G-FREAK FACTORY 茂木洋晃が貫く、鬱屈とした世の中へのカウンター コロナ明けのライブに対する葛藤と挑戦も語る

「もみくちゃになるライブの道具として曲を作りたいわけじゃない」

ーーそういう流れの中で、20代のLeoさんがG-FREAKのメンバーに加入されたのも面白いなと思います。「RED EYE BLUES」がダブの音像になったのはどうしてだったんですか?

茂木:LeoにとってのG-FREAK初音源だから、もっとLeoがフィーチャーされる曲でもいいなと思ったんだけど、それだけになっちゃうとダメだからバランスをいろいろ考えて。あいつがもっとエゴを出してくるのはこの先だと思うから、それも楽しみにしつつ、今回に関しては漠然とダブっぽいことやりたいなとずっと思っていて。コロナ禍でダブとかインストアンビエントにすげえ救われたんだよね。BPMの遅い曲が好きになったから、身体が揺れるくらいのちょうどいい速さでそれをやりたいなと思って。

ーー茂木さんなりにしっくりくるテンポだったと。

茂木:テンポはちょうどここだったんだよな。1テンポずらしただけで全然変わってしまう。

ーー去年の取材で、「ビフォアコロナのときはもっとエネルギーを現場に落としていくような曲をやりたい気持ちがあったんだけど、今はそうじゃない」「もっとテンポ遅くてもいいんじゃねえか」っていう話があって(※1)、その上で前作の「Dandy Lion」はミドルテンポになっていったんだと思いますけど、今年は声出しも解禁されて、ライブの状況自体は変わってきているじゃないですか。それでも単に速い曲ではなく、ダブを選んだことにはどんな意図があると思いますか。

茂木:別にもみくちゃになるライブの道具として曲を作りたいわけじゃなくて。曲としてしっかり空気感を表現できてるのであれば、テンポは速くなくていいと思う。本当はもっと遅くてもよかったと思ってるし。ロックの現場だと、すぐにモッシュやらダイブって言葉がポンポン出てくるけど、それだけがロックじゃない。俺の好きなNukey Pikesはパンク/ハードコアバンドだけど、「ダイブのために曲を作ってるわけじゃないんだ」って言って、途中から質感を変えていったんだよね。それに近いというか、今ってなんとなくモッシュやダイブがロックに対する“ポーズ”になっている気がして。みんなで一緒にやって「わー楽しい」みたいな。もちろん、モッシュやダイブのいい部分もあるんだけど、見ていてゲンナリすることもあるから、その調和をもっと違う形で取りたいと俺は思ってて。葛藤しながらではあるけど、今回はそういうチャレンジでもある。

G-FREAK FACTORY Dandy Lion (OFFICIAL VIDEO)

ーーモッシュやダイブ本来の役目よりも、空虚なポーズとして定着してしまっている面に一石を投じると。コロナ禍を経てライブの客層が変わってきていますし、一辺倒な楽しみ方だけがロックではないっていうのはすごくタイムリーな発信だと思います。

茂木:そうだね。それだけだったらライブの現場が痩せていくだろうなって思ったんだよ。例えばさ、フェスとかで俺らが出ていくと、G-FREAK FACTORYのタオルを掲げたり、俺らのTシャツを着てくれている人がいるんだよね。すげえ嬉しいんだけど、本音を言うと、「もしかしたらお前は今日、一生を共にする好きな人に出会う可能性があるんだから、そんなことしなくていい。一張羅を着て、大切な人と出会って、その人を全力で幸せにしろ」って、いつも心の中でちょっと冷ややかに思ってる。

ーー(笑)。

茂木:ありがたいしさ、めちゃくちゃ嬉しいんだよ。嬉しいけど、ライブで知り合って結婚しましたっていう話を周りでよく聞くから、そんな大事な場にバンTとか着てこなくていいよって。だから、バンT禁止のライブとかやりたいなって思ってるくらい(笑)。

ーーははは。斬新ですね。

茂木:それでも着てくるヤツがいるなら、それはそれで最高なんだけど。まあ、そんなこと言ってグッズが売れなくなったらバンドの経営が成り立たなくなるから、あまり大きな声では言えないんだけどさ(笑)。大前提として、チケット買ってきてくれる人は、俺らからすると神様なんだよ。予定を立てて、お金と時間を使ってライブハウスに来てくれるわけだから、それはもう本当にありがたい。ただあえて言うけど、俺らは選ばれる立場だけど、俺たちが客を選ぶことはできないんだよ。それでも、バンド側が選んでるわけじゃないのに、客までカッコいいバンドって昔いたじゃん?

