Dios、停滞した社会に投げかける“健全なアンチテーゼ” 新たな鎖をまとうことで自由になった2ndアルバムを語る
「Diosをモチーフにしたイラストは“社会の最小単位そのもの”」(Ichika)
――たなかさんは「自由」で〈前にも言ったが呪いは鎧/好きなの纏って踊れよホーミー〉というラインを書いていて、これはぼくりりの「祈りを持たない者ども」の〈受けてきた呪い ある意味で鎧を/脱ぎ捨てる〉という歌詞を踏まえたものですよね。前は「脱げ」と言っていたところから「着ろ」と正反対のベクトルに向かっているのが、まさにDiosをやることで生まれた変化なんだろうなと思います。
たなか:まさにおっしゃる通りで。例えば黒人の奴隷解放運動って、生まれた時から鎖がいっぱいついていて「そういうものなんだ」と思っていたところから、「これって外してもいいんだ」ってみんなが思えるようになるためのムーブメントだったわけですよね。それは人間として基本の権利を獲得するっていう話で、もちろんその鎖は外すべきなんですよ。それで自由になった上で、自分の人生を前に進める時には逆に必要な鎖がある、みたいな。仕事に就くとかもそうじゃないですか。1回外した後で、そういう鎖を身にまとっていくっていうフローがあるので。僕にとっては、ぼくりりをやめることで鎖を1回外して、その後新たにDiosを始めていった。レベルは違いますけど、相似した流れを辿っているなとは思います。
――同じように「愛」というテーマも、前作に引き続き大きなものとして表現されていますけど、その切り取り方も変わってきましたよね。前作では愛は探すものでしたけど、今作で、例えば「ラブレス」とか「また来世」が描く愛は、すでにそこにあるものとして捉えられている感じがする。
たなか:そうですね。やっぱり僕にとって『CASTLE』は内面の充実というか、自分の内面を見つめて捉え直す意味合いが強いアルバムだったので。自分の心の中に城を建てて、いつでもそこに帰れるようにして外に出ていくっていう作品なので、やっぱり愛を「探す」みたいな感じだったんです。でもそこは通り過ぎて「愛は見つかったから、その後どうしよう」っていう。それって誰しもが持ってて、逆に当たり前にありすぎて認識できてない話だと思うんですけど、それをやったのも、次に僕らがどんなメッセージを打ち出していくことが、世界を前に進めることになるんだろうって考えたからなんですよね。意図的に「今回はあまり停滞しないようにしよう」「後ろ向きな美しさはいいから、前向きにいこう」と探していったので。
Ichika:Dios、健全になってきてるんだよな。
たなか:健全なのよ。でも難しいのが、健全さとつまらなさって、めちゃめちゃ距離が近いんですよ。間の膜がすごく薄い。そういうところで、どうやってうまいことやっていこうかなっていうのはすごく考えてますね。
――健全と退屈が背中合わせだとして、退屈の側に転ばないようにするには何が必要だと思いますか?
Ichika:それが今回でいうと、このイラストのビジュアルだったりするんだと思います。ある部分でズラしていこうみたいな感じなんですよね。
――そうかもしれないですね。浅野直之さんが描かれたこのキャラクターは、3人それぞれをモチーフにしているということなんですけど。
Ichika:それぞれの内面性がキャラクターとして出てるなと思います。ササノは見ての通り、本当にどうしようもないポンコツロボットで――。
ササノ:言い過ぎや! どうしようもなくはないやろ、まだ。
Ichika:かわいいんですよ(笑)。頭に花咲いてるし、スクリーンの色も黄緑だし、アロハシャツ着てるし、「この三つ編みなんだよ」みたいな。ササノマリイはDiosいちの萌えキャラなので。人間らしいんですけど、コミュニケーションが不全しているところもあって、そこにはメカっぽさもあるんですよね。
ササノ:まさに。本当に、まさになんですよ。
――Ichikaさんは?
たなか:これはギャルです。僕がずっと言い続けて――。
Ichika:ゴリ押しの結果、こうなりましたね。スタッズがついたリュックは僕がメタル好きなところが反映されているらしいです。
――で、たなかさんはドラゴン?
