下、三阪):次のリリースに向けて、「三阪咲とはどういう音楽を歌っていくべきなんだろう」と葛藤しつつ、「自分のやりたい音楽って何なんだろう?」と見つめ直す期間でしたね。ネガティブなことというよりは、これからを走っていくための準備期間みたいなものだったと思います。自分自身はそわそわしていたし、焦りもあったんですけど、「恋の計画」からほぼほぼ毎月ぐらいのペースでリリースすることができているので、今となっては、あの期間があってよかったなと思えてます。

――その期間でやりたい音楽は見つかりましたか?

三阪:うーん。もともとは高校サッカー(『第98回全国高校サッカー選手権大会』)の曲(応援歌「繋げ!」、みんなのアンセム「We are on your side」)だったり、『今日好き(今日、好きになりました。)』の曲(「私を好きになってくれませんか」、「僕でいいじゃん」)だったり、同世代の等身大の目線で歌うことが多かったんですけど、その後はR&Bをやっていて。

――3rd EP『I am Me』は英語詞が多かったし、ラップもやってました。その後の「Singing for the night sky」は「過ぎ去った過去にとらわれず自分らしく進んで行こう」というメッセージを込めつつ、サウンドはブギーファンクで洋楽的なアプローチでしたよね。

三阪:そうですね。幼稚園の頃からダンスをやっていたので、洋楽が好きで、英語がわからないながらによく歌っていたんですよ。だから、ルーツでもあるし、自分がやりたい音楽ができたんですけど、やりたいものと求められてるものの違いって何なんだろうみたいな葛藤もあって。

――応援ソングが好きな人は前向きで明るい歌声に“三阪咲”らしさを求めるし、等身大のラブソングが好きな人は切ない歌詞こそ“三阪咲”らしさだと言うでしょうから、R&Bやヒップホップをやると、「らしくない」って感じる人もいるんでしょうね。

三阪:過去が一番になりたくないから、いつでも更新していきたいんですけど、「どの曲が一番自分に似合ってると思いますか?」って聞くと、たぶん、10人中10人が全員、違うことを言うんですよ。結局、自分がやりたいものをやるしかないっていう結論になる。だから、難しいし、答えが出ないものだけど、分からないなりにも、今の私のスタイルを作り上げていく必要があるなっていうふうに感じて。そこで、「Singing for the night sky」から江口亮(坂本真綾やLiSAなどの楽曲アレンジを担当)さんに制作チームに入っていただいて、一緒に話したり、相談しながら試行錯誤を繰り返しています。恋愛三部作を含めて今、4曲をリリースして、曲のテイストはそれぞれ違いますけど、私の声が生きる楽曲になっている。これを積み重ねていけば、何か見えるものがあるんじゃないかっていう段階に来てるかなと思います。

三阪咲(写真=林将平)

――恋愛三部作はどのようにスタートしたんですか。

三阪:実は、たまたまどの曲も歌詞のテーマが恋愛になっただけだったんですよ(笑)。じゃあ、三部作にしようってなって。なんなら「tamerai」も恋の曲なので、四部作じゃなくて大丈夫ですか? って言ったぐらいで。

――(笑)。そうなんですね。

三阪:江口さんやスタッフさんたちとの話し合いの中で、まず、「毎月リリースをしたい」っていう話をして。そこで、去年の夏にいっぱいデモを集めて。その中にもう「tamerai」のデモがあったので、私は「恋の計画」の次のタイミングで「tamerai」を出したい気持ちもあったんですね。でも、積み重ねていってからの方がいいんじゃないか?っていうことで最後になりました。集めたデモの中から4曲を作ることになって、順番を決めて、歌詞を書く曲と作詞家の方に書いていただく曲を分けて進行していった、という感じです。

――当時、10カ月ぶりのリリースだった第一弾「恋の計画」は三阪さん本人の作詞になってます。

三阪咲 - 恋の計画 (Official Music Video)

三阪:久々のリリースということもあったので、始めるよっていう感じの疾走感のある曲を作りたかったんですね。私のリスタートであり、「みんな一緒に始めよう」っていうメッセージを入れたいという思いで作りましたね。

――ラブソングでもありますよね。“恋を始めよう”っていう。

三阪:そうですね。結構、リアルです。私自身、恋愛になるとありのままでいられないので(笑)。そのままでいたいなっていう思いを描いてるし、〈愚痴に対して アドバイスはしないで〉とか、〈ぬかりなくチェックしてるのは/元カノのストーリー〉とか、いわゆる“あるある”も詰め込んでみました。だから、それぞれの恋愛の状況に落とし込みやすい歌詞にはなってるんですけど、「恋の計画」から、自分のスタイルが少し変わっていて。

――どんなところが変わっていますか?

三阪:最近の曲はテンポが速くて、言葉も計算されている感じがあったりするけど、私はもっと大きく物事を捉えた歌詞にしたいなと思って。そうすることによって、みんなの生活の中にすっと入り込める、人生に落とし込みやすい曲になるんじゃないかなって思うんですよね。だから、この曲の二人も付き合っていると仮定して聴いても大丈夫だし、片思いでも全然大丈夫。受け取ってもらう方、人それぞれの捉え方で聴いてもらえるような曲になるといいなと思ってました。

――続く、第二弾「2」は作詞は松原さらりさんですね。

三阪咲 - 2 (Official Music Video)

三阪:作詞家さんに書いていただいた歌詞を自分なりに咀嚼して表現するっていうのも、自分のスタイルを築き上げていく中で大事なことだよねっていう話になって。松原さんには「私はコーヒーが飲めなくて、あなたはコーヒーが飲める。あなたのことを知っていくうちに、私もコーヒーが飲めるようになるけど、その頃にはもうあなたはいない」っていうようなストーリーの曲にしたいですとお伝えして。

――かなり具体的なオーダーですね。

三阪:作詞家さんにお願いすることがこれまであまりなかったので、実は当初、私も書いてみるって言ったんです。それで、私が書いた歌詞を見てもらって、それをさらに咀嚼して作っていただくっていう流れだったんですね。書き下ろしてはいただいているんですけど、ほぼほぼ私の心の中みたいな歌詞になってますね。

三阪咲(写真=林将平)

――歌詞にもありますが、少し苦味のある、大人の失恋ソングになってました。そして、第三弾「冬だより」は?

三阪咲 - 冬だより (Official Music Video)

三阪:「2」では自分が書いた歌詞を咀嚼して書いていただいたので、今度は逆におまかせで書いていただくというのに挑戦した曲になります。

――ちゃんと段階を踏んでますね。歌詞を受け取ってどう感じましたか?

三阪:やっぱり自分じゃ書かない言葉が上がってくるんで、最初はちょっとカバー曲を歌っているような感覚もありましたね。でも、昔からカバーを歌うのが好きなので、そういう懐かしさも感じつつ、逆にいつもの「自分の曲やからこうしないと」みたいなのがあまりなく歌えた感じですね。

――片想いの曲ですよね。

三阪:なかなかひどいですよね、相手(笑)。それでも思い続けてしまうっていう。新しい人が現れないと、こういう気持ちになってしまうよなと思いながら歌ってました。私はこの歌の主人公ほど、片思いのまま誰かのことを好きになれないかもしれないですけどね(笑)。

――(笑)。まだ20歳じゃないですか!

三阪:あはは。あんまり自分と重なるところはないんですけど、逆に言うと、演技をしているみたいな感覚で。私もその主人公になれた気分で歌えたので、それは自分の中で楽しいポイントでした。

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