帝国喫茶の音楽の根底にある“生きること”や“届けること”の意味 杉浦祐輝&疋田耀に聞くソングライターとしての信念
「みんなへ」で終わるこのアルバムに込められた信念
ーー杉崎さんが書いた「子守唄」と、先ほども話に出た「clashtriker」が前作にはなかった2分前後のパンクナンバーじゃないですか。聴いていると、伝えたいこととジャンルが一緒に降ってきてソングライティングに反映されているような感覚があって。パンク以外もそうですが、そういう制作過程から自分たちのルーツを再認識されている部分もあるのでしょうか?
杉浦:確かにそうかもしれないです。昔はよくテレビで流れていたり、チャートインするような曲を聴いてカラオケで歌ったりしていたんですけど、バンドを始めた頃は銀杏BOYZとかパンクばっかり聴くようになって。そのパンクっぽさが僕の曲のストレートさにつながっていて、でもメロディには自然とJ-POP的なコードがたくさん出てくるので、そこはパンクとは真逆というか。言われてみれば、書いてるうちに「こういう音楽が好きなんやな」とわかっていくところはありますね。
疋田:音として受ける影響ももちろんあるんですけど、そのジャンルの持つアティテュード とかマインドが自分の中に蓄積されていって、そこから湧き上がってきたワードやメロディを出している感じかもしれないです。例えば、さっきも言ったように僕の曲には“愛”っていうテーマが多いんですけど、R&Bとかゴスペル、教会音楽とか大きい音像感の音楽を聴くことで、僕の中にラブ的な想いが蓄積されているんですよ。でも、自由でありたいっていう気持ちはたぶんパンクを聴くことで蓄積されていて、その上で「なんで世界はもっとよくならないんだろう?」みたいなことが歌詞として出てきたりするので。先人たちが残したカルチャーやジャンルが何を掲げていたのかを考えて、ちゃんと自分の中に落とし込んで、残ったものをキャッチしながら、また作り出して返していくみたいなことは、自分の音楽表現として強いかもしれないです。
ーーめちゃくちゃ面白いですし、すごく真摯に音楽と向き合っていることもわかります。でも、そもそも疋田さんは何に対して怒ったりしているんだと思います?
疋田:もう全部ですね。起きてから寝るまで、ずっとブチギレてます。でも、ブチギレてる理由をたどっていくと、やっぱり愛なんですよね。なんでこういうことに気づいてくれないんだろうとか、こういう考えを持って行動したらみんな幸せになるのに、友達やお世話になっている人が傷つかずに済むのに……とか、そういうことを考えてるんですよ。だから愛情が大きすぎる分ずっと怒ってるというか、多くの人にその愛に気づいてほしいから 「これが愛だよ」「こうしたらもっと幸せになるはずだよ」って道標みたいな矢印を出すんですけど、その矢印がめちゃくちゃ強くて尖ってるんだろうなって思ってます。
ーー愛が足りていない上に、こぼれてる小さな愛にも気づけない人が多いという感覚?
疋田:愛が全然足りないからこそ、こぼれてる愛ぐらいしか見つけることができないんだけど、辛い世の中では小さいかけらぐらいの愛でもすごく愛しく思えて、それが自分の気持ちを温かく照らしてくれてるというか。僕の歌詞って〈愛〉と同じぐらい、〈輝き〉とか〈光〉もよく出てくるんですよね。一筋の光を自分で見つけ出して、ちゃんと手を伸ばし続けていたいし、その光を浴びた自分もずっと輝いてたいっていう気持ちを持っていたくて。アルバムを聴いた人たちにも、「そういうキラキラをあなたたちも見つけることができるから大丈夫だよ」って伝えたいのかもしれないですね。
ーー「泥だらけの純粋」の中で〈美しい物はいつも泥だらけさ〉と歌い、純粋であるための“泥”や“痛み”を肯定していますよね。これは泥だらけになってもちゃんと輝けるんだよっていうメッセージであるとともに、むしろ傷や痛みを伴わないと自分らしくいられないという、今の時代をシニカルに捉えた歌詞でもあると思っていて。
疋田:確かに、そうかもしれないですね。
ーー自分らしさを主張したら叩かれて、殻にこもってしまい、それでももう一度立ち上がってはまた傷つけられて……っていう、泥だらけになりながらも自分らしい生き方に近づいていこうとする意志そのものを肯定している曲に感じました。
疋田:それはわりと普段から考えていることですね。さらけ出せばさらけ出すほど、みんなから受け入れてもらえるだろうかっていう不安があって、殻にこもっちゃったりするんですけど、もうちょっと自分らしくいられないと疲れちゃうし、でも、世間の人に迷惑をかけてしまうかもしれないし……みたいなフラストレーションはこの曲全体を通して出ていて。僕は、なるべく一辺倒な人間讃歌にならないようにと思って「泥だらけの純粋」を作ったんです。というのも、殻に閉じこもることさえも、正解なんじゃないかって思うんですよね。傷つくぐらいなら自分を隠してしまおうと思ったとしても、それもあなたの決断であり、選んだ道なんだよって。だから「あなたらしくいよう!」みたいな決定的なフレーズは入っていなくて、〈このまま僕ら ありのままいれたら 綺麗かな〉って、肯定も否定もしていない曲なんです。それがあなたの選択だから僕は尊重しますっていう……人間讃歌ではなく、人間の“選択”讃歌になっていて。
ーー今の話は〈閉ざした分開いて〉という歌詞に表れていますよね。殻に閉じこもっているからといって未来まで閉じているわけではなくて、そこを通して広がる未来、つながる人もいるんだよってことを感じました。この曲は前作の「ガソリンタンク」の先を歌った曲でもあると思うんですけど、ガーッと攻める曲調ではなく、Oasis的な大陸的なメロディに乗せて歌っているところにも、バンドの進化を感じました。