Ichika:これはもうひねくれたドラゴンですよ。たなかは最近一人称を「ワイ」から「俺」に移行しているんですけど、その最中にいる感じだなと。
――SNSで「『俺』のダサさこそが自分の人生を主観で生きていくことの証左なんや」と言ってましたね(※1)。
たなか:そのことをダサいと思ってるのがこの顔(笑)。
Ichika:そういうのって、みんな小学校低学年の頃に経験してると思うんですよね。恥ずかしかったじゃないですか、「俺」って言うの。その枠組みから1人バグ技で外れたけど、その壁って歳を取るごとに強固になってきて、20代で戻ってこようと思っても固くて戻れなくなっちゃったんですよ。っていうのがこれ。
たなか:最近それを頑張ってます。結構慣れてきた。
Ichika:でも、ちゃんと王冠被って、羽も広げて前に行こうとしてる。ただ、まだパジャマ被って座ってるんですよ。マジで内面性が出てる。
――今の話を聞いてもすごく思いますけど、写真だと伝わらない3人の差異やパーソナリティがデフォルメされているんですよね。じゃあそれを通して何が見えてくるかというと、Diosの3人というのはすごく人間社会的なんだということ。全然違う3人が集まって音楽をやって、それがちゃんとポップミュージックとして成立する、そのダイナミズムと物語性がDiosの中にちゃんとあるんだっていうことなんですよね。
Ichika:言われてみれば、これって本当に社会の最小単位そのものですね。機械と恐竜と人っていう、カテゴリの違う3体がいて、Diosは本当にここから社会をやっていくんだぞっていう話になってるんですよね。
――最後の「王」という曲で〈崩れ落ちた城のまえで/痛いほど笑っていて〉とも歌っていますけど、そこには痛みも伴う。せっかく建てた城は崩れ落ちちゃっているわけだし。でもそこから前に進んでいくんじゃないの? ということですね。
たなか:そうです。もう次に向かってますから。
――「&疾走」では〈魔法なんてない〉とも言ってますし。ないけどやるよ、というのは一番攻撃的な姿勢だなと思います。
たなか:そうですね。現実を見ないと始まらないので。しかも聴いてくれる人の置かれたバックグラウンドやシチュエーションって、みんな違うわけじゃないですか。そこに向けて僕らが衒いなく打ち出せるメッセージってなんだろうと思った時にひねり出したのが〈ただしいフォーム&疾走〉っていう言葉だったんです。〈ただしいフォーム〉っていうのは人それぞれなんですよね。効率のいい体の動かし方や黄金比って、人それぞれ違う形を持っている。それをいかに探り当てて、その正しいフォームに沿っていけるように練習できるかっていうのが、僕らが最初に提示できるメッセージだなと思っています。
※1:https://twitter.com/aaaaaatanaka/status/1685672797329408000?s=20
■衣装提供
たなか
Distressed shirt ¥55,000 (Maison MIHARA YASUHIRO | Maison MIHARA YASUHIRO TOKYO) 03-5770-3291
Sneaker ¥46,200 (glamb | glamb Tokyo) 03-3746-9950
Ichika Nito
Goths long shirt ¥33,000 (COTTON PAN | OVERRIVER)
info@overriver.com
ササノマリイ
Border cut and sewn ¥27,500 (BRÚ NA BÓINNE | BRÚ NA BÓINNE DAIKANYAMA) 03-5728-3766
Glasses ¥39,600 (KANEKO OPTICAL | OPTICIEN LOYD) 03-3423-0505
Shoes ¥38,500 (glamb | glamb Tokyo) 03-3746-9950
■リリース情報
Dios『&疾走』
発売日:2023年9月6日(水)
・通常盤:3,300円(税込)/2CD(Instrumental Ver.付き)
・完全限定生産 BOX盤:6,600円(税込)/BOX仕様、2CD(Instrumental Ver.付き)、オリジナルTシャツ(Lサイズ相当)、ステッカー(ホログラム仕様)
ダウンロード/ストリーミング
https://Dios.lnk.to/SPRINT
【トラックリスト】
1.自由
2.アンダーグラウンド
3.&疾走
4.渦
5.また来世
6.花束
7.ラブレス
8.Struggle
9.裏切りについて
10.王
■ツアー情報
『Dios Tour 2023』
10月7日(土)仙台Rensa
OPEN 17:00 START 18:00
10月8日(日)札幌PENNY LANE24
OPEN 17:00 START 18:00
10月11日(水)福岡DRUM LOGOS
OPEN 18:00 START 19:00
10月12日(木)広島LIVE VANQUISH
OPEN 18:00 START 19:00
10月19日(木)大阪BIG CAT
OPEN 18:00 START 19:00
10月20日(金)名古屋BOTTOM LINE
OPEN 18:00 START 19:00
10月23日(月)東京Zepp DiverCity
OPEN 18:00 START 19:00
チケット一般発売中
https://linktr.ee/dios_tour2023