藤井 風、Number_i……ドラマだけでなくMVも“考察系”が流行 ヒットの要因と歴史を辿る

 同じように、日本の音楽シーンでも、MVによって楽曲の解釈が深まる例を取り上げてみたい。たとえば、ちゃんみなの「命日」(2023年)。楽曲タイトルには、言葉の本来の意味である「亡くなった日」に加え、「命が生まれた日」という意味も込められているという。MVでは、ちゃんみな演じるひとりの女性が、亡き親の跡を継いで極道の世界に足を踏み入れ、最後に想いを寄せていたのであろう男性を銃で撃つまでのストーリーが描かれている。“生”と“死”に着目しながらも、MVの内容からは今までの自分に別れを告げる、生まれ変わりのような意味合いも楽曲に込められていたのだと解釈できる。

[キャプション]ちゃんみな - 命日 (Official Music Video) -

 他にも、藤井 風が昨年リリースした「花」のMVでは、楽曲自体に込められた死生観が表現されている。冒頭で、花に囲まれ棺のなかで眠る男性と、それを運ぶ男性、この2役を演じている藤井風。「どういう状況?」と気になって観進めてしまうのだが、花に囲まれているほうは亡骸であり、“生”と“死”の喩えなのだと気づく。しかし、2コーラス目で、今度は運んでいた側の男性が遺影として飾られることで再び謎が生まれる。人には必ず死が訪れること、そしておそらくは輪廻転生も表現していると解釈しているのだが、こうした意味深なシーンが繰り返されることで、何度も映像を遡って観てしまうのだ。

藤井 風 - 花 (Official Video)

 2024年に入ってからの作品で言えば、Number_iの「GOAT」も外せないだろう。こちらは先述した他のMVよりも場面の移り変わりが激しく、会議室のような場所で大人に囲まれながら踊るシーンや、石像が散らばった廊下を歩くシーンなど、藤井の「花」以上に「どういう状況?」と困惑する部分が多い。加えて、終盤には逆再生の演出があり、謎解き要素が増す。彼らの現状とリンクしたような歌詞も相まって、3分39秒内に映し出されるすべてがメッセージのように思え、1秒たりとも見逃せないMVになっている。

Number_i - GOAT (Official Music Video)

 こうした考察を楽しめるMVは、楽曲の世界観を深めることや、はたまた新たな解釈を生む役割を持つ。これからもどんなMVが誕生するか注目だ。一曲で何度も美味しい考察系MV。楽曲とあわせて、繰り返し深く味わっていきたい。

藤井 風、「花」MVのダンスシーンが持つ意味 “死生観”と“転生”の解釈

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