疋田:ありがとうございます。明るいようにも聴こえるけど、暗くて悲しく聴こえる人もいると思うんですよね。光でもあり影でもある、肯定も否定もしてない、ただそこにある曲なのかなって今言われて思いました。「行こうぜ」「元気出そうぜ」って歌っても響かないような気がして、今のご時世だからこそ書けた現実的な歌だなって思います。
ーー続く「ghost light」も、パーソナルな歌にも聴こえる反面、社会的に“見えにくく”されている人や、「元気出そうぜ」っていうだけでは声が響かない人に向けて、光を届けにいく曲に聴こえたので、「泥だらけの純粋」との並びには深い意味を感じました。
疋田: その2曲は「光に向かおうぜ!」っていうよりは、スッと隣に座って、「頑張りたいよね」「光を信じたいよね」って寄り添いに行く感じが強いかもしれないですね。
ーーそんな「泥だらけの純粋」「ghost light」から、「みんなへ」につながるアルバム終盤の流れはどう捉えていますか。
杉浦:自分のことを歌ってきたつもりだったんですけど、結局大事な人に向けて書いてるねんなってことに気づいてから「みんなへ」を書き始めて。もしも自分がいなくなるとして、最後に伝えたいことは何かなって考えながら書いていったんですけど、前の2曲があることでより深みが出るというか、改めて4人で1つのバンドやなっていう感じも届いてくれたら嬉しいですね。「みんなへ」っていうのはお客さんだけじゃなくて、メンバーやスタッフ、関わってくれる人にもちゃんと届いてほしいと思っているし、そうやって歌うことが自分の信念というか、一番根幹にあることだと思ってます。
ーーその信念が届いたのか、アクリ(Gt)さんが描いたジャケットデザインもすごく意味深いものになってると思います。『季節と君のレコード』の“季節”って人の営みを表してると思うんですけど、それを音楽を通して見つめているアートワークは、まさに今作そのものを表しているなと感じました。本当に4人で作った1枚であり、帝国喫茶の魅力が凝縮されたアルバムですよね。
杉浦:そうですね。前作の時は結構、僕が細かく(アートワークの)デザインをこうしてほしいみたいに伝えてたんですけど、今回はほとんどアクリが自分で考えて描いてきてくれたんで、杉崎が「子守唄」を書いてきた時みたいに嬉しかったですね。特にアクリは思考が宇宙人みたいなヤツというか、ちょっとぶっ飛んでるので(笑)、ちゃんと想いを汲み取って上手く表してくれたのは嬉しかったし、アートワークができてバチッと最後のピースがはまったことで、これから次にどう進んでいくのか、楽しみになるアルバムができたと思います。
■リリース情報
『帝国喫茶II 季節と君のレコード』
2023年10月4日(水)CD・デジタルリリース
<収録曲(全12曲)>
1.季節すら追い抜いて
2.夏の夢は
3.君が月
4.blue star carnival
5.子守唄
6.マフラー
7.clashtriker
8.ラブソング
9.恋人へ
10.泥だらけの純粋
11.ghost light
12.みんなへ
CD価格:2,500円(税抜)、2,750円(税込)
LinkFire:https://teikokukissa.lnk.to/2ndAL
<タワーレコードオリジナル特典>
・全店&オンライン:A5サイズクリアファイル
・渋谷店:オリジナル缶バッジ
・梅田NU茶屋町店:オリジナル缶バッジ
※特典は全てメンバーアクリ(Gt)による描き下ろしデザイン、数量限定
<「発売記念特別レシート」 キャンペーン>
実施期間中、タワーレコード店舗にて対象商品をご購入いただいた方に 「発売記念特別レシート」を発行いたします。
【実施期間】 2023年10月3日(火)〜2023年10月9日(月)
【対象店舗】 タワーレコード全店舗(オンライン除く全店舗)
※実施期間は店舗によって多少前後する場合あり
<タワーレコードインストアライブ>
10月9日(月・祝)タワーレコード新宿店
集合時間12:30/イベント開始13:00
イベント内容:Vo.Gt 杉浦祐輝の弾き語りライブ & 特典会
10月28日(土)タワーレコード梅田NU茶屋町店
集合時間15:30/イベント開始16:00
イベント内容:アコースティックライブ & 特典会
https://music.spaceshower.jp/news/248161/
■ライブ情報
10月8日(日)Eggs presents FM802 MINAMI WHEEL 2023 @大阪市内21会場
11月5日(日)風のリズム2023 @新潟市古町地区3会場
『帝国喫茶 初ワンマンツアー「世界中の街にロマンスを」』
11月18日(土)大阪 心斎橋BIGCAT
11月19日(日)香川 高松DIME
11月23日(木・祝)愛知 名古屋CLUB QUATTRO
11月25日(土)宮城 仙台CLUB JUNK BOX
11月26日(日)北海道 札幌SPiCE
12月2日(土)広島 広島SECOND CRUTCH
12月3日(日)福岡 福岡DRUM Be-1
12月9日(土)東京 渋谷CLUB QUATTRO
<チケット>
イープラス:https://eplus.jp/teikokukissa
ローソンチケット:https://l-tike.com/concert/mevent/?mid=695365
チケットぴあ:https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=LA200039
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