藤井 風、Ado、水曜日のカンパネラ、MAZZEL、Little Glee Monster、ano……注目新譜6作をレビュー

New Releases In Focus

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回は藤井 風「花」、Ado「オールナイトレディオ」、水曜日のカンパネラ「聖徳太子」、MAZZEL「Carnival」、Little Glee Monster「UP TO ME!」、ano「涙くん、今日もおはようっ」の6作品をピックアップした。(編集部)

藤井 風「花」

 ドラマ『いちばんすきな花』(フジテレビ系)への書き下ろし主題歌。前シングル曲「Workin' Hard」のインパクトがあまりに強烈だったため、穏やかなメロディ、聴きやすい日本語の並びなど、藤井 風にしては普通だな、というのが第一印象になる。ただ、よく聴けばアレンジもミックスも非常にモダンな曲だ。たとえば歌い出しはピアノとベースが伴奏を担っているが、間奏を越えて以降は極限まで音数を引いたアンビエント的展開に。王道J-POPならストリングスが出てきそうな後半のサビも、3分8秒、きらめく上モノが一瞬だけ現れては消えていく。一見スタンダード、でも細部まで気の利いた引きの美学。宇多田ヒカルでもお馴染みのA. G. Cookがプロデュース。(石井)

藤井 風「花」

Ado「オールナイトレディオ」

Ado「オールナイトレディオ」

 12月に初の“歌ってみた”アルバム『Adoの歌ってみたアルバム』をリリース、来年4月には国立競技場公演が決定するなど、自らのルーツをしっかりと踏まえつつ、活動の規模を爆発的に広げ続けているAdoの新曲「オールナイトレディオ」は、舞台演劇番組イベント生配信ドラマ『あの夜であえたら』主題歌。作詞・作曲・編曲は「ビバハピ」「徳川カップヌードル禁止令」などで知られるボカロPのMitchie Mが担当し、軽快なギターカッティング、しなやかなソウルネスを感じさせるリズムなど、Ado流のシティポップと称すべき楽曲に仕上げている。おしゃれに洗練されたメロディ、都会の風景を映し出しながら、ドラマのストーリーともリンクしている歌詞をなめらかに表現する歌声も新機軸だ。(森)

水曜日のカンパネラ「聖徳太子」

水曜日のカンパネラ「聖徳太子」

 牧歌的でかわいい雰囲気のイントロから一転、しなやかなファンクネスをたたえたトラックへと移行。その直後にフェミニンなムードに溢れた歌声が耳に飛び込んできて、一気に楽曲の世界に引き込まれる。新曲「聖徳太子」は題名の通り、聖徳太子をモチーフにしたダンスチューン。〈何で順番守らないかな一度に話しかけるな〉と聖徳太子の内面的な葛藤を描きつつ、悩みごとばかりの現代社会に生きる我々が頼るべき相手は? といったテーマにつながる……ような気もするリリックは水曜日のカンパネラの真骨頂だ。「千利休」「ジャンヌダルク」などの初期の楽曲で見られた人名シリーズを引き継ぎつつ、2023年のシーンに完璧にアジャスト、さらに圧倒的なオリジナリティをしっかりと感じさせるナイスな1曲。(森)

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