ーーわかります。

茂木:バンドのカッコよさに引っ張られて、品位や民度まで派生して、客もみんなカッコよくなるみたいな。ガキの頃に見ててカッコいいなって思ったバンドは、客まで漏れなくカッコよかったから。今は派生するんじゃなくて、寄せていかないと成り立たない世の中だから、そういうバンドが出にくいのはよくわかるんだけど、俺はひねくれてるから。抗っていきたいなと思ってる。

ーーそういう意味でもカウンターを貫いてるわけですね。

茂木:そう。いい時代もあり、日陰になっちゃう時代もあるけれど、俺らがやってることは変わらずずっとカウンターなんだよ。

「朝陽には希望と同じくらい、失望や絶望も全部ある」

ーーそして2曲目「アメイロ」もすごくいい曲だと思います。あらゆることは全て1つに繋がって円環になっているはずなのに、どうして奪い合うんだろうっていう、今の世の中の大きな流れに対してカウンターを打ってる曲だと思ったんですけどーー。

茂木:なるほど……確かにそうだね。言われてみれば、そういう風にも聴こえるな。ありがとう。

ーー茂木さんはどういう曲として書きました?

茂木:俺はね……夕陽の見え方で自分のメンタルのバロメーターがわかる時があるの。群馬の山に沈んでいく夕陽を見て、めちゃくちゃ綺麗だなって思うか、なんか寂しいな、孤独だなって思うか。俺は夜が好きだからマジックアワーってめちゃくちゃ興奮するはずなのに、夜に向かっていく時間に耐えきれない時があって。それはなんでなんだろうって思うんだよね。逆に俺は朝が大っ嫌いなんだけど、コロナ禍の間、自衛隊の人と一緒に山に走りに行って、朝陽を見てみたら、今度は朝陽がすげえ希望に満ちて見えてくるわけ。これもまた何なんだろうと思って。それで、地元に住みながら感じられる自然のことを歌にしたいなと。

 特に朝陽なんて、徹夜の時ぐらいしか見ないじゃん? それをわざわざ真っ暗な山道を走って見に行ったら、朝陽が登ってきた時に涙が出ちゃって。コーヒー屋やってる友達も一緒にいてコーヒー入れてくれたんだけど、こんなリッチなことをなんで今までやらなかったんだろうと思ったよね。そこには希望と同じくらい、失望や絶望も全部があって。要はそういう1個1個の中に生きていくための大きなヒントがあるはずなのに、やっぱり人間は愚かだから、すごく小さな考え方になってしまうなっていう。寂しくて、切ない曲なんだよな。

ーー確かにすごく切ないなって思いますけど、「ダディ・ダーリン」然り、空とか山とか太陽とか、大きなものと対峙して寂しい感情になってる時こそ、G-FREAKは雄大なメロディを生み出しますよね。

茂木:そうだね。住んでる場所とか環境も関係あるんじゃないかなって思うけど。カリフォルニアの太陽にずっと照らされてたら、もっとレッチリ(Red Hot Chili Peppers)みたいにできるのかもしれないし、ジャマイカだったらボブ・マーリーみたいに「サビとか要らなくね?」ってできるかもしれない。けど、今の日本のめちゃくちゃ暑い夏とか、毎年のように起こる豪雨とか、そういう中で誰かと話したり暮らしたりしていると、やっぱり歪ながらもAメロ、Bメロ、サビみたいな曲になるのもよくわかる。だから「アメイロ」はすごく日本っぽい曲だな。

ーー3曲目「the latest」だけはバンドの今をテーマにした曲に聞こえて。「the latest」っていう言葉を自分たちに当てはめる皮肉やユーモアも含めて、G-FREAKの新しい王道を行くシングルになっていると思いました。

茂木:そうだね。そういうところが全部入ってる。Leoが入った1発目だから生き生きと叩ける曲で、なおかつギターリフから入る曲が欲しいっていうコンセプトが最初からあった曲だから。いいスパイスとして効いてるよね。

ーーそして9月23日と24日には、4年ぶりにグリーンドーム前橋で『山人音楽祭』が開催されます。

茂木:ようやくだね。やるしかねえって思ってる。コロナの前みたいに戻ってくれとは言わないけど、コロナ明け元年、新しいチャレンジをしていける場所だからぜひ来てもらいたい。アクセス超悪いけど。

ーーそんなことないですよ(笑)。

茂木:あ、本当?

