No Lie-Sense、ナンセンスを追求した10年 鈴木慶一とKERAが『Twisted Globe』を語り尽くす
「どこにもない音楽ができた」
――『Twisted Globe』というタイトルはどこから出て来たんですか?
慶一:これは私がいくつか案を出したうちのひとつ。「ねじれた地球」ってSFっぽいかなと。
KERA:『発狂した宇宙』みたいな感じ。
――フレドリック・ブラウンですね! 先ほど話に出た『マーズ・アタック!』の原作もブラウンでしたが、アメリカのパルプ雑誌っぽいSFの世界観がNo Lie-Senseに合ってますね。ジャケットは筒井康隆の小説の表紙みたいですし。
慶一:これはイラストレーターのチャーハン・ラモーンさんにお願いした。最初は地球の真ん中が日本になってたんだけど、それをエルサレムにしてもらった。
KERA:今の情勢を鑑みてね。
――『Japan's Period』(2016年)のジャケットではキノコ雲をバックに2人が笑ってましたが、今回も物騒ですね(笑)。それにしても、こうして通して聴いてみると本当になんだかわからない音楽です。ジャンル不明で意味不明。でも、不思議とポップ。これまでビートルズをはじめナンセンスな歌詞は作られて来ましたが、ナンセンスなサウンドというのはあまり追求されてこなかった気がします。
KERA:そうかもね。モンティ・パイソンの曲もボサノヴァなりカントリーなり、既存のジャンルのパロディじゃないですか。我々の音楽は既存の音楽をヒントにしながらも、出来上がったものは無国籍でなんだかよくわかない。
――No Lie-Senseはヴォーカルも独特なんですよね。ロックみたいにエモーショナルじゃないし、ポップスみたいに親しみやすいわけではない。歌詞に伝えるべき物語とか感情がないなかで、2人はどんな気持ちで歌っているんだろうって思います。
慶一:どんな感情も入らないように歌ってるんじゃない?
――確かに全然気持ちがこもってない(笑)。
慶一:信用できない歌い方だよ(笑)。
KERA:ポーカーフェイスというかね。不条理劇を演じる時に感情過多になるとよくないんですよね。よくないっていうか、変な意味を持っちゃうから。だから感情をあまり入れない方が怖かったり、おかしかったりする。 音楽もそうなのかな。まあ、そこまで考えてやってないですけど(笑)。
――KERAさんの場合、お芝居でもナンセンスなものを作られるじゃないですか。お芝居でやるのと音楽で作るのとでは何か違いがありますか?
KERA:芝居の世界って、いまだにストーリーが重視されてるんですよ。伏線回収が評価されたり、人物の行動理由や心理が問われることと僕は戦ってきた。だって、人生なんて伏線回収なんてされないまま死んでいくことが多いし、それが何だったのか最後までわからないことも多いじゃないですか。だから、きれいにまとまった行儀の良いものを書くなんてかっこ悪いと思ってきたんです。その点、音楽は演劇ほど意味を求められないじゃないですか。歌詞の意味がわからないからって文句を言われることもない。ビートルズの歌詞だって「こんな内容だったの?」っていまだに驚く人は多いし。
――ー確かにそうですね。過激に、そして、緻密にふざけるというか、新作ではそういうところがますます研ぎ澄まされている。10年にわたってナンセンスを追求してきたという点でも、No Lie-Senseは唯一無二のユニットだと改めて思いました。
慶一:ありがとうございます。どこにもない音楽ができたと思いますよ。
KERA:何度か聴いてくれれば、みんな好きになってくれると思うんですけど、どうやって何度も聴いてもらうかが問題なんですよね(笑)。
■リリース情報
『Twisted Globe』
2023年12月27日(水)発売
仕様:10インチEP
定価:¥4290(税抜価格¥3900)
レーベル:ナゴムレコード
<収録曲>
A面
1. ディストピア讃歌 作詞・作曲 KERA
2. 越し難き敷居を蹴る時 作詞・作曲 鈴木慶一
B面
1. モンキー・ガールズ 作詞・作曲 KERA
2. 唾と墨汁 作詞・作曲 鈴木慶一
3. デンドロカカリヤ 作詞・作曲 KERA
Produced by No Lie-Sense(鈴木慶一+KERA)
Recorded and Mixed by ゴンドウトモヒコ