テイラー・スウィフトの歴史的快挙、ジェイ・Zの異例スピーチ…『グラミー賞』名場面を振り返る

『第66回 グラミー賞』総括

 じっくり聴かせたのは、2023年の大ヒット映画『バービー』の挿入歌を兄フィニアス・オコネルと共に歌い上げたビリー・アイリッシュと、元Eurythmicsのアニー・レノックス。アニーは、アイルランドのシネイド・オコナーを追悼して「Nothing Compares 2 U」を熱唱したあと、「アーティストの皆さん、戦火を止めましょう。世界に平和を!」と締めた。ビリー・ジョエルやスティーヴィー・ワンダーの歌唱も、グラミーらしくて良かった。大物司会者のオプラ・ウィンフリーが紹介した、ファンテイジアによる追悼パフォーマンスは、ティナ・ターナーが乗り移ったかような迫力だった。マイリー・サイラスのパフォーマンスもティナを強く意識していたため、改めて彼女の功績の大きさを確認する結果に。

U2(写真=REX/アフロ)
U2(写真=REX/アフロ)

 ラスべガスで話題のヴェニュー、スフィアから中継したU2以外、ロックアクトはおとなしかった。2023年にインディーロックファンを喜ばせたのが、ジュリアン・ベイカー、フィービー・ブリジャーズ、ルーシー・デイカスによるスーパー・グループ、Boygeniusだ。最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバムを制したほか、「Not Strong Enough」で2部門を受賞。彼女たちのパフォーマンスがなかったのは、トリオとしての活動休止を発表しただけに残念だった。

 ここ数年で『グラミー賞』の選考委員の内訳を見直したものの、テイラー・スウィフト、ビリー・アイリッシュ、ジョン・バティステ、オリヴィア・ロドリゴ、今年は参加がなかったアデルやブルーノ・マーズなど『グラミー賞』に好かれるアーティストが固定化している印象はある。言語やジャンルが入り乱れ、選考が複雑化しているのも関係あるかもしれない。スペイン語圏のアーティストには2000年から『ラテン・グラミー賞』が始まり、カントリー・ミュージックには『カントリー・ミュージック・アワード』(CMA)という権威があるアワードが存在する。だが、本家の『グラミー賞』は「世界でもっとも有名な音楽アワード」である以上、格別の重みがある。

『第66回グラミー賞授賞式®』で受賞コメントするジェイ・Z
ジェイ・Z

 名前を挙げたアーティストが慣れた様子でステージに上がる一方、丁寧に英語でスピーチしたコロンビアのカロル Gや、「ここまで来るのは本当に大変だった」と涙ながらに謝意を述べたヴィクトリア・モネの初々しさで、それを思い出した。最多の9部門にノミネートされ、3部門を受賞したSZAは、親友のリゾから最優秀R&Bソングのトロフィーを受け取り、「やった、すっごい嬉しい!」と素直に喜び視聴者の心を打った。ジェイ・Zはスピーチで、妻のビヨンセをやんわり指しながら、もっとも多く受賞しているのに、年間最優秀アルバムは獲っていないと指摘。「賞を奪われたと感じるアーティストもいるだろうし、そもそもその部門ではない人もいる」と言い、選考基準の透明性にさらなる改革を求めた。そういった生々しい瞬間を含め、今年の『グラミー賞』のはライブ感が強く、見応えがあった。

【番組情報】
第66回グラミー賞授賞式®
WOWOWオンデマンドで5月4日(土)までアーカイブ配信中
3月16日(土)午後5:45[WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]

番組サイト
https://www.wowow.co.jp/music/grammy/

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