ーーはい。都心から行きづらいなって思ったことは全然ないです。あえて聞きますが、グリーンドームに戻るからこその気合いや緊張感みたいなものってありますか。

茂木:緊張感というより、グリーンドームってどうだったっけな? みたいな感じはある。ここ2年間は高崎芸術劇場で山人をやってきて、それももちろん本気だったんだけど、今年はそれを経て、いろんな価値観を持ってる人たちがグリーンドームに来るじゃん。マスクをする人もいれば、ダイブやモッシュをしに来る人もいる。だから1日を通して、いろんな場所から来た人たち同士がリスペクトし合えたらいいなって思う。ゆっくり観たい人と、騒いで観たい人がいがみ合うとかじゃなくて。みんなでみんなをリスペクトできる、いい空間が広がったらいいなって思ってるよ。

※1:https://realsound.jp/2022/09/post-1126730.html

G-FREAK FACTORY『RED EYE BLUES』

■リリース情報
G-FREAK FACTORY『RED EYE BLUES』
2023年9月6日(水)発売
・初回限定盤(CD+DVD):¥1,980(税込)
・通常盤(CD):¥1,100(税込)

subscription:https://lnk.to/GFreak

<CD収録曲>(初回限定盤、通常盤共通)
1. RED EYE BLUES
2. アメイロ
3. the latest

<DVD収録映像>(初回限定盤)
『山人音楽祭2022』(2022年12月3日高崎芸術劇場)
1. Too oLD To KNoW
2. Unscramble
3. REAL SIGN
4. EVEN
5. Fire
6. ダディ・ダーリン
7. らしくあれと
8. 日はまだ高く

■フェス情報
G-FREAK FACTORY主宰『山人音楽祭2023』
・日程:9月23日(土)、24日(日)
・場所:日本トーター グリーンドーム前橋

<出演アーティスト※50音順>
9月23日(土)
KUZIRA / G-FREAK FACTORY / SHERBETS / SHANK / 四星球 / TETORA /
バックドロップシンデレラ / ハルカミライ / HAWAIIAN6 / FOMARE / Flower Companyz /
マキシマム ザ ホルモン / Rickie-G / LOW IQ&THE RYTHMMAKER / ROTTENGRAFFTY(15組)

9月24日(日)
亜無亜危異 / AGE FACTORY / OVER ARM THROW / Creepy Nuts / G-FREAK FACTORY/
SUPER BEAVER / 竹原ピストル / 10-FEET / NakamuraEmi / NUBO / BRAHMAN /
HEY-SMITH / ヤバイTシャツ屋さん / RED ORCA / locofrank(15組)

『山人音楽祭2023』公式サイト

■ツアー情報
ファイナル公演のみワンマンライブ、他公演はゲストバンドあり。
チケット料金 前売り¥3,800(税込、ドリンク別)

<日程/会場>
2023年10月01日(日)/愛知 名古屋DIAMOND HALL【ゲストバンド OAU】
2023年10月07日(土)/岩手 大船渡KESEN ROCK FREAKS【ゲストバンド FUNNYTHINK】
2023年10月08日(日)/岩手 宮古KLUB COUNTER ACTION【ゲストバンド FUNNYTHINK】
2023年10月14日(土)/岐阜 柳ヶ瀬ants【ゲストバンド KUZIRA】
2023年10月15日(日)/福井 福井CHOP【ゲストバンド KUZIRA】
2023年10月21日(土)/京都 KYOTO MUSE ゲストバンド TETORA】
2023年10月28日(土)/青森 青森Quarter【ゲストバンド SHANK】
2023年10月29日(日)/秋田 秋田CLUB SWINDLE【ゲストバンド SHANK】
2023年11月03日(金)/香川 高松MONSTER【ゲストバンド 未定】
2023年11月04日(土)/大阪 梅田TRAD【ゲストバンド 未定】
2023年11月17日(金)/福岡 福岡BEAT STATION【ゲストバンド 未定】
2023年11月18日(土)/広島 広島SIX ONE Live STAR【ゲストバンド 未定】
2023年11月25日(土)/神奈川 横浜F.A.D【ゲストバンド 未定】
2023年11月26日(日)/静岡 沼津QUARS【ゲストバンド 未定】
2023年12月09日(土)/長野 長野CLUB JUNK BOX【ゲストバンド 未定】
2023年12月23日(土)/宮城 仙台Rensa【ゲストバンド 未定】
2023年12月24日(日)/岩手 盛岡CLUB CHANGE WAVE【ゲストバンド 未定】
2024年01月20日(土)/北海道 札幌cube garden【ゲストバンド 未定】
2024年01月21日(日)/北海道 旭川CASINO DRIVE【ゲストバンド 未定】
2024年02月03日(土)/東京 渋谷Spotify O-EAST【ワンマン公演】

■関連リンク
Official Site:https://g-freakfactory.com/
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